ここまでこいつが命知らずだとは思わなかった
アルカがやっとこいつについて聞き出してくれた。
こいつの名前はリトス。
アマリアが言っていた通りユウェル族で、仲間とはぐれてここに迷い込んでしまったらしい。
仲間とはぐれた理由は、住処としていた鉱山に冒険者が鉱物を狙って追い出したから。
「君が言っている鉱山って、どこ?」
「ベルクヴェルクだぞぉ」
「……あそこか。確かに、情報は入ってきていたな。確か冒険者の依頼として"鉱物を採る"があったはず。それで狙われたのかな」
アマリアが思い出しながらブツブツと独り言を呟いている。
「え、それでは、リトス君は冒険者によって追い出されてしまったという事でしょうか」
いつの間にかアルカからリトスを奪い取り、ぬいぐるみを抱きしめるように抱えているロゼ姫が、悲し気に聞いている。
リヒトも頭を撫で「可哀想」と呟いていた。
「まぁ、そうだね」
「それは、管理者ではどうする事も出来なかったのですか?」
「モンスターの括りになっているから、どの管理者もユウェル族を保護する義務はないんだよ。それに、冒険者も依頼を遂行するために行っただけ。これだけでは罪にはならず、管理者は動かない」
モンスターは保護する対象ではないという事か。
人に危害を加える奴が大半だろうから、そればかりは仕方がない。
「あの、一つよろしいでしょうか」
「どうした、グレール」
「その子、今後どういたしますか?」
「決まってんだろう、ここに捨てておく」
今俺達は沢山の物を抱えているんだ。
これ以上抱えるものを増やすのはむっ──……
「「ダメェェェェェエエ!!!!!」」
――――――――キーーーーーーーーーーン
女子二人の甲高い叫び声は、やばいって…………。
「なんてことを言うのですか、こんな可愛くて愛らしい子を捨てておくなど!」
「そうですよカガミヤさん! こんなに涙を浮かべて助けを求めている子を捨てておくなどありえません! さすがに許しませんよ!」
いや、涙を浮かべているのはお前らがずっと抱きしめているからじゃないのか。
「…………」
はぁぁぁああ、頭痛くなってきた。
アマリアとグレールは俺に一任してくるし、なんなんだよ。
「────あっ」
…………いや、待てよ?
これは俺達の意見を優先するものではない案件だ。
一番は優先されるのはこいつの意思。
つまり、こいつがダンジョンに残りたいと言えば、二人は諦めるだろう。
こいつがこのダンジョンに来てどのくらいの時を過ごしているのか知らんが、愛着はあるはず。
現に、さっき俺と目が合った時、助けを求めなかった。
普通、助けてほしかったら俺と目が合った瞬間に助けを求めるだろう、多分。
いける、このままこいつに優しく質問し、俺達と共に居たくないと言わせれば俺の勝ちだ。
「なぁ、リトス。お前は俺達と一緒に来たいか? もし、怖いのなら無理する必要はない。俺達はお前に従おう」
腰を折り目線を合わせ、出来る限り優しく聞いてみる。
これなら、怖がっている俺にでも本音で言えるだろう。
ロゼ姫とリヒトが何故か感動したような顔を浮かべ俺の名前を呼んでいる。
ここでこいつが怖いと一言いえば、この二人も引き下がる。そんな空気だ。
よし、素直に言え、怖いだろう? 俺達が。
一緒に居たくないだろう? 素直に言うんだ。
「お、おいら……」
「うん、怖いのなら無理にっ――…………」
「おいらを、仲間の所に連れて行くんだぞぉ!!」
……………………はぃ?
「っ! みたいですよカガミヤさん!! 私達で仲間の元に連れて行ってあげましょう!!」
「そうですよ、チサト様。私達はこの子の意思に従うと言いました、男に二言はありません!!」
二人はリトスの言葉に大喜び。
これからよろしくね、とか。名前は~ とか。なんか、楽し気に話している。
腰を折ったまま固まっている俺など無視し、喜んでいる二人に殺意。
俺の心情を察しているらしいアマリアとグレールは、肩に手を置き声を揃えて言ってきやがった。
「「ドンマイ」」
「…………誰か、さっきまでの俺を殺してくれ」
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