なんで一番の被害者が加害者みたいな扱いされてんの?
「どうやら、貴方にはここで死んでもらう必要があるみたいだな」
「いや、ないです」
「ひとまず、死んでください」
「ひとまず俺の話を聞け」
銃口を俺に向け、死ぬようにお願いされた。
そんなの、素直に受け入れられるわけないだろう。
でも、銃口を向けられれば、こちらは両手を上げ降参ポーズをするしかないわけで……。
「――――ん?」
なんだ、ヤンキーが向けてきている銃口、光ってる……?
魔力が込められているのか?
「お前の話を聞く必要はない」
言うと同時に、ヤンキーが引き金を引いた。
――――パンッ パンッ パンッ!!!
放たれたのは弾丸じゃなくて、氷の礫!?
地面を蹴り逃げられたが、二人分の弾丸が降り注ぐ中逃げ続けるのは不可能。
攻めて、あいつらの攻撃をやめさせないと。
『ご主人様、ご命令を』
「いきなり、っ、そ、そんなこと、言われたとしてもなぁ」
こんな状況で頭が回るほど俺はまだ戦闘慣れしていない。
すぐに指示を出すなんて、無理だぞ。
「待ってろカガミヤ!! 俺がどうにかしてやる!!」
「え、ちょっ!! 勝手に動くな!! っどわ!!」
アルカがいきなりヤンキー二人に向かって走り出しやがった。
止めようとするが、氷の礫がまだ俺の方に向かって来て動きを制限される。
「小癪な真似を」
あ、弾丸の雨が止んだ。アルカに気が逸れたらしい。
今のうちにあいつの無茶を止めねぇと!
俺に向けていた二人分の銃口は、走っているアルカへと向けられている。
「余計なことをするなら、死んでもらおうか」
「しねぇぇぇぇぇええ!!!」
おいおい、アルカ。剣を構えたところで意味はないだろ。
お前は氷の礫を切るつもりか?!
――――――――パンッ パンッ
氷の礫がアルカへと真っすぐ放たれる。
走っていたから距離が無い、避けられない!
当たる――――そう思ったが、まさかの展開に口をあんぐりさせてしまった。
「え、え? アルカが、剣で氷の礫を、斬った……?」
アルカが剣を水平にし、放たれた氷の礫を目にもとまらぬ速さで斬った。
「嘘だろ!?」
「なんでだよ!!!!」
ヤンキー二人が驚いてる。
そりゃ、驚くよな。まさか、弾丸を斬るなんて誰が思うんだよ。
氷の礫を切ったアルカは顔を上げ、剣を片手に二人へと走り続けた。
「俺だって、今まで何度も自分より強いモンスターと戦ってきたんだ。これぐらい日常茶飯事なんだよ!!!」
「っ、くそぉぉおお!!!」
――――っ! よし、馬鹿ヤンキーに飛びつき床に倒させた。
剣を首筋に当てているから迂闊に動けないだろ。
すぐさま冷静ヤンキーが銃口をアルカに向け氷の礫を放とうとしているが、俺を忘れてるな?
俺の手には、炎の弓。
――――――――準備は、整った。
弓を構えていることに気づいた冷静ヤンキーだが、遅い。
「っ、しまっ――……」
「終わりだ。|flama Arrow!!!」
右手で引いていた弓を、冷静ヤンキーに向けて勢いよく放った。
弓矢の先に炎の渦が出来上がり、弾丸を何度も撃ち勢いを殺そうとしているが意味は無い。
「っ、くそぉぉぉおお!!!!!」
――――――シュッ
「――――は?」
「お、良かった良かった。放った後でも魔力をコントロールすれば、途中で消せるんだな」
放たれた弓矢は、ヤンキーに当たる直前で散った。
頭の中でイメージしていた通りになって良かった。
怯えている冷静ヤンキーの前に立つと、その場にしりもちをついてしまった。
怖いのか? だが、俺は逃がさんぞ。
ここからは、楽しい楽しい雑談タイムだ。
顔面蒼白で、体を震わせているヤンキー君には聞きたいことが山ほどある。
話しやすいようにしゃがむと、後ずさり始めた。
逃がすかよ、肩を掴んで動きを止めてやるわ。
「なぁ、村長に会わせてくれるよな?」
「…………くそ」
あ、目を逸らされた。
やっぱり忠誠心は強いのか、簡単に折れてくれなさそう。
今より怯えさせてもいいが、恐怖心だけでは忠誠心が強い奴は折れない。
恐怖心プラス何かを植え付けたいな。
「――――っ、あ、アニキ!!! 今すぐ逃げてください!!!」
「っ! 馬鹿言え、ここで逃げたら村長を捨てることになるだろう!!」
アルカが抑え込んでいる馬鹿ヤンキーが何やら叫び出した。
なんだ、これ。なんか始まった。
「それに、ここで俺が逃げちまったら、お前が何をされるかわからん。俺は絶対に、逃げねぇよ」
「俺はいいんすよ。アニキさえ生きていれば、俺は何もいらねぇ!!」
「馬鹿言うな!! 俺一人生き残っても、俺自身が何も嬉しくねぇんだよ!!」
「でも、アニキ…………」
………………………………。
待て、待て待て。
なに、お涙ちょうだい劇やってんだよ、気まずいからやめて。俺が悪者みたいじゃん。
「おい、待てやお前ら。なに勝手に被害者ぶってんだよ。現状で一番の被害者は俺やぞ。突然、異世界に転移させられ、無理やりダンジョン攻略させられ、挙句ダンジョン報酬はよくわからん精霊。やっと念願の金をもらえると思ったらこの有様だ。本当にどうなってんだよ、俺の金はどこだ、早く寄越せ糞ヤンキー共」
唾を吐き出してやろうか、あぁ? 衛生上良くねぇからやんねぇけどよ。
俺が悪者みたいになっているのが気に入らねぇな、一番の被害者なのに…………。
「俺は村長に会わせろと言っているんだ。断るのならそれでいい。お前らと関わる方がめんどくさい」
なんとか説得させようと思ったけど、それの方が何倍もめんどくさいからもういいわ。勝手に中に入るわ。
「だが、さっきお前は――――」
「うるさい、もういいよ。この中にいるのはわかったし、あとは自力で探す。見た感じ中は、そんなに広くないだろ」
「ま、待て!!」
冷静ヤンキ―の横を通り抜けようとした時、ズボンの裾が引っ張られる。
「おい…………。いい加減にしてくれ。俺は早く報酬が欲しいんだよ」
掴まれているズボンを脱げないように掴み、こいつの手を払おうとしたらアルカが控えめに声をかけてきた。
「な、なぁ……」
「どうした」
アルカよ、うるさいヤンキーの手を離すなよ?
また、そいつが暴れ出したらめんどくさい。
「こいつらを動けないように縛ってから、中に入ればいいんじゃねぇの?」
「…………そ、うだな」
俺も頭が固くなっていたな、こんな単純なことが思いつかなかったなんて、あははははは。
意外にバイオレンスだな、アルカよ。
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