行くところ行くところで、なんで俺は面倒ごとに巻き込まれないといけないんだ
「おいおい、なんでいきなりその名前を出すんだ? 関係あるのか?」
「質問を質問で返さないでください。私の質問には”ハイ”か”イエス”で答えるのです。さぁ、答えなさい」
────わかった、こいつ。
めちゃくそめんどくさい。
俺という人間が絶対に関わってはいけない人種。腕に蕁麻疹が出そう。
それくらい、この女と話すのが生理的に嫌だ。
「……………………ごめんなさい、間違えました」
かくなる上は、何事もなかったかのようにテントから出るしかない。
金は、仕方がない。
この女と離れる事が出来るのなら安いもんだ。
立ち上がり、テントから出ようとしたら、手を思いっきり掴まれちまった。
「お待ちなさい。”ハイ”か”イエス”の言葉を聞いておりません。早く答えなさい」
「それを答えた事により、俺は今以上の地獄を味わう予感がするので無理です」
ここで適当に答えると、変な勧誘されたり、詐欺をしてくるかもしれない。
ここは軽く流し、逃げ出すチャンスを見つけた方が賢明だ。
「なぜ、私が貴女に”ハイ”か”イエス”しか言わせないかわかりませんか?」
「知らん。早く手を離せ」
「それでしたら教えてあげます」
「いらん」
「私が、カケル=ルーナの未来を見て、貴方を見つけたからです」
────はぁ? え、未来?
なに言ってんだこいつ、頭大丈夫か?
「疑っている顔ですね」
「疑っているというか、お前の頭を心配してる」
「心配いりません。逆に私の言葉を理解出来ない貴方の方が心配になります。脳みそは動いておりますか? 正常に機能しておりますか? 私の声は耳に届き、理解出来ていますか?」
…………いや、なんか、逆に腹が立たんな、こいつ。
めんどくさいという気持ちが何よりも優先されて、今すぐここから離れたいという感情が俺の怒りを鎮めている。
「はぁぁぁああ、わかった。んじゃ、イエス。これでいいか、いいだろう。答えた、んじゃな」
「イエス、そう答えたという事は、貴方はカケル=ルーナを知っているという事ですね。でしたら、次の質問です」
「ぜってぇ答えねぇ。いいから離せ、マジでキレるぞ」
「どうぞ、キレても特に怖くないので」
なんだよ、こいつ。
つーか、なんでそこまでカケルに執着しているんだよ。
「では、質問します。なぜ、貴方はカケル=ルーナを知っているのでしょうか」
「有名だから」
「嘘は良くないですよ。事実だけを言いなさい」
「話を聞いたから」
「事実だけを言いなさいと言っているのですが、話を聞いていますか?」
さっきから適当に話を流そうとしているのに、ことごとく嘘だとばれる。
俺、表情は変化していないと思うし、口調や声色も一定のはず。
いや、苛立ちとかは含まれているのはばれているかもしれないが、それは別にいい。
逆に、気づいて俺を早く解放してほしい。この、手を掴んでいる手を離してほしい。
「早く、教えてください。貴方はなぜ、知っているんですか?」
顔を近づかせて来る。
くっそ、これは長くなるぞ。
「…………頼まれたから」
「何を」
「カケルの封印を解けと」
「誰に」
「本人とアビリティに」
「? アビリティ?」
ん? あ、あれ?
アビリティの名前を出すと、初めてこいつが首を傾げた。
アビリティを知らないとか?
いや、そんなことはないはず……。
…………待てよ?
こいつは冒険者という訳ではないから、知らなくても無理はない…の、か?
アビリティと呼ばれる指輪は、冒険者の証なんだもんな。
こいつはただの癒し処の魔法使い、知らないのも無理はない、か。
…………いやいや、待て待て。
こいつは絶対にただの魔法使いではない。
だって、ただの魔法使いが俺にカケルについて聞いてこないだろうし、こんな押し問答するはずがない。
こいつは、一体何者なんだ?
「…………そのアビリティ、見せていただいてもよろしいでしょうか」
「別にいいが、なんでだ?」
「気になる事がありまして」
「ふーん」
その、気になる事がなくなれば俺は解放される。そう信じてアビリティを呼ぶが……。
「あ、あれ? アビリティ、おい。アビリティ?」
――――シーーーーーーン
どうしたんだ?
いつもなら呼ばなくても俺の心情を読んで答えてくれるのに。
今はいくら呼んでも出てきてくれない。
「いかがいたしましたか?」
「いや、いつもは呼んだだけで声が返ってくるんだが、今回は出てこない」
今までこんなことなかったし、どうすればいいんだよ。
「出てこないのなら仕方がありません。それより、カケル=ルーナについて色々話したいのですが、よろしいですね。では、さっそく待ち合わせの時間と場所を――……」
「おい、待てや糞女。さっきから俺の事情を無視しやがって。なんなんだよ、俺を舐めるのもいい加減にしやがれグズ女」
流石に俺のこと舐め過ぎだろうが。
さっきからことごとく俺の事をおちょくりやがって、いい加減にしやがれ。
俺の怒りをやっと感じ取ってくれたのか、女はやっと色々離してくれる気になってくれた。
口元を隠していたマスクを外し、頭にかぶっていたフードをとる。
「わかりました、確かに強引すぎましたね。ここからは私もお話をしましょう」
「話す前に、俺がここに来た理由を考え、お前は早く実行してくれ」
今の言葉で、女は「あっ」と間の抜けた声を出しやがった。
こいつ、マジで忘れてやがったな?
ここまで読んで下さりありがとうございます!
出来れば次回も読んでいただけると嬉しいです!
出来れば☆やブクマなどを頂けるとモチベにつながります。もし、少しでも面白いと思ってくださったらぜひ、御気軽にポチッとして頂けると嬉しいです!
よろしくお願いします(*・ω・)*_ _)ペコリ