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これ、久しぶりの感覚だ

 次の日、誰にも起こされることなく、自然と目が覚めた。


「ふわぁぁぁあ…………え、誰もいない?」


 欠伸をしながら体を起こしたのだが、何故か誰もいない。

 本は綺麗に部屋の隅に積まれているけど……。


 アマリアとリヒトがいないのは本当に珍しいな。

 必ずどっちかは俺が起きるのを待っていたり、起こしてきたりするんだけど。


 ベッドから体を下ろすっ――うっ、体が痛い。


 ────って、あ、あれ? 

 なんか、体がものすごく重たい気がする。なんだこれ。


 体がふらつく、眩暈が酷い。

 耳鳴り……、関節まで痛い。


 立っているのも辛い。

 でも、あいつらがどこにいるかだけでも知りたい。


 どこで何をしているんだ。


 置手紙とかも見当たらない、というか視界が歪んで、合ったとしてもわからない。


 うっ、マジで立っているのすら辛い。

 体に力が……。



 ――――ガタンッ



 あぁ、体、ぶつけた。

 力が抜けて倒れちまったんだな、これ。


 …………床が、冷たくて気持ちがいい。


「はぁ……、はぁ……」


 息が苦しい。立ち上がりたいけど、力が入らない。


 これ、寝ている時に魔法か何か喰らった感じか?


 でも、それだと誰もいないのはおかしい。

 必ず誰かがいるはずだ。


 …………ん? 人の、気配?


 うっ、体が震える。けど、誰かいるのなら現状を教えてほしいし。


 無理やり顔だけでもあげると、女性の足が映る。

 ロゼ姫や、リヒトではない。だって、裸足だし。


 誰だ、わからない。


『――――なんで、貴方は生きているの』


 っ、この声、聞いた事がある。

 この、人を軽蔑しているような、人を人とも思っていないような。


 俺の記憶に深く刻まれている、俺にトラウマを植え付けた人の、声。


 心臓が、痛い。汗が流れ、床に落ちる。


『なぜ、私は死んだのに、誰にも望まれなかった貴方はのうのうと生きているの』


 見たくない、顔を上げたくない。

 でも、上げないと。確認、しないと。


 ――――ドクン ドクン


 息がしにくい、心臓が破裂しそう。


 見ないと、顔を上げないと。


 ゆっくり、震えている体を無視し顔を上げると、目の前に映ったのは女性の顔。


 黒い瞳に黒い髪、顔半分が引きづられたのか爛れており原型がわかなくなっている。

 そんな女性が、白い歯をむき出しにし、俺の首に手を伸ばし口を開いた。


『アンタガ、イナケレバ。ワタシガ、シアワセニナレタノニ』


 目が、はなせっ――……


 ――――ドタドタ!!



 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・


「知里!!!!」

「カガミヤさん!!!!」


 部屋に走って戻ってきたのは、アマリアとリヒト。後ろにはアルカとロゼ姫、グレールもいる。


 中では、知里が床でうつぶせに倒れており、苦し気に唸っている姿。

 すぐさまアルカが近づき、体を起こしてあげた。


「はぁ、はぁ…………」

「カガミヤ!? おい、大丈夫なのか!?」


 息が荒く、顔は赤い。汗が流れ、酷くうなされている。明らかにいつもとは違う。


 アマリアは隣に移動し、おでこに手を当てた。


「…………はぁ、熱が上がってるっぽいね」

「まじかよ……。なんで、起き上がったんだよ」

「おそらく、僕達がいないことに不安を感じたんだろうね。探そうとでもしたのかな」


 アマリアとアルカが話している時、リヒトはリトスをロゼ姫に預け、知里へと近づく。

 アマリアと同じくおでこに手を当て熱を測ると、眉間に深い皺を寄せ手を離した。


「私の回復魔法が、熱にも効けば…………」

「それを考えても仕方がないよ。それより、今回の熱は、疲労での物だと思うんだけど、確か癒し処で回復させたはずだよね。どういうことか説明してもらってもいいかな、ロゼ姫、グレール」


 左右非対称の瞳を鋭く光らせ、ドア付近から動かないロゼ姫とグレールを見る。


 殺気の含まれている視線に、グレールは咄嗟にロゼ姫を守るように前に立ち、警戒しつつ重い口を開いた。


「しっかりと回復はしたと思いますよ。ですので、疲労以外の何かに原因があるのかもしれません」

「…………そうだね。熱は、疲労から来るだけではないしね」


 アマリアがすぐに身を引き、グレールは安堵の息を吐く。


 あわあわとアマリア達を見ていたアルカだったが、リヒトが「横にさせてあげよう」と言ったため、素直にベッドへと横にした。


「冷やしたタオルとかを準備してきます」

「いえ、リヒトさん達はチサトさんの傍にいてください。また、勝手に起き上がるかもしれませんし」


 ロゼ姫がグレールの「行きましょう」と言うと、二人で廊下へと出て行ってしまった。


 残された三人は、まだ息苦しそうにしている知里を囲うように座り、不安そうに眉を下げる。


「アマリア様がカガミヤさんの違和感に気づいてくださらなかったら、床でずっと倒れていることになってしまっていたのでしょうか」

「そうだろうね。こういう時、繋がっていると楽でいいかも」


 しーんと静まり返る部屋の中。

 誰も口を開こうとはせず、重苦しい。


 知里の苦し気な息使いだけが聞こえ、リヒトは唇を噛んだ。


「――――ただの熱だよ、そこまで深刻にならなくてもいい」

「でも、酷すぎる熱が続くと、命の危険性もあります」

「知里の場合は何かの病気でもないだろうし、大丈夫。それに、僕達が不安そうにしていると、熱を出し苦しんでいる知里が目を覚ました時、もっと不安になるよ? 気は心、大丈夫だよって思わせてあげないと」


 アマリアの言葉を耳にするも、アルカとリヒトは目線を上げず俯き続ける。

 どうすればいいかと考えていると、アマリアは何かを思い出した。

ここまで読んで下さりありがとうございます!

出来れば次回も読んでいただけると嬉しいです!


出来れば☆やブクマなどを頂けるとモチベにつながります。もし、少しでも面白いと思ってくださったらぜひ、御気軽にポチッとして頂けると嬉しいです!


よろしくお願いします(*・ω・)*_ _)ペコリ

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