おっさんがそんな子供のようにいじけるわけねぇし
運良く、水ワイバーンが俺達の方に降りてきた。
大きな藍色の翼を広げ、俺達を見据えて来る。
ちなみに、俺の背中にも視線が突き刺さっています。
ちらっと後ろを見ると、風ワイバーンが俺を見ていた。
グレールとロゼ姫が立ちふさがっているから、こっちに来ることはないだろう。
あの二人は強い、背中は気にせず水ワイバーンに集中しよう。
背中に突き刺さる視線は気になるけど……。
――――グワァァァァァァァァァアアアアア
「っ、鼓膜が……」
咆哮、耳が痛い。
アルカを見ると、目が合った。
耳を抑えているけど、いつでも動けると言うように笑みを向けてくる。
大丈夫なのか?
いや、大丈夫だ。アルカも、リヒトも強い。
俺も問題ないというように、頷く。
すると、耳から手をゆっくりと離し、剣を両手で握り直した。
地面を踏みしめ、アルカは姿勢を低くし走り出す。
「リヒト、準備!」
「はい!! chain!!」
杖を振りかざし、鎖を崖から一斉にワイバーンへと襲う。
おいおい……。本気を出さんでもいいと言ったのに、あれだといつも通りじゃねぇかよ。
アルカはいつものように鎖を掴み足場に。
すぐに上空へと跳びあがり、ワイバーンの周りを駆け回る。
やっぱり早い、目視が難しいな。
だが、俺も戦闘には慣れてきた。何とか、残像くらいは見える。
…………目が渋くなるけど。
「俺も準備しておくか……」
手に炎を灯し、いつでも放つ準備。
口の中に炎魔法をぶち込むことが出来れば、簡単に倒せる。
アルカが駆け回っていることにより、ワイバーンの視線が俺から逸れ、それプラス、皮膚に小さな傷を付けているみたいで弱ってきていた。
これなら、すぐに倒せそうだな。
「――――ん?」
後ろから、まりょっ――――
「ギャァァァァアア!!!!」
「チサト様!! 大丈夫ですか!?」
「大丈夫なわけあるかぁぁぁぁぁあ!!!」
う、後ろ。俺が後ろを向かなければ、確実に当たっていたぞ。
ロゼ姫が放ったであろう、大量の酸魔法が…………。
「……………………ワイバーンなんて、楽勝なんだな」
「魔法の相性が良かっただけですよ」
風ワイバーンの周りには、ロゼ姫の魔法で作り出したドンちゃんとフィンちゃんが泳いでいる。
それだけじゃなくてワイバーンの皮膚は爛れ、氷の柱が体に突き刺さっていた。
あ、あっちはもう、大丈夫そうだな……。
「カガミヤ! こっちも準備が出来たぞ!!」
「──えっ?」
再度アルカの方を向くと、ワイバーンが弱り地面に落ちていた。
皮膚は切り傷だらけ、足には鎖。
……………………俺の仲間、つぇぇええ。
何だったら、俺が一番弱い説。魔力量だけ多い、役立たず……。
「カガミヤ? 早くとどめを刺してほしんだが……」
「え、俺が?」
「? 俺じゃ、弱らせることは出来るがとどめはさせないんだ。リヒトも無理だし」
「あ、あぁ」
ひとまず、flamaArrowを少しだけ空いているワイバーンの口に噴射。
腹部から爆発し、ワイバーン討伐は完了。
氷の柱に突き刺さり身動きが取れなくなっていたワイバーンは、ロゼ姫の容赦のない酸魔法で跡形もなく溶けてなくなる…………グロいなぁ。
「ふぅ、何とかなりましたね」
「俺、役立たずじゃん…………」
「警戒し過ぎていただけだと思いますよ。この調子では、SSランクのモンスターも何とかなりそうですね。さすがに野良では出てこないとは思いますが」
グレールが俺の事を気遣ってそんなことを言ってくれる。
お前は優しいな、そんな男はモテルぞ。
「カガミヤ!! 早く行こうぜ!」
「元気だなぁ、今回お前が一番体力消耗しているはずなのに」
「そんなことはないぞ。体力は鍛えているしな」
「はいはい」
「あと、カガミヤがいたから精神的にも余裕が出来て、戦いやすかった!」
――――――――阿呆か?
「おいおい、慰めたいのかどうなのか知らんが。俺は今回何もしてない役立たずだぞ。あぁ、俺は何も出来ない、ただの役立たず。まぁ、役立たずの方が何もしなくてもいいし、楽っちゃ楽だな」
管理者からも狙われなくてもいいし〜。
別に、いじけてないし。
俺、必要ないじゃんとか思っていじけてないし。
二十八歳のおっさんが、子供のようにいじけるなんてことないし。
「なに言ってんだよ、カガミヤ」
「あ?」
「カガミヤは近くにいるだけで安心するんだぞ!! だから、いてもらわないと困るし、役立たずなんて思った事、一度もないぞ」
……………………本心、に、聞こえる。
穢れのない瞳、笑顔。
隣に立つリヒトも同じ、顔。
ん? 両肩をぽんと、グレールとロゼ姫に叩かれた。
背後にはふよふよと、アマリアが飛んでいる。
「いじけないでくださいよ、チサトさん。貴方が一番強いですよ」
「そうですよ、チサト様。魔力がこの世界ではすべて。私より貴方の方がお強いです」
「そうだよ、知里。君はこのチームでは核となっているんだから、役立たずじゃないよ」
――――いや、おめぇら、ニヤニヤしてるじゃねぇか。
慰めるようなことを言っているが、楽しんでんじゃねぇか。
よし、殺す。
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