まさか、ここまでスパルタなんて思わなかったな
その後は何回か模擬戦を行い、他の人と合流。
合流、したんだが……。
「ぜぇ、ぜぇ……」
「倒れている時間ないよ、あともう少し。あと腕立て十回。大丈夫、出来るよ」
「はぁ、はぁ、は、はい…………んーーーー!!!!!」
俺がシールドから出ると、ロゼ姫とグレールが先に修行を切り上げていたらしく、外に出ていた。
修練場の端の方に人だかりができていたから、なんだろうと行ってみると、これだ。
アマリアが空中に浮かび指示を出し、リヒトが腕立て伏せの形で汗を流し、踏ん張っている。
これって、ただの筋力作り?
場所が場所なだけに人が集まってる。
これは、リヒトが可哀想な気がするんだけど…………。
「────あ。修行は終わったの?」
「……………………はい」
他人のふりを一瞬しようかなと思ったけど、さすがにリヒトを放置できなかった。
「えっと、アマリア? 何をしているの?」
「見てわからない?」
「体力作りをしているという事しかわからない」
「その通りだけど?」
「なぜここで?」
「出来る所がここしかなかったから。シールドは二つしか空いていなかったし」
いや、まぁ、確かにそうだが……。
だからって、こんな人の目がある所で……。
俺だったら絶対に嫌だ。
こんな、人の目線が集まっている場所で筋トレなんて…………。
「~~~~~十!! で、きま…………」
あ、最後まで言葉が繋がらなかったな。
力尽きたリヒトが地面にうつぶせに倒れ、動かなくなった。
「うん、それじゃ今日はこれで終わり。周りの人もいなくなって」
集まっている冒険者達にアマリアが言うと、怯えた様子でこの場から去って行った。
残ったのは、いつものメンバー。
「リヒト、大丈夫か?」
「……………………」
何とか頷いたな、リヒトよ。
言葉を口にするだけでも辛いのか、気の毒に。
「なぜ、筋トレを行っていたのですか?」
「弱いから」
グレールの質問に簡単に答えたアマリア。
だが、今の直球な言葉はリヒトの心を深くえぐったと思うぞ。
倒れているリヒトに耳を傾けると――――
「私は弱い、私は役立たず。私は弱い、私は…………」
…………聞かなかった事にしようかな。
呪いの呪文が聞こえたような気がしたけど、気のせい気のせい。
「アマリア様の事です。他に考えている事があるのでしょう?」
「買いかぶり過ぎだよロゼ。僕は単純にリヒトの筋力が冒険者を続けるにあたってなよなよだから、そこから始めていこうと思っただけ。サポートがメインだったとしても、持続して魔力を使い続ける体力は必要だからね」
それはまぁ、確かに。
一回だけ、魔力の枯渇で倒れているもんな。
でも、それって体力をつけただけで改善されるのか?
「今日はここまでにしようかリヒト。明日はまた違うメニューで筋トレするつもりだから、頑張って」
「………………………………」
「返事」
「はい」
……………………アマリアが一番、スパルタだった。
このあと俺達は城に戻り、リヒトは事切れたかのようにベッドへ倒れ込み意識を失う。
起こすのも可哀想だし、かけ布団をかけてあげ、俺達は違う部屋で夜を明かした。
※
次の日は、またしても修練場でアルカと模擬戦。
リヒトは人の目がある所での筋トレは嫌だと、アマリアと城にある格技場に向かった。
まさか、城に格技場と呼ばれる部屋があるなんて思わなかった。
詳しく聞いてみると、王妃と王が作らせた修練場だったとのこと。
冒険者だった頃に無理やり作らせた場所が、今ではあまり使われていないからと貸し出してくれた。
アマリアは思っていた以上にスパルタだったみたいだけど、大丈夫だろう。
体が壊れるほどのオーバーワークなんて絶対させない、そこは信用している。
俺は、目の前で戦闘態勢を作っているアルカと勝負をしなければならない。
昨日は予想外の一手で動揺してしまったが、今回は絶対にミスしない。
魔導書を構え、拳に炎を纏わせる。
魔力は散りばめられてはいない。
戦闘が始まり、意識が他に向かってしまった時、今と同じ状態を保つことが出来るのか。
アルカの修行でもあるが、俺も利用させてもらうぞ。
「行くぞ、カガミヤ」
「来い、アルカ」
模擬戦、開始だ。
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