不安そうにされるとこっちまで不安になるが仕方がない。がんばろー
上空を飛びまわるドラゴン、俺達が二回も戦ったことのあるモンスター。
「なぁ、あれもまさか、野良何て言わないよな?」
「あり得ない。野良はランクが高くてもAランクまで。Sランクのワンバーンが出てくるわけがない」
アマリアの言う通りだろう。
俺も、事前に野良はAランクまでとしか聞いていない。
ここで出てくるのはおかしい。
「フィルムの仕業だね。ダンジョンに近付かせたくないのかな」
「そうだろうな。はぁ、怖いが仕方がない、やりたくないがやるしかない。グレールにすべてをぶん投げたいが拒否られたからやるしかない」
「最後の言葉、完全に私に悪意ありますよね」
「別に」
だって、怖いんだもん。
今まで、何度もワイバーンには苦しめられたんだからさ。
「はぁ、今回はどんな属性だ。弱点属性だと嬉しいな」
今回はどんな属性をもってやがる。
出来れば、風ではありませんように。
「っ、降りてきましたよ」
「はぁぁぁぁぁぁぁ、やるかぁぁぁぁあ」
「気合の抜けるような行いをやらないでください」
「やっぱりグレール、俺の事嫌いだろう」
「別に」
場に合わないであろう会話をしつつ、皆それぞれの武器に手を回し準備完了。
俺は魔導書、アルカは剣。
リヒトとロゼ姫は杖、グレールは氷で作り出す。
――――グワァァァァァァァァァアアアアア!!!
二体分の咆哮、耳が痛い!
崖下まで降りてきた二体は、片方は藍色っぽい皮膚をしている。
もう一体は、見覚えのある色だなぁ。
えぇ、ちょっ、まさか、あの色って……。
「深緑色と藍色。もう、わかりますね」
「藍色の方はまだピンと来ていないが、深緑の方はもうわかった。最悪」
「深緑は前回に戦闘を行いました風属性。藍色の方は、おそらく水です」
風と水か。
風は放出系の魔法を放つと、竜巻に巻き取られ威力を倍にされ返される。気を付けねぇと。
水属性のワイバーンは今まで戦った事が無いから、どのような攻撃をしてくるか予想できない。
「放出系を封じ込まれてしまえば、チサト様の魔法を生かす事が出来ませんね。私とロゼ姫で風属性は相手になりましょう」
「わかった。なら、俺とアルカ、リヒトは水属性を相手にするわ。アマリアはいつでも動けるようにしてほしいが、今はリトスを頼みたい」
地面にいるリトスが、空中に浮いているアマリアを見上げている。
この二人はまともな会話をしていなかったけど、仕方がない。
「わかった。リトス、僕と一緒は嫌だろうけど、我慢してね」
「だ、大丈夫だぞ!! チサト!! 頑張るんだぞ!!」
「はいはい」
アマリアはリトスを抱え上空に。
ワイバーンはそんな二人を気にせず、俺達から目を離さない。
────いや、俺達…………ではない。
前からも、後ろからも突き刺さる視線を感じる。
こいつら、俺を狙ってやがる。
――――グアァァァァァァアァアアアアア!!!!
っ!? 二体のワイバーンが咆哮と共に俺に向かって飛んできただとぉぉ!?
「|absolutewater!!!」
全方に水の膜を張る、絶対防御壁。
一番最初はアクアにより破られているが、今回は問題ないはずだ!
ワイバーンは、俺の魔法など見えていないかのようにスピードを殺さず突っ込んでくる。
…………いや、風ワイバーンだけが立ち止まった。
まさか!!
「――――う、嘘だろ?」
「駄目なのは、放出系だけではないという事ですね」
「やめてくれ…………」
俺の|absolutewaterが、風ワイバーンによって刈り取られ、水ワイバーンが突っ込んでくる!!!
「────わっ!?」
崖の下、道は狭いし避けにくい!!
近くにいたアルカとリヒトと共に横へと跳び回避は出来たが、このままじゃまずい!
風ワイバーンが俺の魔法を竜巻に乗せて狙いを定めて来る。
黒い瞳が見下ろしてくる、焦って思考が逆にまわら――――あ。
「グレール!!」
「わかっていますよ、frost!」
剣を風ワイバーンへと向け、勢いよく冷気を噴射。
二本の水の竜巻は凍り、砕け散った。
後ろを向くと、水ワイバーンが仕掛ける準備をしている。
目まぐるしいなぁぁぁ!!!
『知里、少しだけなら時間を作る事が出来る。魔力を貰うよ』
っ、これは、アマリアの声!
人の頭に直接言葉を伝えたり、イメージを見せることが出来る音魔法を使ってんのか!
「――――muzier」
────っ!?!?!?!?
またこれ!! ロックのような、激しい音楽が辺りに響く!!
でも、俺達には音以外のダメージはない。
ワイバーンを見ると、苦し気に叫びまくって空に逃げ出した。
「知里」
「アマリア、わりぃ助かった。リトスは?」
「崖上に持って行ったから大丈夫。それより、すぐにワイバーンは戻ってくるよ。早く体勢を作り直して」
上空から降りてきたアマリアがまくし立てるように言ってくる。
グレールと目を合わせ、最初に言っていたように俺は水、グレール達が風を担当。
水の防壁で足止めをしている間に体勢を整えようと思ったのに失敗しちまった。
だが、アマリアが時間を作ってくれたから、結果オーライ。
アルカとリヒトと目伏せをし準備。
「水属性なのなら、炎は弱点だけど。魔力量で勝てるはずだし、頑張るか」
「私はどうしますか?」
隣からリヒトが見上げて来る。
アルカも俺に指示を仰いでくるけど、今までの経験上作戦を立てるより、アルカには自由に駆け回ってもらった方がいい気がする。
俺とリヒトが臨機応変に対応という形にしようか。
アルカは自由に飛び回る鳥のような存在。
そんなあいつの翼を折れさせないのが、俺達の仕事。
「んじゃ、アルカは自由に駆け回ってくれ、援護は俺達でやる。ワイバーンから放たれる魔法は俺が全て相殺してやるよ。リヒトは、アルカの足場を作れるか?」
「作れますが、魔力が…………」
「アマリアとの修行で少しは体がもつようになっただろう。それに、全力を出さなくていい。少しだけでいいんだ、力を温存する事も考えてchainを操ってくれ」
「……………………はい」
あぁ、不安そう。
魔力のコントロールって難しいもんな、仕方がない。
「できなくてもいい、やってみようと思うだけでも経験になる」
「わかりました…………」
不安そうにしているところ申し訳ないが、ワイバーンが来る。
なんとか、俺が臨機応変に対応するか!!
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