※チート能力って、どこかに落ちてたりしないかな
俺を担ぎながら少年と少女は、大きな広場から細道に抜ける。
ドラゴンの咆哮がまだ聞こえるが、だいぶ小さくなってきた。
「はぁはぁ、こ、ここまでくれば…………」
「そうだな」
少女の言葉に走る勢いを緩め、足を止めた。
まさか、俺みたいな大人を担いでも息一つ乱れていない。
この男の体力、化け物か?
あと、もう下ろしてくれ。
なんだか、恥ずかしい。
「アルカ、大丈夫?」
「あぁ、リヒトの拘束魔法が無かったら、今頃危なかったかもしれないけどな。一応は大丈夫だ」
ん? 拘束魔法?
あぁ、ドラゴンの足元でキラキラしていたあれか?
「というか、このダンジョン、ランクがBの人向けのはずなんだけど。でも、ワイバーンは確かSのはず……」
「くっそ!!! 今回も報酬なしかよ、ふざけるな!!」
「もう、何回目なのさ……」
んー……、まるで俺の存在がないようだ。
ぼけぇっとしていると、リヒトと呼ばれた少女と目が合った。
「ねぇ、アルカ。その人、いつまで担いでいるの?」
「あ、忘れてた」
担がれながら忘れられていたのか、俺。
アルカと呼ばれた少年がやっと、俺を下ろしてくれた。
「なぁ、お前はなんでここに居るんだ?」
そう聞かれても、答えれないんだよな。
答えるのに困っていると、ちょうど自分の姿を確認できる水たまりがあった。
覗き込んでみると、見覚えのある黒髪に、黒い目。
一般的な黒いスーツに革靴。
所々に赤黒いシミがついている。怪我をしていたのは本当らしい。
なんで、俺はこんな所にいるんだ?
まさか、これが噂の異世界転生? いや、転生ではなく、転移か。
そんな、アニメみたいなことが本当に現実で起きるのか?
とにもかくにも、こいつらから俺も情報を抜き取りたい。
「まず、お前らについて教えてくれねぇか? 俺も今まで経験したことのない出来事の繰り返しでわかってないんだ。状況把握するために少しでも話が聞きたい」
さっきのこいつらの会話だけで、まずここがダンジョンなのはわかった。
ついでに、高難易度なダンジョンと言うのも、さっきので把握済み。
ダンジョンやギルドが当たり前の世界。
マジで異世界転移だな。剣と魔法の世界に転移してしまった。
…………もっと憧れている人を転移させろよ。
「そうだな、人に聞くならまず名乗らないとな! 俺の名前はアルカ=フェデリオ。気軽にアルカと呼んでくれると嬉しいぞ」
「私はリヒト=ケイン。私のことも気軽にリヒトって呼んでほしいです!!」
……礼儀正しいな。しかも、普通にフルネーム。
隠そうともしないのかよ。
「…………アルカとリヒトな。ここはダンジョンと呼ばれる所で合っているのか?」
「そうだぞ。ここは最近作られた、Bランクのダンジョン──と、聞いていたんだが、ワイバーンが出てきたことで話が変わった」
それが、さっきこの二人が話していた内容だよな。
「ギルドの手配ミスで、高難易度のダンジョンに放り込まれたような話をしていたな」
「そうなんです。もう、五回目。ダンジョンを攻略しないと意味がないから、諦めずに頑張ってはいるんですけど……」
いつも、何の成果も得られず終わる、ってことか。
絶対にミスじゃねぇだろ、それ。
「ギルドに文句を言ったり、訴えたりはしないのか?」
「意味なんてない。何を言ったところで全て潰される」
今の話で、こいつらの事情は大体わかった。
わかったのはいいが、俺は何も出来ないな。
どうすれば、俺はここから元の世界に戻ることが出来るんだろうか。
考えていると、アルカが俺の顔を覗き込んできた。
「ど、どうした?」
「いや、本当に見ない顔だなって思って。同じ冒険者なのに、一度も会わないのも不思議だな」
「はぁ? 冒険者? 何を言っているんだ? 俺はただの一般人だぞ」
いきなり意味の分からないことを言われて困惑していると、アルカが目を丸くした。
「何を言っているんだよ。冒険者の証として、指輪を左手に付けてんじゃん」
「はぃ?」
指輪?
言われた通りに←指を見ると、たしかに指輪が嵌っている。でも、見覚えはない。
二人が自分の左の中指にはめられている指輪を見せてくる。もしかして…………。
「冒険者の証である指輪だ。というか、それがないとダンジョンには入れないぞ?」
「…………誰だ、俺にこの指輪を与えたやつ」
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