深く考えない方がいい時の方がこの世界では多いよな
「エトワールさえいなければ…………」
「私がいてもいなくても関係ないでしょうよ。それより、早く占いをして、この人達の未来を占って。魔力が封印されていても、貴女ならこれくらい朝飯前でしょ?」
────ん?
なんか、平然と言いやがったけど、な、なに? 魔力が封印? どういう事?
「二人は魔力を封印されているの。じゃないと、この世界のバランスが崩れるから」
「それは、誰かによって?」
「しいて言うなら、世界によって……かなぁ…………」
アマリアもあまりわかっていないらしいな、答えが曖昧だ。
あの二人は理解しているのだろうか。
色々話を聞いたら教えてもらおうかなぁ。
スペルはともかく、エトワールなら答えてくれるだろう。距離を取って、話を聞こう。
縄で椅子に固定されているスペルに近付くと、何故か俺が威嚇された。
同時に、リヒト達に全力で近づくなと止められてしまう。
「カガミヤさん、ダメですよ。また、首を絞められます」
「警戒しすぎだろ……」
近づかないと話せないし、仕方がないだろう………。
「なぁ、聞いても意味は無いと思うが……一応。お前、今の状態でも占いって出来るのか?」
「出来る訳がないでしょ。魔力を水晶に込めなければならないのだから…………」
そりゃそーよ。
「なら、縄を解いても暴れないと約束してくれるか?」
「…………」
駄目だこりゃ。
あぁ、後ろからの視線、殺気がうるさい。
んー、どうすればいいんだろう。
「ここまで来たのなら仕方がない。知里、君がまずカケルについて話そう」
「もう、それしかないのか…………」
アマリアにそんなこと言われたのだが……うーん。
俺が持っている情報とこいつの占い、同等にならないから断られる可能性があるんだよなぁ。
知っている情報を渡されても、私は貴方を占いません、的な。
そんな事を言われちまったら、こっちとしては何も言えない。振り出しに戻っちまう。
「知里さん、今の会話で話の流れは何となく察しました。その上で言います。大丈夫ですよ」
「──え、何が?」
お、エトワールが俺の隣で膝を突く。
何もしてこないだろうなぁ……。
「カケル様の事になると、スペルは大暴れしてしまいますが、基本はいい人なんです。ちょっと、から回っていますがね」
「空回りすぎだろ」
あっ、スペルにじとっと見られている。
だって、そうだろう。俺、首締められているんだから……。
「ふふっ。スペルは、生真面目で、一途で。誰かを本気で思える人。そんな人、あまりいないと思いますよ」
微笑みかけて来るエトワール、こいつは嘘を言っていない。
嘘は言っていないが正直、俺はあいつを信用できない。
スペルの事は信用出来ない、のだが……。
「――――エトワールが言うなら、信じよう」
「っ、私? それは嬉しいですが、よろしいのです? 貴方、私が苦手ですよね?」
おい、それを察しているのなら、なぜ俺の嫌がる事をしてきやがった。
わかってんなら最初、ギルドで出会った時とか普通に接する事とか出来ただろうが。
「確かに、俺はお前が苦手だ。だが、嫌いではない」
性格的には大っ嫌いだが。
「俺がお前を苦手だからと言って、お前が俺に不都合の情報を渡すとは思えない。俺の事、好きなんだろ? お前は、好きな奴に嘘つく奴なのか?」
横目で確認すると、目を丸くしていたエトワールがすぐに目を輝かせ、鼻息が荒くなる。
「も、もちろん。嘘などつくわけないじゃないですか知里さっ――………」
────よっと。
────ドシャッ
俺だって、戦闘を幾度となく繰り返してきているんだ。
お前が俺に突っ込んでくるのなんて容易く予想が出来る。
簡単にひらりと躱し、床に倒れ込んだエトワールを無視。
縛られているスペルの隣に移動。
「スペル、俺が持っているカケルの情報は少ない。あいつ自身、あまり教えてくれないからな。だから、期待しないで聞いてほしいんだが、いいか?」
「少しでも、ほんの少しでもカケル様の情報が手に入るのなら、知っている情報でも構わない。早く、教えなさい」
殺気の含まれている狂気的な瞳。
体が微かに震える。でも、それを悟らせてはいけない。
今は俺が優先なんだ、焦る必要はない。
「わかった、教える。俺が知っているカケルの情報は――……」
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俺の異世界転移、夢の中での出来事、カケル封印解除の方法など。
カケルが関わっているあらゆる情報を話した。
途中、スペルは一切質問などはせず、俺の話を最後まで聞くと顔を俯かせた。
やっぱり、俺の情報はこいつが知っている情報だったよなぁ。
だが、俺は占いをしてもらって、長の行方を。
それだけじゃなくて、今後の道筋を教えて貰えればそれだけでいい。
「…………終わり?」
「あぁ、俺が知っているのはこの程度。あとはアビリティが知っているかもしれねぇ――俺が知っている情報と同じのはずだったな」
そういや、こいつとアビリティはものすごく仲が悪かったんだった。
ここでアビリティの事を言うと、またこいつが暴走するかもしれねぇ。
「…………ありがとうございました」
「いーや、俺は俺のために話しただけだ。別に口留めとかもされていなかったしな」
顔を俯かせているから、何を思っているのかわからないな……。
「…………私の」
「うん」
「私の、知らなかった情報。これでまた、カケル様に一歩、近づいたわぁぁぁぁあああ!!!」
目が、ハート。いや、うん。
俺、鏡谷知里は、深く考えるのを諦めた。
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