この空気は本当にやめてくれ…………
「はぁぁぁ……ねむ」
「僕も同じく…………」
次の日、アルカとリヒトに叩き起され、アマリアと同じタイミングで起床、普通に眠い。
ロゼ姫は魔力が回復したらしく、欠伸を零しながら俺達の部屋にやってきた。
グレールは今だ眠っている。
気絶してしまうくらい魔力が枯渇したから、回復に時間がかかっているらしい。
「なぁ、まだ眠いんだが…………」
「ご飯を食べれば目が覚めるぞ!!」
「それはお前だけだ。俺は無理」
アルカが元気にそんなことを言っているが、俺には無理だ。
もう、こいつら俺の年齢忘れているだろう。
俺は、二十八。お前ら餓鬼とは違うの。
一日では体力も回復しないの、少しは考えてくれよ。
そんな事を伝えても意味はないから言わないけどよぉ……。
朝ご飯として出された野菜サンドをぺろりと平らげ、珈琲でほっと一息。
リヒトの膝の上でサンドイッチを食べているリトスは、満足そうに腹をポンポンと叩いていた。
満足したらしい、良かったな。
お前のせいで俺は睡眠時間を削られたけど!!
「それじゃ、飯も食い終わったことだし、話し合おうぜ!!」
まだ珈琲を楽しんでいる俺を気にせず、アルカがそんなことを言いやがる。
アマリアもまだ珈琲飲んで一息ついているのに……。
「大人と子供では、生きている世界の時間の進みが違うのかな」
「そうかもしれないな。俺達の様子が目に入っていないらしい」
そんな、朝の出来事。
まったく、金にならないからやる気でないというのに……はぁ。
コトンとマグカップをテーブルに置くと、何故かみんな俺の方に目を向けた。
そんなに大きな音を立てたか? いや、空気を感じとったのか。
「──それじゃ。まずお前がどうやってダンジョンまで足を運んだのか、細かく聞かせてもらってもいいか? それから目的地を決め、アビリティに探知をお願いする」
「わかったんだぞぉ」
俺とアルカはベッドに移動、ロゼ姫とリヒトは貝殻の椅子。
アマリアはいつものように浮かび、話を聞く体勢を作った。
今はリヒトではなく、ロゼ姫の膝の上にリトスが座らされている。
もう、誰かが必ず膝に乗せているか、抱きしめている以外での身動きが取れないようになっているな。
「おいらは、仲間と一緒に、鉱山でいつものように鉱物を採っていたんだぞぉ」
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おいらは普段、ベルクヴェルクと呼ばれている鉱山で鉱物を採ったり、仲間と遊んだりしていたんだぞ。
あの時も、仲間と共に鉱物を採っていたんだぞ。
仲間と共に鉱物を取るため、大きな音が辺り一体鳴っていた。
だから異変に気づかず、冒険者が沢山入って来てしまったんだぞ。
『ユウェル族がいるという事は、鉱物が大量にあるという事だよな、リーダー!!』
『あぁ、おそらくな。取れるだけ取っていけ。邪魔をしてくるユウェル族は殺してもいいぞ。どうせ、今まで倒してきたモンスターと同じなんだ、罪にはならん』
『わかったぜぇ~』
そんな会話をしていたんだぞ。
おいらは冒険者が入ってきた場所から一番奥にいたから、逃げ出す事が出来たんだぞ。でも、近くにいた仲間は、簡単に……。
それでも、仲間が手を引いてくれたんだぞ。
涙を流しながら、後ろの叫び声を聞きながら。
仲間を見捨てるという道を選び、おいら達は涙を流しながらも、逃げ続けたんだぞ。
鉱山から出たおいら達は、雨が降る中、目的無く歩いていたんだぞ。
今まで鉱山から出た事がなかったおいら達は、外の世界を知らない。
モンスターや人間はみんな、なぜか突然襲ってきて、ものすごく怖かったぞ。
何とか逃げていたら途中で仲間とはぐれ、泣きながら歩いていると、あのダンジョンを見つけたんだぞ。
雨風防げると思って中に入ったら、襲ってくる人間はいない、モンスターもいない。
だから、もうあそこしか安息の地は無いと思って、あそこで暮していたんだぞ。
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「外に出る勇気がなかったおいらは、隠れながら生活をして。そしたら、お前達に会ったんだぞ」
────あぁ、まぁ、うん。
言い方は悪いが、あるあるな展開だな。
おそらく、仲間全員、助かってはいない。
何体のユウェル族が鉱山から逃げる事が出来たか知らんが、助かっているとしても数体だろう。
「ねぇ、一つ質問したいんだけど、いいかな」
「なんだぞ」
アマリアが表情一つ変えずに手を挙げた。
「一番最初、知里と目が合った時、なんで逃げなかったの? 冒険者――人間に襲われていたのなら、僕達だって君を襲うと考えなかったの?」
「あいつは、襲わなかったぞ。おいらと目が合った時」
おい、指をさすな。まったく……。
確かに俺はお前を襲わなかったが、それだけで信じたのか?
俺は単純に知識がなかっただけなんだが?
お前が宝を発掘する事が出来るのなら、問答無用で捕らえる。
「初めてだったぞ。人間はみんな、おいらの姿を見ただけで鉱物の場所を聞いてきたり、襲ったり。何もしなかった人間はいなかったぞ。でも、あいつは何もしなかった。だから、逃げなかったんだぞ」
「ふーん。確かに、知里を選んだのは正解だったかもしれないね」
「え、なんで? 俺は迷惑でしかないんだけど」
なんでアマリアまでそんなことを言うんだよ。
俺は人助けや、モンスター助けを自らしようなんて思ったことはない。
金にならないのならごめんだ。
俺を選んだのは、絶対に間違えている。
「知里は優しいからね。一度手を掴んでしまえば、見捨てないでしょ?」
「…………こっちを見てんじゃねぇわ」
…………くそが。
アマリアの奴……。いつもは無表情なくせに、こういう時だけ笑いやがって。
今の笑顔を世間一般的には柔和な笑みとかいうんだろうな。
本当に、腹が立つ。
「けっ」
「ほら、否定はしない。君の目は、人を見定める力があるのかもしれないね」
「おいらの目? よくわからないけど、間違えなかったのなら良かったんだぞ!」
おい、なんだこの話は。
……なんだ、この、変な気持ちは。
なんだこの、ほんわか空気は!!!!!!
さぶいぼがたつからやめてくれぇぇぇぇええええ!!!
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