やっぱり報酬は嬉しいものだな
体を十分に休ませた後、アルカとリヒト、ヒュース皇子と共にグランド国に戻り、王から報酬をもらった。
「一、十、百、千…………ぐふふ、やばいな。苦労したかいがあったな…………ぐふふふふ」
受け取った料金を確認すると、ダンジョンをクリアした時の総額の倍以上。
これはアルカが持っている黎明の探検者の通帳に送られている。
「一、十、百、千…………ぐふふふふふ」
幸せだ、幸せだぁ。
「…………なんか、カガミヤさんが気持ち悪いです」
「そうだな、気持ち悪いぞ、カガミヤ」
何が気持ち悪いだよ、アルカ、リヒト。
俺はただ通帳にしっかりと報酬が入ったかを確認しただけだぞ。普通だろ、普通。
「チサト」
「待て、俺は今楽しんでいる、話しかけるな」
「…………」
――――――バッ
「あっ!! 俺のおかねぇぇぇえええ!!!」
「話を聞け、チサト」
「くっそ、わぁったよ!! なんだ!!」
通帳がヒュース皇子によって奪われてしまった。
くそ、俺のお金がぁぁぁあ。
涙を浮かべていると、いつの間にか来ていたらしいヒュース皇子の父親である王が、俺を呆れたような目で見てきていた。
「…………そこまで喜んでもらえるとは思わなかったが、良かった。本当に、今回の感染症の件や、婚約について。すべてを解決して報告をしてくれて、本当に助かった。直接礼を言いたくてな」
「あ、お礼より嬉しいものを貰ったため別にいらない」
「カガミヤさん!! せっかくお礼をしてくださっているのですから通帳に送っている目線を王様に向けてください! あと、げんなりとした顔を浮かべないでください!」
だって、目を離すと俺の通帳がヒュース皇子の懐に入ってしまうかもしれないじゃないか。
俺の物だ、誰にも渡さんぞ。
「ま、まぁ良い。今回の件はギルドにも報告するのだろう? 報酬をしっかりともらってきなさい」
「言われなくてもそうすっ――」
「はい!! はい!! 今すぐ行ってきます!! カガミヤさんと一緒に行ってきます!!」
「お、俺達はもう行くな!! ヒュース皇子、今まで本当にありがとう!! またどこかで出会えた時はよろしく頼む!! またな!!」
よくわからないが、アルカとリヒトに無理やり引っ張られてしまった。
はっ! 通帳! 通帳はしっかりと返してもらったんだよな!?
ヒュース皇子に持たせたままなんてことないよな!?
「きょろきょろしなくても通帳はしっかりと受け取っています!! 早くギルドに行きましょう!」
「よくやったリヒト!! 早く俺に通帳を寄こせ!!」
「それより早くギルドに行って報酬をもらいましょうよ!!」
お、それもそうだな。今よりもっと増えた金額を眺めた方が俺の心は満たされる。
引きづられていた体を起こし、自分の足でしっかり歩きギルドに報酬を貰いに行く。
最後に後ろを確認すると、やれやれというように肩をすくめながらも、親子で手を振り見送っている二人の姿。
親子関係も正常に戻ったみたいだな、良かったわ。
アルカとリヒトと共にギルドに向かい、今回の護衛任務について報告。
報酬がもらえる形になった。
最初は怪訝そうな顔を浮かべていたけど、アマリアが無言で受付嬢のパソコンを操作して俺達の実績を確認、無事に信じてもらえた。
唖然としている受付嬢を放置して、俺達は今、グランド国を歩いている。
もちろん、通帳は返してもらった。
「報酬報酬~」
「ここまでテンション上がるんだね、報酬をもらうと」
「当たり前だろう。おっ、そういえばだが、アマリアの小遣いはいくらあんだ? お前に魔力を送っているんだから、お前のお小遣いを頂く権利はあるだろう」
「僕のお金は通帳に入っているけど、その通帳は管理者を束ねている人が持っている。おそらく、止められているよ。つまり、僕は今文無し」
「うそ……だろ…………」
「なんで君のお金じゃないのにそこまでショックを受けているの? 仮に通帳が止められていなかったとしても僕のお金だ、僕のために使うよ」
「なんでだよ…………」
くそぉ、やっぱり駄目かぁ。
通帳を手にしながら歩いていると、子供が楽しげに走り回っている姿が目に入る。
俺達の隣を元気に走り去る。追いかけっこでもしているんだろうなぁ。
周りを見ていないようにも感じたし、そのうち大人にげんこつでも落されるんだろう。
また前を向き歩き出すと、誰かが俺の裾を掴む。
「あ?」
「あれ、この子…………」
リヒトが俺の裾を掴んでいる子供の前にしゃがむ。
俺も見下ろしてみると…………あ、この餓鬼、見覚えがあるぞ。
「お前、また俺から金を盗もうとしてんじゃねぇだろうな!!」
「おじさんは何も変わらないんだね…………」
そこに居たのは、俺達が初めてグランド国に来た時に、俺から金を奪い取ろうとしたクソガキだった。
何故か哀れみの目を向けられている気がするんだが、気のせいだよな?
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