予想外なことが起こりすぎると思考がおかしくなるのか?
「ヒュース皇子でしたらすぐに戻ってくるかと思いますよ。オスクリタ海底にある武器屋や防具屋を見たいと目を輝かせていただけなので」
もしかして、ヒュース皇子って武器とか防具を見るのが好きなのか?
「…………まぁ、それならいいわ。俺は、体がなまっちまってるからリハビリしたいんだが、グレール、付き合ってくれるか?」
「私で良ければ」
「頼む」
アルカとリヒト、ロゼ姫に手を振られ送り出され、いつものようにシールドの中に入り、リハビリがてらグレールと共に模擬戦開始。
体がなまっている分、集中しないと魔力が前のように散乱してしまう。
深呼吸して、集中力を高める。
「──よし、始めようか」
「よろしくお願いします」
グレールと見合せ、模擬戦開始だ。
※
模擬戦が終わり、ふらつく足取りで城に戻りベットにダイブ。
流石に疲れた。
一か月寝ていた体に、鞭を打ち過ぎたぁぁああ。
「無理し過ぎですよ、カガミヤさん。一戦一戦長いうえに、十戦以上もしていたんです。倒れ込むのも仕方がないですよ」
「リヒトの言う通り、無理し過ぎ。オーバーワークだよ、楽しそうだったからあえて止めなかったけど。知里って、ここまで後先考えない性格だったっけ?」
うっ、リヒトとアマリアの小言が耳に突き刺さる。
今、俺に小言を言うな、耳が痛い。
だって、仕方がないじゃん。楽しかったんだよ、これはガチで。
「…………あの、お疲れのところ申し訳ないのですが、よろしいでしょうか」
「断ってもいい?」
「では、明日聞きます」
「…………今聞く」
「ありがとうございます」
これ、断り続けたらめんどくさいのがズルズル続く。
今聞いて、すぐに終わらせる。
「婚約破棄の件は、どうなったのでしょうか……」
「あー、やっぱりか……。それに関してだが、もう色々考えるのめんどくさくなったし、最初グレールが言っていた作戦を実行しようと思ってる。何が待っていても、もうこれしかないと思ってる」
ちらっと、ロゼ姫の隣に立つグレールを見ると、顔を青くしつつも俺から冷静に目を逸らしやがった。
相当嫌らしいなぁ、俺もそんな反応されたらいやに決まってる。
でも、これしかない、やるしかない。
覚悟を決めて、やらなければ…………。
「それじゃ、グレール、教えてくれ」
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ロゼ姫から王妃と王に話をつけ、話し合いの日を決定。
当日まで待ち、今は王妃達が待つ玉座の間の前に立っていた。
ここにいるのはロゼ姫、グレール。あと、目を輝かせながら戻ってきたヒュース皇子とアマリアの五人。
アルカとリヒトは部屋で待機をしてもらっている。
「何から話すかは、お決まりなのでしょうか」
「最初はお互い様子見だろうから、相手の出方次第だな。まず、話を合わせていこうと考えている」
結局、グレールは詳しく作戦を教えてくれなかったなぁ。
『貴方でしたら、普通に説得していれば大丈夫です。説得、頑張ってください。貴方なら大丈夫です』
この一点張り、何が大丈夫なのか、何で俺なら大丈夫なのか。
ロゼ姫とヒュース皇子は不安そうに俺を見てくるし、グレールは冷静を務めながらも話す言葉は早い。
いつもより焦っているのは、口調でわかる。
「なぁ、本当に何が待っているんだ? 俺、普通に話し合うだけでいいのか?」
「問題ありません。それと一つ、私はこちらで待っております。大人数で行っても意味は無いかと思いますので」
「お、おう?」
グレールがまさか行かないなんて言うとは……。
まぁ、確かに大人数で行っても意味は無いし、いいか。
いや、いいのか? グレールが言うなら、いいけど……。
玉座の間へ続く大きな両開きの扉を開くため、ドアノブを握る。
後ろにいる三人を一目見て、頷き合い扉を勢いよく開いた。
中を見ると天井にはシャンデリア、大理石の床に、左右にはオスクリタ海底を見下ろすことができる大きな窓。
王と王妃を守るため、近衛兵が数人立っていた。
奥には、ロゼ姫とよく似た女性と身長の小さい王が二人、王座に座っている。
あの二人がロゼ姫の両親か、似ているな。
纏っている空気とか、鋭い。
「こちらに来なさい」
「…………はい」
王から近づく許可をいただいたため、遠慮なく歩く。
俺が先頭で隣にアマリア、後ろにはロゼ姫、ヒュース皇子の順で歩き二人の前で膝をつく。
頭を下げると、王が最初に話を切り出してくれた。
「今回、ロゼに話し合いの場を作ってほしいと祈願され、この場を設けたが、なに用だ」
「はい、お時間を作ってくださりありがとうございます。今回、我々黎明の探検者は、ギルドからの依頼によりヒュース皇子を護衛させていただきました」
「あぁ、感謝している」
「ありがたいお言葉です。それでなのですが、王はヒュース皇子の性別はご存じで?
「何を言っている若造、ワシを馬鹿にしているのか」
「いえ、馬鹿にするわけがありません。では、わかっているということでよろしいでしょうか」
「当たり前だ。そうでなければ、自分の娘と婚約させるなどの話は持ち掛けん」
「わかりました。では、ロゼ姫には女性との婚約をお許しになるということでよろしいですね。でしたら、今回の話し合いはここまでで大丈夫です。貴重なお時間ありがとうございました。では、これで失礼します」
俺が立ち上がろうとすると、王が慌てた様子で止めてきた。
「待て、それはいったいどういうことだ」
「言葉のままですよ、王様。ヒュース皇子の性別は理解しているのでしょう? でしたらわかるかと思うのですか」
後ろからチクチク刺さる視線を感じるが、俺は無視。
「今の言い方だと、まるでヒュース皇子が女性ということになるのだが」
「えぇ、そうですよ。ヒュース皇子は女性です。そのため、先ほど確認のためお伺いさせていただいたのですが?」
「なんだと?」
確認のためか、王は隣にいる王妃を見る。
王妃も知らなかったらしく、口元に手を当て俺の後ろにいるヒュース皇子を見た。
「…………ヒュース皇子とやら、今の話は誠か?」
「はい、私は女性です。訳があり、男性として育てられました」
ヒュース皇子の返答に、二人は口をあんぐり。
本当にわかっていなかったらしいな。
これでひとまず、ヒュース皇子との婚約は破棄になるはず。なら、俺の出番はここまで。
次の婚約相手を連れてきたとしても、俺には関係のないこと。
今回の依頼は、完遂した。
そう思ってほくそ笑んでいたら、何故か王妃がよく分からんことを聞いてきた。
「でしたら、黎明の探検者」
「はい」
「貴方は間違いなく男性ですか?」
「? はい。正真正銘の男性ですが…………」
俺って、体格とかそこまで貧層ではないと思うんだけど、女性に間違うか?
それに、なぜ今俺の性別を聞いた、王妃。
「それならよかった。でしたら、貴方がロゼの婚約者になっていただきたい」
………………………………はい?
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