まさか、こんな魔法を隠し持っているなんて
何を考えているんだ?
「っ、カガミヤさん!! ガンブラーが動き出しました!!」
っ、リヒトの声につられガンブラーを見ると、しっぽ部分が大きく振り上げられていた。
まずい! あの大きさ、叩き落されたら俺達全員簡単につぶされるぞ!!
「知里!! |absolutewaterを出すんだ!! グレールはfrostを出して!」
え、いきなりなんで…………っ、そうか!!
「「了解!!」」
アマリアに言われた通り、魔導書を開き魔力を一瞬うちに高め、魔法を放つ。
「|absolutewater!!」
「frost!!」
まずガンブラーを水で封じる。
動きが鈍ったところで、あいつは俺達へ尻尾を振り下ろすことをやめない。
だが、すぐグレールが俺の魔法を凍らせたことにより、ガンブラーの動きを完全に封じた。
「動きを封じたか?」
「…………いや」
アルカが警戒を解こうとしているが、駄目だ。
ガタガタと氷が動いている、中から氷を壊そうとしているんだ。
「時間がないね。ロゼ、さっき言っていたのって。もしかしてだけど、あの魔法を使う気?」
「ん? あの魔法?」
聞くと、ロゼ姫は覚悟を決めたような顔で力強く頷いた。
「アマリア様、知っておられるのですね」
「まぁね。強力な魔法はしっかりと頭に叩き込んでいるよ。反乱を起こされたらたまったもんじゃないし」
へぇ、そこまで考えてんのか。
頭パンクしない?
「それより、今それを使うのは難しくない? ロゼがこの後戦闘に参加できなくなるじゃん」
え、一つの魔法だけでそこまで言わせるの?
どんな魔法なんだよ、逆に気になるやん。
「ですが、ここで無駄に全員の魔力が減るより、私一人の魔力が枯渇するだけで済むのならいいと思います。ただ、戦闘には参加できなくなりますので、ワイバーン戦の時は役に立てません…………」
「ふーん。だってさ、知里。どうする?」
そこで俺にぶん投げるのかよ。
んー、あんなに固く、大きなガンブラーを一発で倒せるかもしれない魔法があるのなら、出してもらった方がいいかもしれない。
この後の戦闘は四人で行えば問題はないだろうし、ここで魔力温存出来るのは大きい。
「わかった。任せた、ロゼ姫」
「わかりました」
ロゼ姫が氷に閉じ込められているガンブラーへと近寄って行く。
グレールはいつでも動けるように構え、後ろにいるアルカも同様。
リヒトは抱えているリトスを落とさないようにしっかりと抱きしめていた。
「では、グレール。タイミングを見て氷を消しなさい」
「わかりました」
ロゼ姫が持っている杖に魔力を込め始めた。
――――っ、今までの魔力の量や、質が違う。
修行の時とは比べ物にならない程高めてやがる。
ちょっと、いや、何となく。
見ているだけの俺が、テンション上がる。
一体、どんな魔法がこれから繰り出されるんだ。
早く、早く見せてくれ。
「今から出す魔法、魔力を莫大に要するから気軽に使えないけど、強力だから見ていて損はないと思うよ」
「わかってる。身体が勝手に反応してるから」
ロゼ姫が準備を整えている間でも、ガンブラーは氷から抜け出そうとガタガタと音を鳴らしもがいている。
まだ大丈夫そうではあるけど、時間はかけられない。
ガンブラーが動き出しても大丈夫なように、俺も魔導書のページを開き、魔法を放てるように準備。
…………するのだが、なんだ?
ロゼ姫の足元、波打ってる?
「来るよ」
アマリアが言うのと同時に、ロゼ姫は杖を頭上まで掲げた。
グレールもタイミングよく指を鳴らし、氷を解除。
動けるようになったガンブラーは、大きな悲鳴を上げ、一番近い距離にいるロゼ姫へ振り上げた尻尾をたたき落とした。
「|Walfischacid」
ロゼ姫の声が響き渡ると、足元で波打っていた地面が大きな高波に変化。
ガンブラーへと向かって行くが、それは波だけではない。
中から、ガンブラーより大きな酸のクジラが出現。覆いかぶさるように襲い掛かった。
「なっ、なんだ、あれ…………」
「あれがロゼ姫の大技、|Walfischacid。酸のクジラを出現させ、相手を包み溶かし尽くす」
後ろにいるアルカとリヒトも口をあんぐり。
同じくリヒトの抱えられているリトスも同じくあんぐり。
────やべぇな、おいおい。
おもしれぇな!
ガンブラーはクジラに覆いかぶされ、野太い叫び声を上げたかと思うと、跡形もなく……本当に跡形もなくなった。
ロゼ姫のクジラが地面に落ちると、そのまま波と共にスゥッと消える。
――――ガクッ
「っ、ロゼ姫!!」
ロゼ姫が力尽きて倒れ込んでしまったが、風のごとき速さでグレールがしっかりと支え受け止めた。
今、俺の隣に風が起きたぞ。
どんだけ早かったんだよ、凄いな。
「っ、これで、次に進めますね。私はもう歩くので精一杯なため、先程お伝えした通り、次の戦闘には参加できません」
「いや、ここまでやってくれたから問題はない。逆に助かった。これで俺達は、ワイバーンに魔力を温存した状態で挑むことが出来る。あとはゆっくり休んでくれ」
今回は本当に助かった。
歩くことが出来るのなら、共に来てもらって安全な場所で待機していてもらおう。
「あ、次の部屋に向かう為の扉が開きました!」
リヒトが指した方を見ると、確かに両開きの扉が開いている。
「よし、グレールはそのままロゼ姫の近くにいてもらって、次の部屋に行こうか。雑魚が出てきたら魔力を抑え、一瞬で片づけよう」
「「おー!!」」
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