俺には家族はいない。でも、仲間がいる
『これを見たら、貴方ならわかるでしょ? これくらいなら、わかるでしょ?』
”これくらい”か。
確かに、これくらいならわかる。
何も出来ない、人を不幸にしか出来ない俺でも、人を幸せに出来る方法。
それを行うには、必要なものだ。
『貴方が出来る唯一、人を幸せに出来る方法よ』
唯一、できる、方法。
これで、最後くらいは俺も、人のために。
差し出されているロープ、これを掴めば、俺でも、人を幸せに──……
――――――――カガミヤさん!!!!!
「っ!!」
え、今、女の声が…………。
『…………早く、貴方が出来る唯一な親孝行よ』
そうだ、俺は、早くこれで……。
――――カガミヤ!!!! 知里!!!
っ、今度は、男の声が、二つ。
――――チサト様! チサトさん!!
っ!! 誰だ、誰が、俺の名前を呼んでいるんだ。
わからない、この声は、誰なんだ。
『…………早く、早くこれを掴みなさい』
…………? 母さんが、焦ってる?
なんで、焦ってんだ?
──いや、関係ない。
母さんに認められるのなら、俺を見てくれるのな。
俺を――――求めてくれるのなら、俺は――……
『鏡谷知里。お前さんは、何を信じる?』
――――っ、だれ、だ?
後ろ、誰かいる。でも、振り向いてはいけない、そんな気がする。
『お前さんは、鏡谷知里。炎と水魔法の持ち主で、お金が好きだった……かい?』
なっ……。た、確かに、金は好きだが……。
なんでそれを知っている。誰なんだ。
『あとは〜。あ、口では何と言っても、最後には助けてしまうお人好しな部分も君にはあるねぇ』
なんだよ、なんで、そんな事……。
『お前さんが今まで進んできた道には、本当に何も残っていないのかい? 振り返ってみるといい。見えるよ、お前さんの辿った道が――……』
振り返れば、いいのか。
でも、怖い。俺は、何もしていない。
何も、出来ていない。
振り返ったところで、意味なんて――……
――――――――カガミヤさん!!
後ろ、さっき聞こえた、女性の――――リヒトの、声が――……
振り向く途中、どこからか風が吹き荒れた。瞬間、俺の視界ん光が現れた。
「ここって……」
青空、様々な花が咲き誇っている空間。
そこに、リヒトが笑顔で立っている。
いや、リヒトだけじゃない。
アルカ、ロゼ姫、グレール、アマリアが俺の方を見て、微笑んでいる。
『~~~!! ~~!!!』
俺が目を離したからなのが、母さんは俺に怒っている。
何かを叫びながら、俺にロープを渡そうとしてくる。
俺は、母さんを裏切ってもいいのか。
俺は、家族を裏切っても、いいのか。
俺は、人を裏切っても──……
『ずっと、一緒ですよ。私達三人は、ずっとです』
――――あ、今の言葉、リヒトの声……。でも、こんな言葉、俺は聞いたことがない。
っ、手を、リヒトが手を、俺に伸ばしてきた。
口が動くが、声は聞こえない。
でも、なんて言っているかわかる。
――――カガミヤさん、ずっと、一緒ですよ
…………俺は、やらなければならないことがある。
俺には、こいつらと共にダンジョンを攻略して、カケルの封印を解いて、管理者をぶっ殺すんだ。
『親を裏切る気なの!! この!! 親不孝者!!!』
母さん、結局あんたは、俺の名前を一回も、呼んではくれなかったな。
俺は、もう母さんに縋らない。
俺には、俺を見てくれる仲間が、俺の名前を呼んでくれる仲間ができた。
迷うことなく、差し出されたリヒトの手をにぎっ――――っ!!!
――――ビュンッ!!
風が!!! 目を開けられない!!!
────え、目の前に広がっていた景色が白くなっ――……
・
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・
「――――ん」
体が、温かい。
右手が、誰かに握られてる?
薄く目を覚ますと、紅色の髪。
「…………リ、ヒト?」
「っ!? カ、カガミヤさん?」
涙を浮かべているリヒトが、俺を見て驚いている。
反対側には、アルカも同じく涙目で、俺を見ていた。
『主!!!』
『主様!!!』
スピリトと、リンクまで。
俺は、何をしていたんだ。
なんで、こんな事になっている。
――――ん? リヒトの隣にいる魔法使いが、俺に何かを付与してる?
木製の杖を掴み、呪文のようなものを呟いている。
「知里、大丈夫?」
「…………アマリア。俺、何がどうなってんだ?」
「説明すると長くなる。今は、まだ癒し魔法を受けていた方がいい」
「ゆっくりと休んで」と、瞼を閉じられた。
その時、綺麗な音楽が鼓膜を揺らし、眠気が襲ってくる。
これは、アマリアの魔法なのか?
わからない。けど、心地いい。
「おやすみなさい、知里」
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