嫌な予感の方が当たりやすいの勘弁して
リヒトの顔が真っ赤になっちまったが、俺達は無事に崖下へ降りることが出来た。
「よし、ここが崖下か。上から見たら底が見えず警戒していたが、実際に来てみると案外明るいな」
「そうですね。太陽の光がしっかりと届き、足元などを照らして下さっております」
周りを見ていると、グレールが隣までやってきた。
「ところで、チサト様」
「なんだ?」
「リヒト様の様子がおかしいのですが、何かありました?」
後ろには、真っ赤な顔を手で隠しているリヒトと、周りに集まるロゼ姫とアルカ。
アマリアはなんとなく察しているのか、少年の姿になってくすくす笑ってる。
「……なにも。落ちないようにあいつの身体を支えてやっただけ」
「なるほど。腰や手に腕を回した感じでしょうか」
「それが一番だろう」
「私も同じようにロゼ姫を支えたため、何も言えません」
まっ、だろうな。
今はもう底にたどり着いたわけだし、どうでもいい。
今は、太陽が昇っている間に目的地であるナチュール山に辿り着くことを最優先だ。
「おい、早く行くぞ。ここからは歩かないといけないんだ、時間がないぞ」
呼びかけると、アルカ達はやっと歩き出してくれた。
リヒトの顔はまだ赤いが、気持ちは落ち着いて来たみたい。
普通について来る。
まったく、これならアマリアにリヒトをお願いすべきだった。
アルカならここまで考えずに済んだのに……。
はぁ、まぁ……。
今更こんなこと考えても意味ないし、でこぼこな道を転ばないように気をつけて歩こう。
――――ん? アマリアが顔を覗かせてくる、なんだ?
「ここ、肌寒くはないの? 風あるよ?」
「あ、アマリアは寒さとかに疎いんだったな。安心しろ、今は特に肌寒いとかはない」
「そう、それなら良かった」
アマリアに心配されるほど、俺の体は弱くないぞ。
風はあるが、そこまで冷たくはない。
強いわけでもないし、そこまで気にならないぞ。
気になるのは、何度も足が上がらなくて突っかかりそうになっちまってる、この道のみ。
転ばないように気をつけていても、何回かは転びそうになっちまう。
これだけは、どうにかしてほしい。
「…………」
足元に気を付けながら誰も話すことなく進んでいるけど、景色がずっと同じだから本当に進んでいるのかわからない。
無限ループという怖い現象に巻き込まれている訳じゃねぇよな?
魔力は――――感じない。疑いすぎか。
「あの、カガミヤさん。なんか、胸騒ぎがするのですが…………」
「奇遇だな、リヒトよ。俺も、これ以上進みたくないという気持ちが浮上している。第六感が危険だと、訴えてきている」
チラッと後ろを見ると、リヒトの顔色が悪い。
他の奴らも、平気そうなのはアマリアのみ。
「…………アマリア、これって…………」
「んー、そうだね。現段階で言えることとすれば、これから始まるのは冒険パートではなく、戦闘パートって事くらいかな」
アマリアが平然と言いのけると、微かな足音が前方から聞こえ始めた。
それだけではなく、上空、地面と。
四方からモンスターの気配が近づいて来ている。
「っ?! カガミヤさん!!」
「ちっ!!! おめぇら、動けるよな!?」
全員が臨戦態勢、同時に四方から大量のモンスターが出現。
一体一体は雑魚。蝙蝠やゴブリン達。
「turboflame!!」
俺達を囲うように炎の竜巻を出し、半分は減らす事が出来た。
だが、隙間を縫ってやってくる雑魚どもがっ! くっそ!!!
「お任せください!」
「俺も行くぞカガミヤ!!」
アルカとグレールが走り出す。
グレールは剣を氷で作り出し、アルカは背中に背負っていた剣を握り引き抜いた。
モンスター達に切りかかり、次々と倒していく。
それでも零れてしまったモンスターは、俺がflameで燃やし被害ゼロ。
「本当にこれ、野良なのか? 野良のモンスターって、ここまで集団行動うまいのか?」
野良って、ここまで集団行動するものなのか?
息の合わせた襲い方なんだけど……。
まるで、どこかでモンスター達を操っている人がいるようなぁ………??
※
「やっぱり、この程度、簡単」
ナチュール山にあるダンジョンは、地下に作られている。
山全体がダンジョンになっており、知里が攻略して来たダンジョンの数倍も大きい。
洞窟のような作りになっており、小さな広場が複数。
薄暗く、薄気味悪いダンジョン。
そんなダンジョンの最奥に一人、黒いローブを羽織っている女性、フィルムが魔道具から出ている映像を見ながら呟いていた。
映像に映っているのは、野良モンスター達と戦っている知里達の姿。
今も楽勝にモンスターを薙ぎ払い、倒し続けている。
「C、雑魚。次」
右手を空中に添えると、そこから一つの水晶が現れ光り出す。
「ワイバーン、作る。属性、風、水」
言うと、水晶が強い輝きを放ち始める。
魔力が強まり、込められた。
「二体、S、これで、殺す」
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