もう、色んな事があり過ぎて逆に冷静になるよな
やっとこの女は、自分の名前を名乗りやがった。
こいつの名前は、スペル。
回復と占い魔法を得意とし、もう数年も癒し処に務めているらしい。
自己紹介をすると、スペルは水晶玉を取り出し、両手の平に乗せる。
息を一定にし、魔力を込め始めた。
透明だった水晶は、魔力が込められるのと同時に発光。
中を覗き込んでみると、海の中? いや、星空?
見ているだけで、心が落ち着くような景色が映し出されていた。
「――――rest」
魔法を唱えると、水晶から放たれる光が俺の身体に移る。
一瞬、何か攻撃かと思い体がこわばったが、特に痛みなどはなく、温かい光だった。
見下ろすと、俺の体自体が光っている。
これが回復魔法? 体が光っているだけ?
よくわからないまま待っていると、なんとなく、何かが吸われているような気がする。
なんだこれ、なんか。
すっきり? していくような感覚。何が吸われているんだ?
よくわからないまま待っていると、徐々に光が落ち着き始めた。
「――――ふぅ。これで疲労は回復したはずです。貴方の身体には随分と様々な害が蓄積されていたみたいですね」
言われた通り、体が楽になったような気がする。
体にのしかかっていた何かが吸い取られ、軽い。
これが、回復魔法? 傷を治すだけじゃないんだな。
これって、リヒトも覚える事が出来るのだろうか。
もし、出来るのなら、これからは金を払わずとも疲労を回復できるようになるんじゃねぇか?
今度、リヒトに聞いてみよう。
「では、体は回復したという事で、カケル=ルーナについて話をさせていただきますよ」
「まじでぇぇぇ……」
あぁぁぁあ、めんどくさいめんどくさいめんどくさいめんどくさい。
「待ち合わせ場所と時間を指定してもよろしいでしょうか、よろしいですね?」
「……………………ドーゾ」
癒しに来たはずが、疲れる結果となりました。
※
やっと解放された俺は、グレール達と共に城へと戻ってきた。
そこには、大量の本に埋もれているアマリアと、めちゃくそ疲れて床に倒れ込んでいるアルカとリヒトの姿。
リトスが本の上に座って三人を見ている。
いつもは広いと思っている部屋が、何故かものすごく狭く感じる。
足の踏み場はあるけど、ほとんどが本、本、本。
「ナンデスカコレ」
中にいる三人に聞くと、すぐさま反応したのはアルカとリヒト。
顔面蒼白のまま顔を上げ、俺を見たかと思うと、目に涙をうかっ──え?
「カガミヤァァァァアア!!!!」
「カガミヤさぁぁぁぁぁああ!!!!」
────ぐえっ!!
え、なになになになに!?!?!?
なんかアルカとリヒトが突っ込んできたんだけど!!
突然の事で耐え切れず背中を強打、普通に痛い。
「いってて……。な、なんだよこれ、何が起きたんだよ…………」
「ぐすっ、もう、もうアマリア様いやだぁぁぁああ!!!」
え、え? えぇぇえ?
なんか、子供のようにリヒトが俺の膝の上で泣いてるんだけど。
アルカも隣で顔を青くして、俺に助けを求めて来るし。
待って、頭がパンクしそう。
「この本、星屑の図書館で貸し出している本ですね」
「そうみたいです。いくつか読んだことがあります。これは、借りてきた本なのでしょうか、アルカ様、リヒト様」
数冊とって、ロゼ姫とグレールがアルカ達に聞いている。
涙を流している二人は「うん」と頷き、また俺に縋る。
……なぜ、俺に縋る。
離れて欲しいが、さすがに今の二人を引きはがすようなことは良心が痛んで出来ない。
二人を落ち着かせるため頭を撫でながら、本に没頭しているアマリアを呼ぶが、聞こえてない?
「おい、アマリア」
「…………」
「アマリアくーん」
「…………」
駄目だ、全く聞こえてない。
回りの声、気配、音を全てシャッドアウトしてやがるな。
「…………acqua」
声が駄目なのなら、魔法で無理やり起こしてやるよ。
「せいっ」
――――バッシャーーン
アマリアに水の球が命中。
本に水滴がかからないようにコントロールは欠かさない。
よし、唖然としているアマリアがこちらを向いたな、やっと声が届くようになったんだろう。
「アマリア、何があったんだ?」
「その前に、なんで僕が水をかけられたのか説明も求む」
あ、ちょっと怒ってる。
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