俺が存在すると、不幸になるのかもしれないな
「え、調べた? リーダーがカケル様って……。どういう事でしょうか?」
「んー、これを話すと色々質問されそうだし、今は時間がないのでしょう? 早くオスクリタ海底に戻りましょう」
「よっと」と、ギルドの台を飛び越え地面に降りた瞬間、エトワールの姿が変わる。
銀髪の青いグラデーションの髪は、黒のグラデーションに変わり。
服は受付の制服ではなく、肩出しのフード付きの服、膝より短いスカート。
白いロングブーツでヒールの音を鳴らし地面を踏みしめた。
右手を横に振ると、何もなかったところから木製の杖が現れ、左手を頭に乗せると、魔法使いがかぶってそうな大きな三角帽子が現れた。
「――――それじゃ、行こっか!」
笑顔を向けられても、状況が把握できていない二人は唖然とするばかり。
そんな二人が気を取り戻す前に、三人の下に魔法陣が出現。
光り出すと三人を包み込み、そのまま消えてしまった。
☆
――――来たみたいだな。
やっぱり、まだまだ魔法は健在らしい。
《《魔力を半分以上封じ込められているはずなのに》》、凄いなぁ。
城の屋上で待っていると、背後にまばゆい光。
横目で確認すると、すぐに光が消え三人の女性が戻ってきた。
「っ、え、ここって…………」
「ロゼ姫、大丈夫ですか?!」
ふらつくロゼ姫を支えているグレール、無事戻ってきてくれてよかったよ。
そんで、隣に立っている魔法使いからの視線がうるさいけど、呼んだのはこっちだから仕方がない。
「もう!! なんで私の事を迎えに来てくださらなかったのですかアマリア様!! 私は首を長くして待っていたというのに!!!」
「知里が倒れたんだ。だから、僕は離れられない。この情報は君も入手していると思っていたのだけれど、違うのかな」
「していましたが……。うー…………」
子供のようにいじけているのは、ブラント・エトワール。
この人は、僕がカケルのチームで二番手に警戒すべき人物だと思っている魔法使い。
一番は確実にカケル。
スペルは基本補助魔法が得意だから、どうとでもなるし。
この人は楽観的で、子供のように無邪気で、なんにでも興味を持つ。
そう、なんにでも興味を持つから、様々な魔法に興味を持ち、得意魔法が夢・幻影魔法なだけで、様々な魔法を使いこなしている魔法使い。
スペルとはまた違った方向性でこの世界に名前を広めた人物。
受付嬢を行っている時は名前を明かしていなかったから、何も大きな問題にならなかっただけなんだろうなぁ。
カケルの名前が引き継がれているし、その元冒険者達の名前もしっかりと広がっている。
隠れるのもうまい、敵には回したくない逸材。
「それじゃ、エトワール。僕のお願い、聞いてくれる?」
「わかりました! アマリア様のお言葉は絶対!! このブラント・エトワール、全力を尽くします!!」
「そう、良かった。なら、知里を悪夢から呼び覚まして」
「はーい!!!!」
☆
水中にいるような、体がふわふわ浮かんでいる感覚だ。
目を微かに開けてみると、水の中のように泡が口から上へと昇る。でも、不思議と苦しくはない。
周りを見回しても暗く、視界は闇の中。
なんで、俺はここに居るんだ。何をしていた。
…………駄目だ、全く思い出せない。
気持ち悪い、思い出そうとすると頭痛が走る。
俺の身に、何が起きているんだ。
『ここは、貴方の夢の中。潜在意識の中』
っ、後ろから声。
振り向くと、そこには一人の女性――俺の母親が、真っ黒に染まっている瞳を浮かべ立っていた。
視界にいれるだけで体が震える。
見ただけで、心臓が痛む。
『貴方は、勘違いしているわ』
「か、勘違い、だと…………?」
『そう、勘違いしているの。貴方は、自分は望まれていると、勘違いしているわ』
っ、…………くそ。
そんなの、わかってる。
誰も、俺を望んではいない。
誰も、俺のことなど気にしていない。
『貴方は今いる世界でも望まれず、ただ孤独を抱えるのみ。今の仲間と呼ばれている人も、貴方を利用しているだけよ。早く、目を覚ましなさい』
――――そうだ。
俺は転移して、その世界ではチート魔力を持つことが出来た。
仲間も、出来た。
でも、その仲間は、俺を見ているわけではなく、力だけを見ているんだ。
それだけを利用して、俺を見ていない、認めていない。
俺自身を見ている人など、どこの世界にも居なかったんだ。
『貴方も、私と同じ苦しみを味わえばいいわ。私が捨てられたのは、貴方のせい、貴方が居なければ、私は幸せを、あの人と――……』
俺が生まれなければ、母さんは幸せになれた?
俺が居なければ、幸せに、なる?
「俺が、イナケレバ――――っ」
――――っ。
母さんが俺に、ロープを渡して、来た…………?
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