もうこの空気丸ごと換気したい
「もう嫌だ、嫌だ……。俺は、生きていたくない。死んでやる。俺はもう、死んでやる。首を吊って死のうか、それとも窒息死? あぁ、金に窒息死させられるのならいいかもしれない。あははははははは」
「戻って来いカガミヤ!!」
「戻ってきてくださいカガミヤさぁぁぁぁああん!!!」
本にまみれた部屋から首を吊れそうなものを探すが、今度は両腕にアルカとリヒトが引っ付いてきて身動きを封じられちまった。
離せ、俺はもうここでは生きていけない。
恥をさらした俺は、ここで死ぬしか道はないんだ。
死なせてくれ。最後くらいは、金により窒息死したい。
苦しいが、気持ち的に苦しくない。むしろ、幸せだ。
よし、死のう。
「待ってください、チサトさん」
「なんだロゼ姫。お前が俺の窒息死用の札束を用意してくれるのか? それなら頼む、俺は待っている」
「良い傾向ではないのでしょうか」
「ん? 良い傾向? なにが?」
俺の言葉を無視して何を言っている。
良い傾向? どこがだ。
「最初の頃のチサトさんを私とグレールは知りませんが、アルカさんとリヒトさんの反応でわかります」
いやいや、何がわかると言うんだ。
「最初の頃のチサトさんは、他人よりお金を重視しており、外道と呼ばれてもおかしくないという事なんですよね?」
「おかしいおかしい、わかってない、わかってない」
「ですが、今、チサトさんは人の事を考え、合理的より温情を選んだ。それは、良い傾向ではないでしょうか」
なんか、俺の印象が最悪スタートなんだが?
なんで、ここまで俺は印象を下げられなければならないんだ。
今まで結構、体を張って頑張ってきたと思うんだけど。
今まで、お金より人のために命を懸けてきたと思うんだけど。
俺、アマリアとか病に倒れた餓鬼の母親とか救ったと思うんだけど。
何でここまで俺の印象は最悪なのだろうか。
「アルカとリヒトのおかげだね」
「黙れ、 シャラップ、 静粛に、 喋るな、殺すぞ」
「様々な言い方の”黙れ”をありがとう。でも、黙らないよ、ごめんね」
どこまでも冷静でいやがって……。
何でだよ、黙れや。
「いい方向に進んでいるという事でいいんじゃない? 気にしなくてもいいよ、きっと」
「もう、色々言われ過ぎて頭パンクして来た……」
「だから、気にしなくてもいいんだよ。周りが納得出来ているのなら」
肩をポンッとするんじゃないよ、哀れみの目を向けるな。
「あーあー!! この話はここで終わり!! 終わり終わり!! ほれ、ユウェル族について調べるぞ。よくわかってないリトスがかわいそうになっている、本に埋もれて藻掻き苦しっ――え?」
目の端に映り込むものを慌てて説明して話をそらそうとしたんだが、なんか、え? 目に入った。視界に、入った。
本に埋もれ、じたばたしているリトス。
な、何でそうなってるの?
「リトス君!? 大丈夫!?」
リヒトが真っ先にリトスの方へと向かい、上に乗っている本をどける。
「プハッ!! び、びっくりしたんだぞ!!」
「何があった?」
俺もリトスの隣に移動して聞いてみる。
「だって、チサト、死のうって、言うから。止めないとって思ったんだぞぉ。そしたら、足が、滑ったんだぞぉ」
「へ、へぇ~…………」
聞かなければ良かった。
「なんで止めないといけないの?」
「聞くな、アマリア」
アマリアの口を塞ぐが、くそっ、遅かった。
「だって!! チサトだけだぞ! おいらを捕まえようとしなかったの!! それに、長を助けてくれるんだぞ。死んだら嫌なんだぞ!!!!」
「やめろやめろやめろ、それ以上何も話すな口を開くなシャラップ!!」
なんだよなんだよ、こうも胸がざわざわなるなんて聞いてねぇよ!!
というか、どうすればこの不愉快な感覚は無くなるんだ!! 誰か、助けてくれ!!!
「これが、仲間というものなんじゃないかな、知里」
アマリアが顔を覗かせ、口に手を当てながらそんなことを言ってやがる。
俺の真っ青になった顔を見ていないのか。いや、見ているよな?
「うっせぇよ、仲間とかどうでもいい。俺は俺のやるべきことをやるだけだ。俺の目的のため、俺の金の為に動くだけ。他は心底どうでもいいんだよ!!」
くっそぉぉぉおおお!!
もう嫌だ、こんな所から早く抜けだしたい。
「俺はもう寝るから!! お前らだけでユウェル族について調べてやがれ!!」
俺は変な女にも絡まれて本当に疲れたんだよ!! 悪いが、今日はもう寝る!!
……………あっ。リヒトに、回復魔法について聞くの、忘れた。
ここまで読んで下さりありがとうございます!
出来れば次回も読んでいただけると嬉しいです!
出来れば☆やブクマなどを頂けるとモチベにつながります。もし、少しでも面白いと思ってくださったらぜひ、御気軽にポチッとして頂けると嬉しいです!
よろしくお願いします(*・ω・)*_ _)ペコリ