戦力的に削れるのは痛いが、メリットないし仕方がない
「くくくっ、あーはっはっはっはっ!!! それ、その顔だよ!! その、絶望の顔、たまんねぇなぁ!! なぁ、鏡谷知里!!!」
「くっ、何が起きやがった…………」
不愉快な笑い声が、この空間に響き渡る。
気色悪い、気味が悪い、煩わしい。
「あいつの魔法は”時間”。時を操る魔法を得意とするんだ」
「時間、魔法?」
「そう、今放った魔法はtemps。一つの魔法の時を止め、消滅させる。管理者の中でも厄介な属性を持っているよ」
時を操る事が得意という事は、何を放ってもあいつの魔法により時を止められ、消滅させられる。
どうすれば、あいつを殺せる。
今みたいに正面から行っても意味はない。時を止められて終了。
それなら、死角を狙えば行けるか?
「ちなみに、あいつに死角は存在しないと考えた方がいい」
「それ、人間の体の作り的に不可能じゃね?」
「五感の中にある触覚が誰よりも鋭いんだ。少しの視線、気配に敏感で、背後から狙っても意味はない」
「マジかよ」
アマリアが苦い顔を浮かべ、ウズルイフを見上げている。
そんなに、強いのか。
くそ、今ここで殺せねぇのかよ。
今すぐにでもあいつを殺してやりたいのに。
自然と拳に力が入る、魔力が高まる。
――――いや、駄目だ。抑えろ。
今まで感情的になっていい事はなかった。
落ち着け、落ち着け。
「すぅ、はぁ…………」
「あっ、冷静になったのな。つまんねぇーの」
つまらんと言われても知らねぇよ。
俺は、確実な手でお前を殺したい。ただ、それだけ。
「ふーん、これだとまだ壊れないのかぁ」
「あ? 壊れない?」
何を壊そうとしてやがる。
「そうそう。俺さぁ、人の心が壊れる瞬間が、一番好きなんだよねぇ~。アマリアの心が壊れなかったのは意外だったけど、仕方がない。次の狙いはアクアか知里、この二人かなぁ」
な、何を言っているんだ、こいつ。阿保なのか?
「ねぇ、まさか、アクアに何かした?」
「何かしたのは俺じゃなくてお前だろう? 裏切り君」
「くっ……」
アマリアが何も言えなくなる。
その様子を見て、くすくすと笑っている。
「まっ、安心しろよ。まだ何もしてねぇから。それに、アクアの精神を苦しめるのはあのお方に怒られる」
「そうだろうね。実力的に、アクアは失いたくはないはず」
「そうそう。だから、今は知里で我慢しようかなって思って。アマリアは、もう立ち直ってしまったからつまんねぇし」
なるほど。
俺に人を殺させたという罪を背負わせ、苦しませ、壊すつもりだったのか。
管理者の立場上、俺を殺せればどうでもいいだろうしな。
どんな方法を使ったとしても。
だが、残念。
確かに、すぐ状況を把握できなくて取り乱したが、今はもう大丈夫。
「はぁ、そうか、話は分かった。いいぜ、狙って来いよ」
「あぁ? なんだ、強気じゃねぇか」
おっ、機嫌が悪くなったか?
表情に出やすいんだなぁ。
「さっきはちょっと取り乱したが、今はもう大丈夫。いつもの俺だ」
「ふーん。なら、ここに居ても意味はないな。また違う作戦を考えよーっと」
「そうか、それは楽しみに待っていてやるよ。次は、こうはならない。覚悟しておけよ」
「言ってろ」
っ、なんだ。
ウズルイフが俺の方に近づいて来る。
アマリアが守るように前に立つけど、するりと避け俺に――……
「じゃぁな。カケルの身代わりさん」
――――――――チクッ
っ、首に、痛み!?
後ろを振り向くけど、もう、ウズルイフの姿はない。
首に触れてみるけど、特に傷などはないらしい。
なんだったんだよ、さっきの。意味が分かんねぇ。
…………身代わり。まぁ、あながち間違えてはいないか。
「知里、大丈夫? 何もされてない?」
「あぁ、多分何もされてない」
ちょっと、首の痛みが気になるが、特に今は変化ないし、大丈夫……だよな?
「そう、良かった。…………って、あんなこと言って大丈夫だったの? ウズルイフは、何をしてくるか予想できない。リヒトやアルカにも危険が及ぶかもしれないよ? グレールやロゼ姫にも」
「そうだな。そこは申し訳ないと思っている。だから、今回の件は包み隠さず伝えるつもりだ」
伝えたあとの判断は、あいつらに任せる。
俺から離れたいと言えば、何も言わない。
引き止めるなど、絶対にしない。
ここで戦力を削がれるのは痛いがな。
でも、これからの日々は、今以上に命を狙われやすくなる。
俺を狙ってはいるが、俺を直接狙ってくることはあの性格上なさそう。
確実に、俺の周りの人を狙ってくる。
だから、離れた方がいい。
俺と居ても特に、メリットはないからな。
「一応聞くが、アマリアは――――」
「共にいないと僕の場合は死ぬだけだよ。どっちにしろ命を狙われているんだ、それなら知里と一緒に居る。その方が、僕的にも気が楽だし」
……まったく、なんだよ。
本当に、安心しているような顔で言ってくるな。
…………胸が、変。ぞわぞわする。でも、気持ち悪くはない。
でも、なんか、嫌だ!!!
「なに、げんなりしたような顔を浮かべているの」
「…………不愉快」
「酷いなぁ」
まだ、もぞもぞする。
いやだ、嫌だ!!
アマリアから逃げるように顔を逸らすと、長ロボットの中で息絶えている人が目に入る。
――――こいつは、どんな罪を犯したのか。
アクアが殺さなかったという事は、そこまで酷い事はしなかったはず。
ここで死んだのは、ウズルイフの気分。
供養、でもしてやるか。
祟られても嫌だし…………。
周りには、やっと動き出したユウェル族が頭を振っている。
さっきまで、おそらく操られていただろう。今は正気に戻ったんかな。
――――ダッ ダッ
ん? 足音?
俺が入ってきた出入口を見ると…………
「カガミヤ!!」
「カガミヤさん!!」
アルカとリヒトとリトスと――――ユウェル族が…………増えてる。
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