これが一番最善なだけなのに…………
アマリアとアルカは、引き続きオスクリタ海底にいる人達に聞き込み調査。
俺は、ナチュール山に向かう為の段取りをリヒトと確認。
ロゼ姫とグレールは、俺からお願いして、俺達でも扱えそうな魔道具や新しい武器などを調べてくれている。
先日、アルカとアマリアが戻ってきた後に、グレール達も戻ってきたんだが、やっぱり有益な情報はなかったらしい。
そんな日々を過ごし、心身ともに回復した頃、ナチュール山に出発。
「準備は出来たか?」
部屋から出る前に、後ろにいる四人プラスリトスに聞いてみると、元気そうに頷いてくれた。
「カガミヤさんこそ、しっかり準備出来ましたか?」
「おう」
「ロゼが買ってくれた魔道具も持ってる?」
「俺は餓鬼か、もっとるわ」
俺でも扱える魔道具を、ロゼ姫とグレールが先日買ってきてくれた。
説明を聞いた感じ使いやすそうだし、普段使いが出来る代物。ありがたく頂戴したわ。
ポケットの中に入れている”それ”を確認し、今度こそ部屋から出てワープ。
ナチュール山の一番近くに位置する絶壁にたどり着いた。
おうふ……。
体に衝撃、腰は痛いが慣れてはきた。
「さて……、ここからは自分の足で歩かないといけないんだよなぁ。めんどくさい」
「仕方がないよ、まずは崖の下まで移動しよう」
周りには何もない崖。
奥の方には、俺がまだ行った事がない街が微かに見える、崖の更に奥だけど。
んで、今日は晴天、風もそこまで強くない。
もし、外で戦闘となると天候は大きく左右する。晴れてくれてよかったわ。
ダンジョン内で戦うのなら、特に関係ないけど。
「んじゃ、崖の下まで移動しますか」
「あぁ、したいんだが、本当に大丈夫なのか? ロゼ姫の酸魔法、|dolphin acidで下に行くって……。上に乗った瞬間に溶けたりしないのか?」
崖の下に行く方法をリヒトと共に悩んでいると、ロゼ姫が自分の魔法、|dolphin acidのドンちゃんとフィンちゃんを使えば問題ないと言っていたから信じたが……。
流石に不安だ、大丈夫かな、俺達の身体……。
「大丈夫ですよ、酸魔法は水魔法の延長線。私が持っている属性は水なので、ただ、水属性魔法をドンちゃんフィンちゃんの形にするだけなんですよ」
「え、そんなこと出来るのか?」
なら、俺の水属性魔法も何か細工すれば酸に変える事が出来るんじゃないか?
それ、めっちゃ使えるやん。
酸って、強力じゃん。
俺の水属性魔法は全方位が多いし、あれがすべて酸と考えるとぞっとはするが、戦闘には確実に有利になるだろう。
「ちなみになんだが、それは水魔法持ちの魔法使いなら誰でもできるのか?」
「私が扱えているので可能かとは思いますが、訓練は必要かと」
やっぱり必要ではあるか。
でも、出来ないと断言されるかなとは思っていたから、これはこれで面白い。
という事は、炎魔法も極めれば何か違う魔法を発動できるという事か?
炎の進化って…………なんだ?
「では、出しますね」
「おう、よろー」
「行きます。|dolphin acid」
ロゼ姫が魔法を発動すると、水でできたイルカ二匹が姿を現した。
「おそらく、大きさ的に大人二人は行けるかなと思います。いかがいたしましょう」
俺とアルカ、リヒトとロゼ姫、グレールか。
アマリアは浮くし、リトスはカウントしなくてもいい。
でも、人数的に余るのか。しかも、一人だけ。困ったな……。
「それなら、僕がアルカを抱えるよ。元の姿になれば普通に担げるし」
「お、それなら任せるわ」
「魔力はいつもより多く使うから、そこは許してね」
「はいよ」
言うと、アマリアの身体が大人の姿になる。
「…………やっぱり、その姿だと変だな」
「おかしいな。こっちの姿が本来の僕なんだけど」
青年姿のアマリアって、無駄にキラキラしているというか、発光しているというか。
ひとまず、俺の隣を歩かないでください。
「それなら、アルカ。僕に捕まってくれる?」
「あ、あぁ……。よろしく、お願い、です…………」
アルカですらたじたじになっている程、アマリアが出しているオーラは輝いているんだろう。
リトスは開いている方の手でアマリアが運ぶ。
他の人達は、ロゼ姫の出したイルカに乗って崖の下へ──向かっているんだが……はぁ。
「…………おい、しっかりと掴まねぇと落ちるぞ?」
「つ、掴んでいます」
「いや、さすがに危険だから、もっとしっかり掴んででほしいんだけど…………」
「は、はい…………」
グレールがロゼ姫と乗る事を譲らなかったから、必然的に俺とリヒトがペアとなってイルカに乗る事になったんだけど……。
リヒトは、おそらく……? 勘違いだったら恥ずかしいから口に出しては絶対に言わないが、俺の事が好き。
今、俺の裾しか掴めないのは、照れているからだろう。
うーん、ここで腰に抱き着けとか言ったらセクハラになるだろうな。
でも、さすがにこれは……。
ちらっと崖の下を見てみるけど、底が見えない暗闇。
落ちたらどうなるかわからんぞ。
――――グラッ
「きゃっ!!」
「っ!」
風でイルカの体が少しだけ傾くと、リヒトが小さな悲鳴をあげやがった。
落ちそうになってんじゃねぇよ、さすがにこっちの心臓がもたん……。
「はぁ……。おい、リヒト。俺は変態じゃねぇから、叫ぶなよ? あと、勘違いをするな」
「えっ――――きゃっ!?」
リヒトを俺の前に持ってきて、俺が後ろに移動。腰に腕を回し、固定完了。
落ちないでよかったぁ。あと、リヒトの体重が軽かったから出来た荒業。
「え、あの、カガミヤさん!?」
「こうするしかないだろうが、おめぇが遠慮して裾しか掴まなかったんだからよ。落ちられたらたまったもんじゃねぇ」
はぁぁぁあああああ。
顔を赤くするな、これが一番最善だっただけだ。
まったく……。照れるなよ、若い女がこんなおっさんによぉ……。
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