トラウマと夢
静まり返る部屋、知里はベッドで横になり、今では寝息を立て眠っている。
リヒトとアルカは少しも知里から離れず、ベッドの横に椅子を置き、座っていた。
ロゼ姫とグレール、アマリアとスペルはこの場にいない。
スペルは、ここに居ると知里に危険が及ぶと考え、ロゼ姫達と共に別の部屋に移動している。
アマリアは「嫌な感じがするから、地上を見て来る」と言って、出て行ってしまった。
その言葉が嘘なのは、この場全員がわかってる。
「城の外を見て来る」ではなく、「地上を見て来る」と言っている時点で、嘘。
知里からあまり離れる事が出来ないアマリアが、一人で地上に行くことは不可能。
でも、誰も止めはしなかった。
現状、誰も気力が出ないのもあり、動かない。
重苦しい空気が漂い、体が重く感じる。
「……………………カガミヤさん。目を、開けてください」
リヒトの嘆きだけが部屋に響くが、それも重苦しい空気により、消えてしまった。
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地上…………は、さすがに行けないか。
移動範囲はオスクリタ海底内のみ、結構範囲は広いけど、一人で地上に行けないのは辛いな。
まぁ、行けたとしても、行く気ないけど。
ちょっと、あの空気に耐えられなくて、城の外に出たかっただけだし。
「はぁ…………」
なんか、管理者の時でも色々あったけど、基本はギルドの管理をしておけば良かった。
でも、今はそれだけじゃない。
色んな物が積み重なり過ぎて、なにから解決すればいいのかわからなくなってきたなぁ……はぁ。
ユウェル族の長捜索やウズルイフの動向確認。
ダンジョンもクリアしてランクを上げて、カケルの封印解除準備。
小さな山は一つ一つ解決しているけど、大きな山は何一つとして解決してないし、解決に近付いているのかもわからない。
進めば進むほど、事件にぶち当たり足を止められる。
知里も甘い考えになってしまったし……いや、僕も人のこと言えないか。
ちゃんとその場に合わせて切り捨てることは出来るけど。
────こんな所で考えても仕方がないか。
でも、戻るのもなんか嫌だなぁ。
あの空気、体が重くて仕方がない。
今の知里には、大体癒し魔法が活躍する場面なんだけど、生半可な癒し魔法は、逆効果。
スペルくらいの実力がないと無理。でも、今あいつを頼るのは自殺行為。
知里が死ぬ可能性もあるし、頼めない。
でも、他に癒し魔法を使える人なんていないし……。
せめて、寝ている知里に声をかける事が出来る魔法を持っている人がいれば……。
僕の音魔法は、意識のある人にしか伝えられないしなぁ。
「――――あっ」
いや、待って。いる、いるじゃん。
相手の夢に入り込み、様々な悪夢を見せ管理者を惑わした人物。
昔、カケルと共に管理者を倒そうとした、幻影魔法と夢魔法を持っている優秀な魔法使い。
「でも、あいつは今、セーラ村の受付嬢をやっている。さすがにこっちに連れて来るのは僕には無理」
アルカとリヒトは知里から離れたくないだろうし、ロゼとグレールが引き受けてくれるかどうか。
「…………いや、今はもうそれしかない」
知里が助かるのなら、何でもやるだろう。
ロゼ姫も、グレールも――……
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セーラ村に二人、村人の視線を集めながらも慌てず悠々と歩く男女の影。
「ここが、セーラ村なんですね。なんだか、自然豊かでいい場所ですね」
「そうですね、ロゼ姫。ここはもっとゆっくりできる時にまた来ましょうか。今は、早くギルドの受付まで行きましょう」
「そうね。チサトさんの命の危機ですもん。アマリアさんの言葉を信じて、行きましょう」
二人は会話をしながら歩みを進め、ギルドへと辿り着いた。
冒険者に手を振り見送った銀髪の女性は、ロゼ姫達が目に入ると、先ほどまで浮かべていた笑みを消し目を丸くした。
「――――貴女がオスクリタ海底の姫、ロゼ・クラールですかね」
「御存じなのですね。ギルドの受付嬢である、ブランド・エトワール」
今、セーラ村のギルドの受付をしているブランド・エトワールは、アマリア直々に任命された女性。
アマリアと知里が大好きな、変わった人物。
彼女は、目を丸くし二人を見ていたが、まるで分っていたかのような言い分。
すぐに目を伏せ、ため息を吐いてしまった。
「もうそろそろで来るかなとは思っていましたよ。でも、残念…………」
「え、残念? まさか、協力していただけないのでしょうか」
ロゼ姫はアマリアに「もう事情は筒抜けだと思うから、詳しく話さなくてもいいと思うよ」と言われていた。
事情を知っているエトワールからの今の言葉に、嫌な汗が流れる。
ここで断られてしまえば、なんと言って説得すればいいのか考えなければならない。
グレールと目伏せをし、次の言葉を待った。
「――――いえ、残念と言うのは、ですね。私を迎えに来てくださるのがアマリア様ではない事、なんです!!」
ドドーンと、何故か堂々と言い切ったエトワールに、二人は数回瞬き。
理解が追いつかず、唖然としてしまった。
そんな二人を気にせず、エトワールは泣きながらテーブルにおでこをくっつけ、悲しみ続けた。
「なんで!! 私はアマリア様をずっと待っていたというのに!!」
涙を浮かべながら甲高い叫びをあげるエトワールに、二人は何も言えない。
お互い顔を見合わせる事しか出来ず、茫然。
「あぁぁぁあ!! アマリア様!! 私は貴方に出会うためにこの世を長くさ迷っていたと言っても過言ではないというのに! せっかく、私を頼ってくださるとわかってから、今日か今日かと待っていたというのに!! なぜ!! なぜアマリア様ではないのですか!!!」
「ま、待ってください。まず、お話をさせていただいてもよろしいでしょうか」
ロゼ姫が慌ててエトワールの言葉を止め、話を聞くように問いかける。
涙を流しながらも気持ちを落ち着かせ、「ハイ」と顔を上げた。
「あ、あの。なぜ、私達――――というか、貴方へ来門者が来るとわかっていたのですか? あと、アマリアさんが言っていたのですが、私達の事情もご存じのようで」
ロゼ姫が次々と質問する中、エトワールは相槌を打つことすらせず最後まで聞く。
彼女が言葉を止めると、エトワールは姿勢を正し、簡単に答えた。
「そうね。知里様について、以前から色々情報をゲットしていたから、とだけ言っておきましょう。私のリーダー、カケル様が関わっている人物だしね」
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