この世界、まじで疲れる
二人がにらみ合っている――――で、いいのかな。
スペルが俺の指輪を見下ろして怒っている光景にしか見えない。
「はぁ、なぁ」
うおっ。
俺が頭をガシガシしながら声をかけると、スペルに鋭く睨まれた。
アビリティからもなぜか視線のようなものを感じる。
怖い。やっぱり、女性を怒らせてはいけないんだな。
アビリティが女性かはわからないけど。も
「確かに俺はアビリティの言うように、カケルについての情報は少ないが、それでもいいなら今話してやるよ」
「本当ですか!?」
「あぁ、だが、等価交換だ。俺がお前にカケルの情報を渡すのだから、お前も俺の欲しい情報を話せ」
「? 構いませんが、なんですか?」
「まずは厳密な約束だ。俺は、俺の知っているカケルの情報を渡す。お前は俺が欲しい情報を《《魔法で探す》》。この言葉に同意しろ」
等価交換とか言ったけど、俺の知っている情報はこいつも知っているだろう。
いや、知らない方がおかしい。
だが、俺の欲しい情報は、俺達の今後の動きに関わる。
等価ではないが、この言葉を出す事により、相手を頷かせることが出来ればそれだけでいい。
「わ、わかりました。私の出来る事があれば、やりましょう」
「よし、なら、まず俺の要望をかなえろ」
「…………はい」
素直で良かった。
俺の圧に負けていると言った方がいいだろうが、どっちでもいい。
「お前、さっき占いで未来を見る事が出来ると言っていたな。ユウェル族の長がどこにいるのかを占いで調べる事は可能か?」
「ユウェル族の長? そうね……。長が普段身に着けているなにかや、近しい人の血肉があれば、恐らく可能ですよ」
血肉……怖いことを言うなよ……。
「長が身に着けていた……。リトス、長が身に着けていた物とかって、さすがにない……よなぁ……」
ロゼ姫の膝に乗っているリトスに聞いてみると、首を傾げちまった。
やっぱり、そうなるか。
「えっと、長が身に着けている物は持っていないぞ。でも、長はおいらのじいちゃんだ」
「え、つまり、お前の血には長の血が少しばかり流れているのか?」
「カガミヤさんの言い方も少々怖い気がしますが…………」
いや、リヒトよ。
逆に、これ以外の聞き方、ないだろう。
肉親という事は、リトスの血で占いを出来ないだろうか。
「肉親となると、少々血を頂く形であれば占いは可能です」
「だ、そうだ。という訳で、お前の血を貰ってもいいか?」
――――シーーーーーーーン
あ、あれ?
なんか、俺が質問すると、リトスが顔を真っ青にして体を震えさせてしまった。
な、なんで?
あ、血を抜くのが怖いのか?
確かに、病院とか言って血を抜くとかなら安全だろうけど、モンスターだからなぁ。
病院行っても無駄だろうなぁ。
んー、どうすれば痛み無く血を抜くことが出来るのか。
「血を抜くのは私にお任せください。職業柄、このような事は得意です」
と、言いながらスペルが懐から注射を取り出し、何やら準備を始めている。
見たところ、手に持っているのは現代でも使われている採血用の、針に穴が開いている注射。
「魔法とかで回復しているのなら、物理の治療法とかはあまりやったことがないんじゃないか?」
「そんなことはないですよ。魔力を抑えるため、小さな傷などは魔法を使わず治していた時がありました。それだけでなく、血を抜く時も普通にありましたので、慣れております」
「へ、へぇ……」
占いや回復魔法だけでなく、ここまで出来るのか。
癒し処には癒し魔法に特化した魔法使いがいるとは聞いていたが、物理も可能なのはおそらくこいつだけだろう。
アマリアの話によると、こいつもこの見た目でもう数百年生きている化け物みたいだし。
「まぁ、これなら大丈夫……か? リトッ──駄目か」
もう一回リトスにお願いしようとしてみるけど、こりゃ駄目だな。
もう、バイブレーション機能が搭載されているんじゃないかと思う程震えてる。
見た目がぬいぐるみみたいだから、無理やり拘束して抜くのもはばかれるなぁ。
「血以外にも何か、代わりになる物はないか?」
「髪の毛や爪、血や肉。それくらいしか代わりになる物はないですよ。長が身に着けているものが無いのなら」
…………爪………だめかぁ。
短ぇな、深爪してる。
「それなら、やっぱり足を使うしかないのか…………」
「え、それだと、私には何も教えてもらえない……の、でしょうか?」
「え?」
あ、あぁ。
確かにそんな事言ったな。
「占いが出来ないのなら仕方がないし、さっき言った事はなしでっ――――」
――――ん? あ、あれ?
こればかりは仕方がないし、カケルの情報をタダで渡そうとしたんだけど、強い魔力が放たれてませんか?
「カケル、様と近しい存在から、情報を、頂けると…………。せっかく、数百年。命を引き延ばし、カケル様の封印を解こうと……」
「あ、あの? スペル、さん?」
「ふ、ふふ、ふえぇぇぇぇええええ!!!!! カケル様の情報をくださあぁぁぁぁぁああああい!!!!」
泣いたぁぁぁぁぁあああああああ!?!?!?
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