今回、報酬がないのが本当に腹正しい
窓を開けての換気が出来ないから、この空気を変えられない。
でも、早く空気を切り替えないといけないから、話を無理やり本題に戻そう。
「えぇっと、空気を変えさせてもらうが、今回の金にならない依頼の最終目標は、リトスを仲間の元に届ける事。そのために、まずリトスが辿った道に向かう。これでいいな」
「ものすごくめんどくさそうな言い回しをしていますが、そうですね。行きましょう」
今回はグレールとロゼ姫を抜いたメンバー。
つまり、初期のメンバープラスアマリアで金にならない依頼を攻略しなければならない。
「めんどくさい」
「通帳は依頼が終わるまで返さないからね」
「…………はい」
※
アマリア、アルカ、リヒト、リトス、俺の五人で以前クリアしたダンジョンにワープをした。
以前、アルカがクリアしたダンジョンは崩れてしまうと聞いてはいたが、本当に何もなくなってんな。
崩れた形跡すらないけど、跡形もなくなるってある? すげぇな……。
「まず、ここでカガミヤのアビリティに、ユウェル族の気配を探知してもらう感じでいいのか?」
「そうだ。ここで探知できればもうけもん。無理だったら、リトスの辿ってきた道を戻り、探知。これを繰り返す」
情報が無いのは痛いが、やるしかない。
「アビリティ、探知は出来そうか」
『ユウェル族の気配を探知。――――追跡不可能。探知できません』
まぁ、そうだろうな。
「それなら、リトスの辿ってきた道を行くか。アビリティは探知を継続できるか?」
『可能』
「なら、頼む。リトスは俺達を案内しろ。どこからここまで歩いて来たのか」
リヒトに抱えられているリトスを見るけど、なぜか顔を下げてバツが悪そうな顔を浮かべている。
ま、まさかだが、いや、そんなことあるわけないよな? ない、よな?
「…………道、完全に覚えてないのか?」
「……………………怖かったのと、雨で道がわからなかったんだぞ。無我夢中で歩いてたから、わからないんだぞ」
………………………………。
た、確かに言っていたな。目的もなく歩いていたって……。
考えなしに歩いていたという事、道を覚えていないのも無理はない。
「…………アマリア、こいつの住処として使っていた鉱山、ベルクヴェルクって、知ってる?」
「知ってるよ。もう、真っ直ぐそこに向かうしかないみたいだね。さすがに、めんどくさいというか、報酬は欲しいね」
「アマリアでも思うのか」
「うん。骨が折れる予感」
「はぁぁぁぁぁあああ」
アルカとリヒトは苦笑い、リトスは申し訳ないというような顔。
俺とアマリアは深いため息を吐いてしまった。
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アマリアがアルカの持っている地図で、ベルクヴェルクの場所を指さす。
ここから結構遠いように見えるな、地図だけでは分からないけど。
──ん? ベルクヴェルクの他にも近くに鉱山がありそう……。
「そう言えば、リトス」
「なんだぞ?」
「ユウェル族は鉱山と呼ばれる場所には必ずいるのか?」
「いるぞぉ」
「自分達がいた鉱山とは、また違う鉱山にいるユウェル族も、お前にとっては仲間になるのか?」
「なるぞ! ユウェル族は仲間意識が強いんだぞ! ユウェル族は全員仲間なんだぞ! すごいだぞ!!」
アルカを先頭に歩いている際に聞いてみると、鼻息荒く、何故か誇らしげにリトスが教えてくれた。
つまり、どこの鉱山に住んでいてもユウェル族だった場合は仲間。
ということは……うん。
一緒に逃げたユウェル族じゃなくても、鉱山に向かえばこいつの仲間に届ける事が出来たという事にならないか?
それなら、遠いベルクヴェルクに行かなくても、近くの鉱山に向かえば最終目標達成にならないか?
