これ以上はキャパオーバーだ
「アマリア様、気づいていないのでしょうか」
「たぶんな、素通りしていたし。気づいていたら、何かしら合図はくれるはず」
「なら、なぜ映像で見ている私達には見えたのでしょうか」
「…………それ、俺に聞く?」
多分、魔道具を通じて見ているからなんだろうけど。
今回の現象って鏡を通したり、カメラを通したら偶然見えるっていう、幽霊的なものじゃねぇかな。
これならアマリアが肉眼で見えなくても仕方がない。
やっぱりこっちの声を届けられないのは痛い。
もっと近づいてくれたらなんとなくでも、誰が覗いていたかわかったかもしれないのに。
考えたところで仕方がないから、別にいいんだけどな。
どうせ、管理者の誰かだろうし。
※
オスクリタ海底の上空、知里とリヒトに姿を見られた人影には、管理者には生えていない白い翼が背中でゆらゆらと揺れていた。
「最近、地上を騒がせている人間がここに居ると聞いていたけれど……」
「今はいないねぇ~。気配を消しているのかなぁ~??」
「遠いだけかもしれないわよ」
オスクリタ海底を見下ろしている二人のうち一人は、白銀のストレートの髪を翻し、白いワンピースを着ている女性。
もう一人は、ゆるふわパーマの白銀の髪に白の半そでパーカー。白いスキニーズボンを着ている男性。
欠伸を零しながらマイペースに話している彼に対し眉を吊り上げ、彼女は愚痴を零す。
「はぁ……。真面目にやって」
「今すぐに動き出すわけじゃないのならいいじゃぁ〜ん」
「何があってもすぐに動けるようにと言うとるのに……」
彼のマイペースさに飽きれ頭を抱えつつ、オレンジ色の星のように輝いている瞳を空へと向けた。
「…………一度、ファーマメントへ戻るわよ」
「はぁ~い」
二人はそのまま、消えるように姿を消した。
※
アマリアとアルカが戻ってきた。
「やっぱり、情報なかったよ。ここまでうまく隠しているのも本当にすごいなぁ」
「マイペースすぎるだろ、もっと危機感持ってほしいものだ」
「知里に言われるとは思わなかった。安心しなよ、これでも危機感持っているよ。じゃなければ意味がなさそうな聞き込みなんてしない」
だよね、アマリアならそうだよな。
「ところで、知里の方は映像よく見えた? 声は聞こえてた?」
「しっかりと聞こえていたぞ。いい情報をゲット出来なかったお前らをしっかりとな」
俺の言葉にアルカが落胆、アマリアは「そうだろうね」と腕を組む。
「ところで、アマリア」
「なに?」
「アマリアの視界に人影が二人分写っていたんだが、肉眼では確認できなかったのか?」
「――――え?」
おっ、目を微かに開いて驚いている。
この様子、やっぱりというべきか。
見えていなかったんだな、あの二人の人影。
「人影って? 視線は感じていたけど、人影なんてなかったよ?」
「おそらくだが、魔道具を通して見ていた俺達だから見えたのかもしれない。管理者なのかなぁとは思っているが、わかんねぇ」
腕を組み考えるが、人影しか情報が無いし何もわからない。
よく見たくてもぼやけていたし、輪郭すらもよくわからなかったんだよなぁ〜。
「…………流石に、管理者はないと思うよ」
「え、なんで?」
「さすがに動きすぎ。ウズルイフは自由奔放だから現れても不思議ではないけど、二人分でしょ? 他は管理者の仕事もしないといけないし、僕とフェアズが抜けた穴も埋めなければならない。知里の事を気にするのは当然なことだけど、ここまでずっと知里を追いかけ続けるのは難しいと思うよ」
そういう考えね、確かに納得できる。
管理者もそこまで暇じゃないという事をアマリアは言いたいんだよな、きっと。
元管理者であるアマリアは、管理者の仕事内容とかもわかっているだろうし、納得。
「今回の人影、気にした方がいいと思うか?」
「気にする余裕がない。無視しよう」
「へいへい」
無視していいのなら、それに越したことはない。
今はウズルイフを警戒しつつ、長を救出。フィルムとの戦闘に備えよう。
「なぁ、体は休めたのか? カガミヤ」
「まぁな、俺自身が動かなくて済んでいるし、体力的には回復している」
じれったい気持ちは浮上しているけどな。
自分で動きたいが、めんどくさいという感情のせめぎ合いが俺の胸を占めている。
「そうか!! それならよかった!!」
……………………満面な笑みを向けられた。
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