アマリアの修行だけは絶対に受けたくない
模擬戦を始めてから一週間経った頃、グレールから一つの提案を持ちかけられた。
「アルカ、俺ペアと、グレール、ロゼ姫ペアで模擬戦を行うって事?」
「そうです。ちょうど、中距離と近距離が得意な人がペアとなっているので、練習にはなるかなと思います」
確かに、そうだな。
俺は基本放つ系の魔法が得意だし、アルカは近距離。
ロゼ姫は俺と同じ放つ系の魔法を使っているのを見た。
グレールはアルカと同じ近距離が得意。
相手が相手なだけに、連携をしっかりと取らないと普通に負ける。
緊張感を持った模擬戦が出来る、絶好のチャンス。
確認のためにアルカを見ると――――
「………………」
「アルカ様はものすごくやる気みたいですね」
「そうだな」
アルカを見ると、めっちゃ目を輝かせ、興奮気味に剣を何度も握り直している。
「カガミヤ、絶対に勝つぞ!!」
「あ、はい」
やるとは一言も言っていないぞ、俺。
やりたくないとも言ってないから、素直にやるけれども。
「それでは、準備を行います。少々お待ちください」
「こっちも準備の時間が必要だから問題ない。模擬戦はいつものシールドの中でやるのか?」
「いえ、さすがに狭いため場所は変えます。アマリア様とリヒト様が筋トレを行っています格技場を考えております」
「了解だ」
それじゃ、頑張るとしますか。
※
グレールの案内で格技場に行くと、リヒトが頑張っていた。
本当に、頑張っていた。関心関心……。
「…………アマリア、今は何をしているんだ?」
「ん? あれ、知里? なんでここに?」
「用事。それで、なんでリヒトが天井に吊るされながら泣いているんだ?」
天井を見上げると、なぜか紐でぐるぐる巻きにされ吊るされているリヒトの姿。
涙を流し、アマリアの名前を呼びながら謝っている。
あれって、なに?
「罰ゲームだよ。ノルマを達成できなかったからね」
「罰ゲーム?」
「まず、何かを頑張るには恐怖心を植え付けて、もう絶対にこれをやりたくないと思い知らせるの。そうすれば、この恐怖から逃げたいと思い、頑張れる。逃げようとすれば、この恐怖を思い出させればいい。効率的でしょ」
うっわ…………、真顔で淡々と怖いことを言ってるよ、この人。
リヒトよ、お前が一番厄介な奴を修行相手に選んじまったらしいな。
俺が一番可哀想だと思っていたよ。
体力馬鹿に無限に修行相手されるより大変な思いをしているのな。
あぁ、だからか。
リヒト、部屋に戻ると誰よりも早くベッドに入って寝ていたもんな。
これが原因か……。
「あっ!!」
「げっ…………」
吊られているリヒトと目が合ってしまった。
「カガミヤさっ――…………」
「さぁて、俺達は俺達で修行をするぞ。アルカ、作戦確認だ」
「カガミヤさぁぁぁぁああああん!!!」
む、無視。俺は無視、無視をする。
お願い、無視をさせてお願い。
俺はこれからの地獄に集中しなければならないんだよ。
お願いだから、俺の名前を呼ばないで……。
「だ、大丈夫なのか?」
「大丈夫大丈夫。俺はリヒトなら超えられると信じているし、アマリアなら相手を潰すほどの事はしないと信じている。俺は仲間を最後まで信じきる素敵な主人公だから。信じる事って大事だから」
「めっちゃ”信じる”を強調してくるじゃん」
俺は全てを信じる素晴らしい主人公だから。
別に、関わるのがめんどくさいとか思ったわけじゃないからな!
俺に矢先が向けられる前に離脱しようかなとか思っていないからね! 勘違いしないでよね!
「それじゃ、アルカ。冗談抜きに、やろうか」
「わ、わかった…………」
アルカはリヒトを気にしているけど、その余裕がもうそろそろ気にならなくなるぞ。
いや、気にならなくなるではない。
気にする余裕がなくなる…………だな。
「では、準備をお願いします」
――――――――ゾクッ
体に走る悪寒、冷たくなる感覚。
やべぇ、武者震いという奴だ、これ。楽しみ。
俺達の前には、氷の剣を作り出し俺達を見ているグレールの姿。
隣には杖を同じく作り、構えているロゼ姫。
二人はもう準備が出来たみたいだな。
いつでも問題ないというような視線。本気で来るとわかる瞳。
俺も、アルカと目を合わせ、戦闘準備。
魔導書を手に取り、開く。
アルカもリヒトの事は気がかりみたいだが、二人から放たれる空気に武者震い。
口角を上げ、背中に抱えている剣を鞘から引き抜いた。
「アルカ、準備はいいな?」
「おう、いつでも大丈夫だ」
俺達の準備も整ったと、グレール達に視線を送る。
お互いに頷き合うと、一定の距離まで近付き、止まった。
「では、よろしくお願いします」
「あぁ、頼むぞ」
本気の戦闘、開始――…………
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