これは、俺はまた倒れるぞ、はぁ
……──んっ。
「あっ、起きましたか?」
「あぁ、わりぃ。普通にガチ寝しちまったわ」
欠伸が零れっ──ふあぁぁぁああ。
……あぁ? スペルが戻ってきてる。準備が出来たということでいいのか?
あー……。
なんか、疲れる夢を見ていたけど、体はしっかりと休めてたんかなぁ、怠い感じするけれども。
「俺、どのくらい寝てた?」
「多分、一時間くらいだと思うよ。いつの間に寝ていたから定かではないけどね」
アマリアが壁にかけられている時計を見ながら簡単に教えてくれた。
一時間かぁ、結構寝ちまったな。
手を上に伸ばしストレッチ――肩がいてぇ……。
「そーいや、スペルが戻ってきたという事は、占いの準備が出来たという事か?」
「はい、こちらはもう準備出来ています」
「それなら、もっと早く起こしてくれても良かったんだが?」
「それは…………」
ん? スペルが何故かロゼ姫の隣に座っているリヒトを見ている。
「起こそうとはしたんだよね、スペル。でも、リヒトがそれを止めたの」
「私を気軽に呼ばないでくださいませんかね、外道が。同じ空気すら吸いたくもない」
「知里に言って」
俺に言われても困るわ。
あの二人は無視しよう、大きな事件を起こさなければ口喧嘩くらいだし。
「リヒト、俺の体を気遣ってくれたんだな。どーも」
「いえ、こういう時じゃなければ、カガミヤさん、休まないと思いますので」
まぁ、あぁ、まぁ。
うん、色々あったからなぁ。
休みたくても休めなかったし、早く終わらせて報酬を貰いたいという気持ちで詰め詰めで行動していたな、今まで。
…………なんで、俺と同じ詰め詰めで行動しているアルカとリヒトは体を壊さないのだろうか。
やっぱり年齢? 年齢なのか?
俺は、やっぱりおじさんなんだな……ははっ……。
「本当に体の方は大丈夫なんですか? まだ寝ていても大丈夫ですよ?」
「いや、夢の中でカケルとさっき、少し話してきたんだ。ウズルイフについて少し聞いたんだが、どうも、時間をかけるのはあまり得策では無いらしい」
ウズルイフは得体が知れない。
愉快犯の考える事は本当に理解が出来ないし、考えれば考えるほど胸糞悪いだけ。
だが、考えなければ、俺は本当に心を破壊されちまうかもしれない。
それだけは、絶対に避けねぇと。
「待ってください。今、なんと言ったのですか?」
「え?」
「今、カケル様とお話をしたと、そう言ったのですか?」
「あ、あぁ。それがどうしっ――っ!!」
――――ガシッ!!
「ぐっ!! おい!!」
「なぜ!! どこで!! どこでカケル様と話したの!? 言え、教えろ!!」
なっ! こいつ!!
俺の首を掴み、押し倒しやがった。
くそ、力が入らない、苦しい。
「何をしているのですか!!」
「知里はまだ病み上がりだよ!! さすがにやめて!!」
リヒトとアマリアが引きはがそうとするけど、スペルの力が強すぎて首が絞まるばかり。
「早く!! 早く教えて! 占いでも、わからなかった。私の、大事な人の場所を、早く!!!」
教えろと言うのなら、力を緩めろや。
これだと、教えたくても、教えらんねっ……。
――――ポタッ
っ、な、みだ?
俺を見下ろし、喚いているスペルの黒い瞳から、透明な涙が、頬に落ちる。
恨みや憎しみ。
それとは違い、大事な人を失った悲しみが、涙と共に押し寄せて来る。
気持わりぃ、辞めて、くれ……。
――――ドクン
っ、心臓が、大きく波打つ。
首が、痛い。首を絞められているから、だけでは、ない気がする。
なんだ、辞めろ、辞めてくれ……。
「教えろ!!!」
「グッ!!!」
駄目だ、色んな物が──くっ、苦しい。
またしても、意識が……。
今度はグレールが引きはがそうとするけど、力が強すぎる。
魔法でどうにかするか、でも――……
『スペル、いい加減にしなさい。貴方の悪い癖が出ています』
「黙れ!! 私はずっと探していたの!! カケル様を!! 私の、命の恩人を!! まだ私は恩を返しきれていない!! だから、早く教えて!!」
アビリティの声にも耳を貸さない。
駄目だ、もう意識が――……
――――グイッ
「っ、は?」
い、息が出来る!
「ごほっ、げほっ!!」
「カガミヤさん!! 大丈夫ですか!?」
首、痛いけど、意識は飛ばさずに済んだ。
グレールが、引きはがしてくれたのか?
「――――あ、アルカ?」
俺の前には、アルカが床に倒れているスペルを見下ろしていた。
まさか、アマリア、リヒト、グレールの三人がかりでも引きはがす事が出来なかったスペルを、アルカ一人で引きはがしたとでもいうのか?
「な、何をするの! 早くどきなさい餓鬼!!」
「駄目だ、俺はここをどかない」
「なら、力尽くでもどかして、カケル様の情報を奪い取る!!」
っ、アルカが襲われる!!
「アルカ、逃げろ!!」
アルカが襲われる、そう思ったのだが――……
スペルの視界から一瞬のうちに外れ、懐に。
床を強く蹴り、タックルした。
抗う事の出来ないスペルは、勢いのまま地面に背中から倒される。
「がはっ!!」
藻掻き、逃げようとするが、体の関節をしっかりと拘束されているのかうまく逃げだせない。
「こんの!! 離せ!!!」
「カガミヤは、話さないとは言っていない!! 等価交換だと言っていただろう!! お前が! 俺達の事を良い未来に導いてくれれば、カガミヤもしっかりと答えてくれる!! だから、酷い事をするのはやめてくれ!!」
…………いや、まぁ、知っている情報は少ないけれども……。
っ! 魔力が、スペルの右手に集まってる!!
まずい、今はアルカも押さえつけるので精一杯だ。
今魔法を放たれると、避けられない!!
「アルカ! 今すぐにそこをどけ!」
叫ぶが、アルカは聞こえていないのか動かない。
グレールがアルカの元に行き引き剥がそうとするも、無駄。
まずい、あのままでは、確実にアルカはスペルの魔法の餌食になる!!
「あるっ──」
再度名前を叫ぼうとしたが、それはアルカの叫び声により途中で止まってしまった。
「~~~~~~お前にとってのカケル様が、俺達にとってのカガミヤなんだよ!!!」
――――っ。
俺が、カケル、だと?
あ、今のアルカの言葉で、スペルの動きが、止まった?
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