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久しぶりに味わいました、板挟み

「っ、あ、ありがとう、アマリア」

「咄嗟に体が動いて良かったよ」


 周りから一斉に向ってきたユウェル族が、今は地面に落ち耳を抑え震えている。


 アマリアの音魔法、vibration(ヴィブラシオン)は、こういう時にめっちゃ使えるらしいな。


 一番近くにいた俺の耳にもダメージは来たが、鍬とかに襲われるよりはましだ。


「お、長?」

「おい、近づくな、殺されるぞ」


 レイラとレイが震える声を出し、長に近付こうとしている。

 手を掴み止めるが、目線はずっと長を見続けているな、今にも泣きそう。


「お前らは俺の後ろで体を震わせておけ」


 目の前に座っている長は、ワイバーンまでとはいかないが体は大きく、レイラやリトスが年取ったような見た目。


 さっき、こいつ”見つけた”とかって言ってたよな。

 俺を探していたという事だよな、タイミング的に。


 俺を探しているのって…………。


「こいつの言っていた”あの方”って、管理者の事か?」

「可能性はだいぶ高いね。今現在、知里を探しているのは管理者だけだし」

「ちっ」


 ここまでするのか、管理者。

 俺がここに来るのをわかっていたという事か?


 ──わかっていてもおかしくはないか。

 俺の事を監視しているだろうしな。


 今回動いているのがどいつなのか気になる。

 単語でしか話さないフィルムなのか。快楽殺人鬼(仮)のウズルイフか。

 そいつら以外か……。


 考えていると、長がのそっと立ち上がり始めた。


 体が大きいから、見下ろされただけで圧が凄い。

 横幅もあるし、普通に怖いわ。


『殺せ、殺せ。あのお方の、ために』


 近くに置かれていた、普通の鍬の数十倍はあるであろう鍬を持ち、俺を見下ろしてくる。


 ――――――――察した、あいつの次の行動。


『ころせぇぇぇぇえええ!!!』

「ころすなぁぁぁぁぁ!!!!!」


 どわっ!!!!!!!

 振り上げた鍬を俺に向けて叩き落しやがった!!


「知里!! 大丈夫!?」

「な、なんとか……」


 避けることは出来たけど、衝撃だけでも凄い。

 地震が起きたのかと思うくらい地面が震えたぞ。


 すぐに立ち上がって魔導書を開き、戦闘準備かいっ――……


「長!! やめてください!! あの人間は何もしてきません!」

「そうです長! やめてください!!」


 っ、おいおい!! 俺の後ろに居ろって言ったのに!


 レイラとレイが長を止めようと駆けだしちまった。


 前に立ち止めようとしているが、声は届いていないみたい。

 長は動きを止めず、俺を見続けるのみ。


「長!!!」


 レイラが声を張り上げ長の名前を呼ぶと、俺から目を離し、レイラを見た。


 やっと、声が届いたのか…………?


「あ、長っ――――」


 ――――っ!? あぶねぇ!!


 長が目の前に立つレイとレイラを蹴り上げようと足を動かしやがった。


 すぐに飛び出し二人を抱え避けると、長の目はすぐに二人を抱えている俺に向けられる。


 くそっ、声は全く届かないということか。


「お、長……」

「おさ……」


 ……………頼む、悲しげな声を出さないでくれ、やりにくい。


「知里、何かは切り捨てないと現状は打破できない。自分が助かる為、長を倒さないといけない」


 上からアマリアがそんなことを言ってくる。

 今の言葉を聞いたレイラとレイは、涙を浮かべ俺を見上げてきた。


 な、何この板挟み。


 いや、現状を打破するにはアマリアの言う通り、何かは切り捨てなければならない。

 今、切り捨てるべきものは、迷うことなくユウェル族の長。


 殺そうと思えば、俺とアマリアがいるんだ、簡単に殺せる。


「長…………」


 くっ、そぉぉぉお。

 涙声が下から……………………この野郎!!


「――――アマリア、これは俺の仮定だが、こいつは、本物の長ではない」

「なら、なおの事殺しても特に問題はないでしょ。何を躊躇しているの!」

「確証が持てないんだよ。だから、確証が持てる情報を探す!」


 俺がこんなこと言うなんてみじんも思っていなかっただろうな。

 アマリアは目を大きく開き、左右非対称の瞳を俺に向け固まっちまった。


「ば、馬鹿じゃないの!? 探す!? 今から!? さすがに無謀なのは知里ならわかるでしょ! その過程が間違っているのなら、ユウェル族には辛いかもしれないけど、ここで被害を抑えなければ多くの犠牲が出てしまうかもしれないんだよ、今すぐに長を殺した方が賢明だ!」


 アマリアのは合理的だし、俺も賛成したいところではある。

 でも、長であるあいつは、言い方を変えればレイラやレイの親。


 俺は、こいつらから親を奪い取るなんてこと、出来ればしたくはない。

 親は、子供に様々な影響を与える。それが、悪い方向でも、いい方向でも。


 もし、この長が本物で、俺が殺してしまったら、子供は生きていく事が困難となる。

 頼る者がいなくなり、道を進むことが出来なくなる。


 ここは、合理的な行動をとるのは、賢明ではない。


「アマリア、今は俺の指示に従え」

「そんな、無茶だよ…………」


 困り果てたアマリアは、鍬を掲げ俺達の方に向かって来ている長を見る。


 っ、周りで耳を抑えていたユウェル族も動き出してしまった。

 囲まれている、身動きが取れない。


「…………知里、甘い考えは身を亡ぼす。助けたい気持ちはわかるけど、こればっかりはどうする事も出来ないよ。相手はモンスター、なんの罪にも問われない」


 確かに、相手はただのモンスター。情だけで殺す事を躊躇していたらこっちがあぶねぇ。

 罪に問われないとアマリアも言って……あ、あれ?


「それって、つまり相手が仮に人間だったとしたら、他の方法をとっていたって事?」

「え、ま、まぁ。人間はそう簡単に殺すわけにはいかないでしょ」

「なんで?」

「え」

「なんで、人間は駄目で、モンスターはいいんだ?」

「それは、モンスターは人を襲うし…………」

「人間だって、人間を殺すじゃん。モンスターを殺すじゃん。危害を加えなかったリトス達を襲ったじゃん。悪いのはモンスターではない、()()()()()()()()だ。自分の意思で危害を加えてこないユウェル族は、悪者、なのか?」

ここまで読んで下さりありがとうございます!

出来れば次回も読んでいただけると嬉しいです!


出来れば☆やブクマなどを頂けるとモチベにつながります。もし、少しでも面白いと思ってくださったらぜひ、御気軽にポチッとして頂けると嬉しいです!


よろしくお願いします(*・ω・)*_ _)ペコリ

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