深く考えては負けな時ってあるよな
俺達が二人を置いてその場から離れようとした時、矢先がこちらに向いてしまった。
王妃とロゼ姫に冷たい視線を向けられ、体が凍ったかと錯覚。
グレールとヒュース皇子も同じだったらしく、俺達仲良く豪華な絨毯の上で正座する羽目となった。
なんで俺達がこんな目に合わないといけないんだよ。
絶対に今の言い争いに俺なんて必要ないじゃん。撫でまわされるよりはましだけど……。
「こんなに可愛い子達、私が素敵に磨き上げます」
「駄目ですよ、お母様。リヒト様とアルカ様は私と共に冒険者として活動していくのです」
「許しませんよ。お二人は私が」
「いえ、私と共に生きます」
くそぉ、いつまで続くんだこの変な親子喧嘩。
「正座し続けられるなんてすごいね、足痛くならない?」
「空中に浮かんでいるアマリアは黙っててくれない? あの冷たい視線、捕まれば終わりだ。動く訳にはいかねぇ」
アマリアだけはちゃっかりと空中に逃げている。
くそぉ、羨ましいぞ……。
正座している俺達の横から王が二人へと歩いていった。
だ、大丈夫、なのか?
「レイラ、いい加減にしなさい。それより、ロゼよ。先ほどの話は本当なのか」
「私がチサト様率いる黎明の探検者に入り、冒険者として活動して行く話でしたら、本当です」
親からしたら普通、そっちの方が気になるよな。命をかける訳だし。
普通なら。
「私は、今まで様々な冒険者達とお話をしてきました、修行しているところを沢山見てきました。その中で苦しんでいる人や、悲しみで涙を流し冒険者をやめていく人達も……。沢山の涙を見てきました。それくらい辛い事だとわかっております」
「それなのなら、何故入りたいと思う。お前はこれからも守られて生きていけばよいだろう」
「それだと、冒険者達の苦しみを本当の意味で知る事が出来ません。私は自身で感じて、冒険者達の苦しみを感じ、それを踏まえてお話を聞き導いていきたいのです。悩みある冒険者達を守りたいのです。今まで私が守られてきましたので、今度は私が守りたいのです」
なるほど、そう思っていたのか。単純に興味本位だと思っていた。
ロゼ姫が立ち上がり王の前に立つと、膝を突き頭を下げる。
「お願いします、お父様。私が黎明の探検者に入る事を許可してください」
「それは駄目だ、危険がある。命を懸けるのが冒険者の仕事。お前にそのような事ができるとは思えない」
『…………跡取りの事もありますもんね』
おい、悪い顔でぼそっと言ったぞこの姫様。王は聞こえなかったらしく首を傾げている。
「確かに命を懸ける事となり、命を落とすかもしれません。そうなると跡取りなども考えられないでしょう。ですが、それでも私は冒険者になりたい、経験したいのです。跡取りの件も私自身が決めます」
「何か手はあるのか?」
「…………」
「ないのなら――――」
王がまたしても否定しようとした時、動いたのはまさかの王妃だった。
「待ってください、あなた。いいんじゃないかしら、冒険者に入って」
こいつ、本当にロゼ姫を大事に思っているのか?
さっきから心配しているように見えないんだが。アルカとリヒトの取り合いばっかりで。
「なに? なぜだ。ロゼが危険な目に合うのだぞ。帰らぬ人になるかもしれぬ。そんな危険なところに愛娘であるロゼを送り出すなど、出来る訳がない」
「ですが、私達が出会ったのはその、冒険者として活動をしていた時だったはずです。素敵な出会いもあります、跡取りの件もその出会いで解決するかもしれません。それに、黎明の冒険者はここ最近功績をあげているではありませんか。今回、オスクリタ海底を襲った管理者でさえも、倒してしまいました。私は、この子達になら娘を任せられると思います。管理者だったアマリア様もおりますし」
アルカとリヒトを抱えながら俺達を見て来る王妃。
もう、抵抗するのも疲れたらしいな。抱えられている二人は力なく項垂れている。
というか、この二人元冒険者だったのか。
体を鍛えていたから、男女二人抱えても平気なんだな。
「…………しかし」
「それと、跡取りの件ですが、やはり親が勝手に決めてはいけない、そう思ったのです。私もあなたに出会う前は、本当に苦しかった。やりたいことは出来ず、婚約の話ばかり。私は女性が好きだったので、男性を連れて来られ本当に嫌でした。今、その苦しみを娘が味わっていると考えてしまい、辛くなりました」
え、女が好き?
つまり、この二人は政略結婚。愛なんてない、そういう事か?
でも、出会いは冒険者として活動していた時なんじゃないのか?
「だから、私は思ったのです。男性は男性でも、可愛いお顔の方だったら大丈夫なのかと!! 私の時のように!!!」
ん? 待って。話が見えなくなってきた。
グレールを見るも首を傾げている。ヒュース皇子を見ても同じ反応。
唯一、首を傾げず王と王妃のやり取りを見ているのはアマリアだった。
「アマリア、何か知っているのか?」
「まぁ、一応二人のなりそめとかは知っているよ。ギルドで出会ってギルドで告白してギルドで結婚式を挙げたおてんば夫婦だったから。あの時、毎日毎日許可を取りに来ていて本当に迷惑だった」
「その話もものすごく気になる」
でも、今は関係ない。
アマリアが何か納得したように頷いているし、この話は安心して聞いていていいだろう。
俺はもう、考えるのを諦めた。
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