俺の仲間は本当に強いらしい
「つまり、その夢魔法が込められている魔石を俺は、ウズルイフに入れ込まれたって事か」
ベッドに座り、アマリアから魔石を受け取り見てみるけど……。
えぇ、こんな、親指位の魔石、どうやって俺に気づかれずに埋め込んだんだ?
流石にぐりって入れられたら気づくぞ、痛みで。
「んー……あ」
「? なにか思い出したの?」
「いや、鉱山で初めてウズルイフに会った時、すれ違いざまに首に痛みが走ったなぁって、思って。もしかしたら、その時に埋め込まれたのかもしれねぇわ」
でも、そこまで気にするような痛みではなかったし、傷とかもついていなかった。
そこは魔法か、何か別のもので誤魔化したんだろうか。
…………ん?
なんだ、アマリアからの視線が痛い。
グレールとロゼ姫は無表情で固まっているアマリアを見ている。
なんだろう、この空気。
「な、なぁ、カガミヤ」
「なんだ?」
「その時、アマリア様には伝えたのか? 首に痛みが走ったから怪我を見てほしい、的な…………」
「ん? いや。すぐに痛みは引いたし、自分で触れた感じ痛みとかもなかったから、特に何も話していないぞ」
首に触れてみるけど、やっぱり傷、ないし。
今更確認しても意味はないだろうけど。
「知里」
「ん? なに?」
「約束して。今後、どんなに小さなことでも報告をしっかりする事。どうでもいいことでも、関係のない事でも」
「え、いや、そこまで敏感にならなくても…………」
「今回の事態が起きているのに、何を言っているの」
……………………わぁお、本気でアマリアが怒ってる。
これは一回、落ち着かせないといけないな。
「あ、アマリア、落ち着け? な?」
「落ち着いているけど?」
やべぇ、元とはいえ、管理者を怒らせてしまった。
頼む、だ、誰か助けてくれ……。
「カガミヤさん」
「あ、リヒト、アマリアを説得してくれ。怒っても仕方がないと」
「いえ、ここには貴方に味方はいませんよ」
「…………え」
周りを見てみると、確かに仲間はいなかった。
みんな、アマリアの肩を持っているような視線、表情を浮かべている。
これは、何を言っても無駄だ。
というか、口を開くのが怖い。
「知里、約束、してくれる?」
「…………………………………………ハイ、ワカリマシタ」
やっぱり、俺の仲間は強いなぁ。
絶対に敵に回してはいけない。
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今、スペルが何をしているのかを聞くと、違う部屋で拘束していると聞き、今その部屋に向かっている。
大人数は動きにくいため、ロゼ姫とグレール、アマリアと俺の四人で向かっていた。
アルカとリヒトは俺の腕を掴んで、子供のように駄々をこねていたけど、何とか説得して置いて来た。
エトワールも同じく駄々をこねたけど、アマリアが「待ってて」と言ったらすぐに大人しくなってくれたなぁ。
それはそれでいいんだけど……。
…………んー??
スペルがいる部屋に近づいているんだよな……?
まったく、何も感じない。
ぶちぎれているか、暴れているのかなって思ってたけど、魔力すら感じない。
大人しく拘束されているのかな。
「なんか、違和感」
「アマリアも思うか?」
「うん、ここまで大人しくしているわけがないと思うんだよね。カケルの事が絡んでいると、周りの事など一切考えることなく大暴れするから」
首を絞められたもんなぁ、俺。
「着きましたよ」
「つい…………た?」
目の前には、なんの変哲もないただの水の中をモチーフにした扉。
特に何も感じないし、暴れた形跡もない。
何もないのが、何故こんなにも不安を煽るのか……。
「開けますね」
グレールが扉を開くと、中には部屋の中心で縄に縛られたスペルがっ――いない。
縄がぽつんと、残されているだけ。
「え、何故いないのですか!? しっかりと縄で拘束していたというのに」
ロゼ姫が驚いているけど、元カケルの冒険者仲間なのなら、特に驚きはしないな。
逆に、ここでおとなしく縛られていたら、実力を疑うレベル。
部屋の中に入って中心に捨てられている縄を拾い上げてみるけど、魔力とかは感じない。
魔法を使って抜け出したわけでは無さそうだな。
周りを見回しても、穴が開いている訳でもないし、人が抜け出せるような所もない。
これが、密室ミステリー。
おーい、探偵、ここですよ、早く来てください。
「ここには魔力封じの結界を張っていたはずなので、魔法を使うのは無理ですよ。本当に、どうやって抜け出したのか……」
「抜け出していないと思うよ。いや、縄からは縄抜けでもしたんだろうけど」
ロゼ姫が顔を青くしながら、初めて聞く単語を口にしやがった。
魔力封じの結界?
────あ、壁に魔法陣みたいなものが描かれてる。
円の中に”封”という文字。
あれって、結構前にセーラ村で見たな。
村長の家に仕掛けられていたトラップ魔法に似たような魔法陣だ。
へぇ、あの魔法陣があると、魔法が使えないんだ。
本当に使えないのかな。ちょっと試してっ――あ。
普通に手の上に水魔法が現れてしまった。
もう、効力がなくなっていたんだな。
再度魔法陣を見てみると――――あれ? 光ってる?
もしかして、効果はまだ継続しているのか?
「なぁ、本当に魔力封じの結界、張ってんのか?」
「わ、私が張った、魔力封じの、結界を、簡単に…………」
────あ、やべ。ロゼ姫が落ちこんでしまった。
グレールが複雑な表情で、項垂れているロゼ姫の肩を抱いている。
「ロゼ姫の魔力より上回っているから、効かないんだろうね、知里には」
「そういう事か」
グレールが言っていたもんな。
相手の魔力を自分が上回る事が出来れば、弱点魔法だったとしても相殺する事が可能だって。
俺はチート魔力を持っているし、ロゼ姫の魔力量を上回っていてもおかしくは無い。
「…………つまり」
「いや、今回のは魔法を使わなくても抜け出せたと思うよ。そんで、部屋から出ようとしている、と」
え、アマリアが開いている方の扉を見て、そんなことを言っている。
俺も同じく見てみるけど、何もいなっ――……
「あっ」
「げっ」
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