まさかここで新たな管理者と出会うなんて思わないだろう
ロゼ姫とグレールは、俺達黎明の探検者に入る事となった。
だから、これからギルドに行って申請しないといけない。
そのついでに、ロゼ姫とグレールの戦闘服も買う流れ。
金は、もちろん俺達のではなくロゼ姫の親が出してくれるみたい。
良かった、本当に良かった。
ギルドに六人で向かい、無事にたどり着く。
受付嬢にロゼ姫とグレールを仲間にしたいというと、何故か受付嬢の思考が停止したらしい。
いや、それだけではない。
俺の隣で浮いているアマリア、それに対しても疑問を抱いているんだろう。
口をあんぐりとさせ、見続けていた。
「なぁ、アマリア、本当に姿を消す事って出来ない?」
「さすがに無理だね。君の魔法でどうにか出来たらやってみて」
こんの、くそが。
ごっほん、まぁ、いいわ。
「おい、受付嬢、早くロゼ姫とグレールを俺達、黎明の探検者に入る手続きをしてくれ」
「…………あ、は、はい。えっと、黎明の探検者に入るのはロゼ姫様とグレール様、お二人でよろしいのでしょうか」
ん? やっと動き出したかと思うと、またしてもアマリアを見た。
ま、まさか。こいつもグル?!
なにか、俺達に余計な事をしようとか考えてないだろうな!!
…………い、いや、さすがに、何も無いか。
今まで受付嬢絡みで色々あったから疑心暗鬼となっちまった。
「なぁ、なんでさっきからアマリアを見ているんだ? 言っておくが、アマリアはもう管理者の立場ではない。怖い事なんて何もないぞ。ただの少年だ」
「え、え!? 管理者ではない!?」
あ、そういえば、アマリアが管理者を追放されたとまだ通達していないのか。
アマリアもすっかり忘れていたらしく「あっ」と阿保面を浮かべている。
……ん? ま、待てよ。まさかだが、こいつ。
ロゼ姫達が準備している中、自分の後始末は一切やってないのか!?
「すっかり忘れてたね。でも、そういうのは僕じゃなくて、残っている管理者でやってくれるはずなんだけど、おかしいなぁ」
「あ、あぁ、確かに……。残っている管理者でやるのが普通だが、誰かやってくれそうな奴いるのか?」
「僕がほとんど後始末やっていたことを今思い出したよ」
「やる人がいないわけな…………」
それは、アマリアがやるしかないんじゃないか?
アマリアの肩をポンと叩いていると、警備員っぽい服装の人が慌てた様子で駆け寄ってきた。
なんか、怖がっているような表情だな。何かから逃げているのか?
「あ、の、ロゼ姫様」
「どうしたのかしら」
「管理者様がお見えです。ダンジョンを管理しております、フィルム様です」
えっ、なんで…………?
走ってきた警備員の後ろ、騒がしい。
困惑や恐怖と言った感情が、ある一人に注がれていた。
黒いローブを身に纏い、フードから見える深緑色の髪が歩く度に揺れる。
どんどん俺達の方に近づいて来ているな。アマリアを狙いに来たか? それか、俺。
アマリアを後ろに下げ、一応魔導書に手を添えると、あちらさんも俺達に気づいたらしい。
黄緑色の瞳と目が合う。
「…………知里、見つけた」
「俺を探してたのかい? 残虐非道な管理者さん」
「違う」
「違うんかい」
俺が狙いではないという事は、やっぱりアマリアか?
「裏切り者、違う」
「…………普通に文章で話してくれねぇか? なんで単語で話すんだよ」
「関係、ない」
なんだよこいつ。
顔を引きつらせていると俺の隣を通り、何故かギルドの受付に。
何をする気だ。
あいつが何をしてもいいように警戒していたんだが、特に何もなかった。
ローブから手を出し、丸くなっている紙を受付嬢に渡しているだけ。なんだ、あれ。
「あ、あの…………」
「渡した、用、終わり」
受付嬢は何か言いたげに紙を握っているが、それを無視して俺達の方へと向かってきた。
近くまで来るとわかる、こいつ、身長ちっさ。
140ちょいくらい。
「裏切り者、始末」
「僕を始末するならいいよ。でも、今はそのような指示、出ているの? そもそも、僕が生きていることは知ってた?」
「知ってる、殺す」
「殺すように命令されているという事だね。でも、今でいいの? さすがにやりにくいんじゃない?」
「…………今、やらない」
アマリアの言葉に、フィルムは周りを見る。
俺やアルカ、リヒトやグレール、ロゼ姫を見た後、表情一つ変えずにやらないと言ってくれた。
「それなら良かったよ。今から帰るんでしょ?」
「…………」
「睨まないでよ、何もしないから。ほら、ここに居ても意味はないでしょ? 早く帰りなよ」
アマリアがそれだけ言うと、納得はしていないみたいだが、頷いてくれた。
そのまま何事もなく、管理者の一人であるフィルムは去って行く。
何もなかったのはいいが、腑に落ちない。
本当に、何もしなかったんだよな。なにか、変なものを仕掛けていたりしないよな。
アマリアにされたみたいに、監視されるなんて御免だぞ。
「…………ふぅ。今回は本当にあれを渡しに来ただけみたいだね、良かった」
あ、そういえば、受付嬢は何を渡されたんだ?
受付嬢が受け取った紙を受け取り、見てみる。
そこには、アマリアが管理者を追放されたことが書かれていた。
しっかりと、手形まで印字されて。
「これで、説明する手間は省けたね」
「みたいだな」
これで、アマリアが管理者を追放されたことを通達しなくても済んだ。
それはそれでいいが…………。
「今考えても仕方がないと思うよ。今は、知里の目的を達成しよう」
「うん…………」
アマリアの言う通り、今難しい事を考えても仕方がないな。
今は、俺の目的であるカケルの封印解除を頑張ろう。
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