「でも、今回は一緒に逃げ切った仲間が無事か確認したいんだぞ。他の鉱山に住んでいるユウェル族に会っても、おいらは満足しないんだぞ!!」
「…………はい」
くっそ、アマリアに笑われている。
俺、そんな顔に出ていたのかな。
それとも、こいつの頭に嫌な予感が走ったのか。
どっちかわからんが、俺の逃げ道が絶たれたことだけは理解出来た。
くそっ。
砂漠を歩いていると、徐々に緑が見え始めた。
ここがフロアの切り替わりらしい。
現代のRPGゲームみたいな作りだな。
後ろを振り向くと、砂漠世界。
前を向くと、大自然。
今までワープを使っていたから、今みたいに景色を堪能することってなかったなぁ。
改めて見てみると、本当に自然豊かな世界。
現代のような高層ビルや、車がない分空気が綺麗。
青空を見上げると雲が横に流れ、鳥が自由に羽ばたいている。
思わず立ち止まってしまうと、アルカ達も俺に気づき止まった。
「どうしたんだ、カガミヤ」
「…………いや、何でもない」
まぁ、こういうのもたまには悪くないか。
まだ楽しんでもいいが、さすがに時間がもったいない。
今はやらなければならないことがあるし、そこに向かっ──……
――――――――ゾクッ
「っ!?」
な、なっ……。
「知里、感じた?」
「あ、あぁ。感じた。体に突き刺さる視線、気配」
アマリアも感じたらしい、険しい表情を浮かべ警戒している。
――――今の気配、知ってる。
今まで何回か感じたことがある、突き刺さるような気配。
「か、管理者が、近くにいるのか…………?」
俺とアマリア以外の三人は気づいていないみたいだ。
目を丸くして見て来る。
どこだ、どこにいる。
――――――――? あ、あれ?
「気配が、消えた?」
「みたいだね。探っても、もう何も感じない」
な、なんだったんだよ。
一瞬だけ、獲物を狙うような気配、視線を感じさせたくせに、何もせず行方をくらませた。
周りを見ても、何もいない。
気配を探っても、もう何も感じない。
本当に、一瞬のうちに消えた。
今、気配を感じさせたのは、わざとなのか?
それとも、相手の油断?
…………わからないけど、近くに管理者がいる事だけは、頭の中に入れて置いた方がいいかも。
「アマリア、今動くとしたら、やっぱりフィルム?」
「その可能性が高いけど、今の気配は違うかな。フィルムはこんな無駄なことはしない。無駄に悟られるようなことなんて、絶対にやらない。やりそうなのは、他に一人だけいる」
「やりそうなの?」
「うん。管理者の中で、一番何を考えているのかわからない男、ウズルイフ」
ウズルイフ? 今まで聞いたことあったか?
出会った事…………いや、ないはず。
「ウズルイフ……様?」
「アルカとリヒトも聞いたことがないと思うよ。ウズルイフは表に出ないし、名前を明かさない。冒険者の中でも知っている人の方が少ないはず」
へぇ、そんな管理者もいるのか。
表に出ない管理者。裏方をやっているという事か?
「今回、もしかしたらウズルイフが動いているかもしれないね。でも、そうなると、色々厄介だよ」
「なんでだ?」
「ウズルイフに理屈は通用しない。行動全てが”面白いから”で済ます愉快犯。僕をおもちゃにしてきためんどくさい男」
「え、おもちゃにされてたの?」
「うん。もう、後半はめんどくさくなって相手にしなかったけど」
おもちゃにされているのに、相手にしないで終わらせていたのか。
す、すごいな。俺ならぶちぎれている。
「でも、フィルム様も動いているのではないですか? 管理者が一気に二人も動き出してしまったという事でしょうか」
「わからない。フィルムとウズルイフはそこまで深い関係じゃないはずだから、共に行動しないとは思うけど…………」
うーん。
もしかして、今あえて気配を感じさせたのは、俺達の反応を楽しんでいる…………だけ?
今回の気配がアマリアの言っている愉快犯だった場合、ありえる。
うわぁ、めんどくさい。
なにこれ。今回の依頼、報酬ないのに今までの依頼よりめちゃくそめんどくさくない?
………………………………金を、誰か俺に、金をくれ。
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