普段の俺よりやけくその俺の方が頼りになるのは複雑だぞ
部屋の中で威力気にせず炎の竜を放っちまったが、ここには名前を広めた魔法使いが集まっている。
上手く魔法を相殺してくれたわ、良かった良かった。
そんで、スペルとエトワールはやっと、最後の仲間を探しに姿を一瞬のうちに消した。
一瞬のうちに消す必要はないと思うが、そこは見ている人を楽しませる演出としてとらえておこう。
「さて、アマリア」
「なに?」
「場所が曇ってわからなかった長を探すか、一発逆転を狙って管理者へ戦闘を挑むため、ナチュール山に向かうか。どっちがいい?」
「究極の選択肢」
だよなー。
俺も、マジで悩む。
だって、場所がわからない長は、管理者が関わっているとはいえ、危険度は低いだろう。
だが、ナチュール山に行けば、強制的に管理者との戦いが始まっちまう。
安全を行くか、確実性を行くか。
「その二つだけでなく、ウズルイフについても警戒しておいた方がいいよね」
「でも、こっちからは仕掛けることできないだろう?」
「わかっているんじゃん、そうだよ。こっちから仕掛けた方がいいんだけどさ、情報を隠すのがとてつもなく上手いんだよね」
「そうだよな、占いでもわからなかったわけだし」
「それに、こっちの情報は筒抜け」
「詰みじゃん」
なに、あいつは神なの? 神様の力を持っちゃったの? 弱点無いわけ?
「はぁ。まぁ、雲をつかむ話をするより、確実なところを行こうか」
「つまり?」
「ナチュール山に行こう。それが一番早い」
それに、この三つ、全て管理者が関わっている。
なら、確実性の高い所に向かえば、自然とすべて解決するだろう。
早く、終わらせたい。
「しびれを切らせたってところかな」
「まぁね。――――しびれを切らせたのは俺だけではないみたいだな」
「みたいだね」
扉の外に人の気配。アルカとリヒトかな。
アマリアも気づいたらしく「行こうか」と、ドアへと向かって行く。
やれやれ、寂しがり屋かなぁ、まったく……。
「…………」
夢の中、俺の名前を呼び続けてくれたのはここにいるこいつら。
親という鎖に縛られ抜け出せず、すべてを諦めた時、俺を呼んだのは紛れもないあいつら。
さみしがり屋は、俺かもしれねぇな。
あいつらの声で、戻ってこれた。
…………やめようやめよう。
なんか、餓鬼に縋る大人の図みたいでかっこ悪いし、普通に気持ち悪い。
俺は今まで通り、俺のままで行く。
金の赴くままに、行動するまでだ。
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アルカ達と無事に合流し、今はまたしても今までと同じように、椅子とベッドを使って囲むように話し合いをしていた。
「なるほど、やはりうまく隠しているのですね」
「ここで全てを明かされたら、それはそれで疑う部分あるけどな」
嘘の情報を上書きしているんじゃないかと、普通に疑う。
「なら、少々気持ち的に落ち着きませんが、長の方を探る形でよろしいのでしょうか?」
「いや、それもまた雲を掴むレベルの話だ。だから、一発逆転を狙う」
そこで言葉を切って二人を見ると、少し不安そうにしているが、次の言葉はもうわかっているらしく、言葉をはさめず待っていた。
「管理者を、ぶったおしに行くぞ。ナチュール山に」
言い切ると――――おい。
俺、結構かっこよく言い切ったのに、なんでそこまで顔を青くしやがる。
何を言うかわかっていたじゃねぇか、なんでだよ。
「大丈夫だよ、アルカ、リヒト。知里はもうやけくそになっているだけだから」
「おい、それ逆に不安にさせるじゃねぇか」
と、思ったのに。
なんでアルカとリヒトは目を輝かせ、安堵の息を吐いているんだよ。
え、マジで何で? やけくそになっている方がなんとなく不安じゃない?
実際、やけくそになっていないけれども。
「やけくそのカガミヤさん、不安はあるし大丈夫か心配になるけど、頼もしいです」
「そうだよな」
……………………複雑だ。
やけくそが頼もしいとはそれいかに。
「それじゃ、さっそくナチュール山に向かう感じか?」
「……………………そうだな。ここからどのくらいの距離にあるんだ? ワープできるのか?」
ナチュール山がどこにあるのか俺にはわからんし、アマリアに聞いてみる。
でも、アマリアも腕を組んですぐには答えてくれない。わからんのか?
「アマリア?」
「んー、ナチュール山。ここからはまぁまぁ、遠いよ。近くまでワープは出来るけど、途中に確か崖があって、下った先の道を通らないといけなかったはず」
崖?
「崖があると、なんか不都合があるのか?」
「知里からしたらないと思うんだけど…………」
「どういう事だよ」
「モンスターがね。野良のモンスターが崖下だと、何故か多く出てくるんだよ。普通に移動だけでめんどくさい」
………………………………それは確かにめんどくさい。
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