苦渋の選択が俺を苦しめる
ふわふわな感覚が背中に伝わる。
もう、何度も味わっているからわかる。これ、ベッドの上だな。
重たい瞼を開けると、薄暗い部屋の中。
目線だけを周りに向けると、オスクリタ海底の城にいることがわかった。
体を起こすと耳鳴りが……体はだるいし、頭が重たい。
熱を出したような感じ、最悪だ。
「はぁ…………」
あぁ? 誰もいないのか。
起きた時、誰もいないのは初めてだな。
大抵リヒトがいてくれたからすぐどのくらい寝ていたのか、他の人はどこにいるのか聞くことが出来ていたんだが……。
んー、もう寝る気にもなれないし、どうしようかな。
…………ん? 隣からしせっ――――え?
「うわぁぁ!?」
「っ!? お、驚いたんだけど、何?」
「お、俺の台詞だわ! 少年姿でなに三角座りしているんだよアマリア。死角だったからマジでビビったぞ」
「この体勢が楽だから…………。それより、魔力は回復した?」
アマリアが少年の姿で三角座りしていたんだが? しかも、ベッドの下
周りは薄暗いから、まじで幽霊かと思ったぞ。
あ、空飛ぶことできるのか、ふわふわと俺の隣に座り直した。
「………はぁ、アビリティ」
『はい』
「俺の魔力って回復した?」
『満タンではありません。ですが、回復はしております』
パラメータを出しながら説明ありがとう。
魔力は枠に収まっていないから、確かに回復はしたみたい。
これでも満タンではないのか、枠から飛び出しているけど。
「アマリアの身体は大丈夫そうか? なにか、不具合とかあれば教えてほしい」
「今は特に何もないよ。魔力も問題なく供給されている、感謝してもしきれない」
「そうか、それならよかった。…………なぁ、フェアズはどうしたんだ?」
フェアズの遺体はどうしたのだろうか。
まさか、アニメとかに出て来るマッドサイエンティスト的な感じに、どこかで液に漬けて保管とかしていないよな?
「フェアズは、埋めてきたよ。安全な所に」
「安全なところ?」
「うん」
何処だよ、怖いな。
「怖がらなくていいよ、オスクリタ海底にあるお墓に埋めただけだから。ここはそう簡単によそ者を侵入させない。だから、安全」
「なるほど。でも、お前らは簡単に侵入して来たよな? 透明の壁をぶち壊してさ」
「あれは、アクアに協力をお願いしただけ。僕とフェアズだけではここにすら来れなかったよ。管理者だったとしても、何か正当な理由がないとね」
へぇ、そうなんだ。
アクアを利用ねぇ、結構ゲスイことするじゃん。
「アクアには悪いことしたと思っているけど、ここに来るにはアクアが居なければ出来なかったんだよ。フェアズが望んだから、純粋で、何も知らないアクアを利用したの」
「言い方がくどいな、後悔してんのか?」
「してないよ。アクアには悪い事をしたとは思っているけど、後悔なんてしていたら、今までの行動全てを否定する事となる。それだけは、絶対に考えてもいけない。足踏みしている時間などないのだから」
アマリアは、もう前を向いているんだな。
愛しの人を失ったばかりだというのに、強い奴だ。
「体が大丈夫なのなら、早く他の人達に報告しよう。君はもう一か月以上も眠っていたんだ。心配している事だろう」
ん? え? 一か月以上?? 寝てた??
「…………嘘」
「本当。魔力量が多い分、なくなると回復まで時間がかかるんだよ。仕方がない」
たしか、前もそんなことがあったなぁ。
魔力、多いのも考えよう…………だな。
※
アマリアは今、俺の顔近くでふよふよ浮きながら移動している。まるで、子供サイズの精霊だ。
「青年の姿で服を着替えて目立たないようにできないのか? それか、スピリト達みたく姿を透明にしたりとか」
正直、アマリアは顔が広すぎる。当たり前だけど。
元とは言え管理者、アマリアが歩くだけで周りの視線を集めてしまう。
今も、アルカ達に会う為修練場に向かっているのだが、道を歩くだけで周りの視線が突き刺さって不快。
「透明になるのは無理だけど、元の姿になって服を着替えるのは出来るよ。でも、体が大きくなる分魔力を多く使うから、知里への負担が大きくなる。それでもいいの?」
「苦渋の選択…………」
なんだよ、その選択肢。最悪だ……。
「まぁ、僕が管理者だという事でここまでの視線を集めているんだろうから、もう管理者ではないとギルドに報告すれば、少しはマシになるんじゃないかな。掲示板に重要事項として張り出せばいい。あとは人伝に広がっていく」
絶対にそれだけじゃない。
それだけではこの不快な視線を消し去ることは出来ない。
はぁ、まさか。
護衛任務の依頼から話がここまで大きくなるなんて思ってもいなかったよ。
最後に残すは、当初の目的である婚約破棄についてだな。
フェアズを使おうと思ったのに、今はもういない。
アマリアって村の管理などをしていなかったけど、元管理者という名前だけで王妃とかを説得できないかな。
適当にそんなことを考えていると、修練場が見えてきた。
近づいてみると、ペアで分かれて模擬戦を行っているのがわかった。
アルカとグレールペア、リヒトとロゼ姫ペアみたい。
って、ロゼ姫!? あの人、戦闘できるの?
いや、今は見合っているから模擬戦ではないかもしれない。
四人は俺達に気づいていないみたいで、集中している。
邪魔するのも悪いし、声をかけなくていいか。普通に気になるし。
えぇっと、現在進行形で手合わせしているのは、アルカとグレールペア。
アルカとグレールはどちらも剣だから、近距離戦主体。
「見ていくの?」
「もち、気になる」
俺も気になるけど、アマリアも聞いて来る割には気になっている様子、これ以上は何も言わずにアルカ達の戦闘を見届ける。
静かな空間、それを突き破るのはアルカ。
地面を強く蹴り、グレールへと走ると、剣を振り上げ叩き落す。
ガキンと、簡単に受け止められたが、アルカは身軽に次の動きに移行。
地面に足を付け、視線を低くしながら切りつけようと剣を薙ぎ払う。
それすら、グレールは後ろに下がり回避。
アルカは距離を詰め怒涛の連撃。
グレールはアルカの連撃を受け止めているのみで、自ら動き出そうとしない。
表情を見るに、受け身だけで精一杯という訳ではなさそう。
アルカの次の動きを見て、回避。
優位に立っているアルカの方が必死な表情を浮かべているのが、どことなく不気味。
この後、少しでも隙を見せれば首をはねられるんじゃないかという不安があるな。
それだけ、グレールの動きには余裕がある。
連撃を繰り返したアルカが、これではキリがないと考えたらしく、力任せに振るった剣を氷の剣で受け止められた瞬間、足を振り上げ違う動きを見せた。
だが、グレールはその動きを待っていたかのか、ニヤリと笑う。
振り上げられた足を左手で受け止め、掴む。
掴まれたことに動揺してしまったアルカの負け、すぐさま剣を首筋に添えられてしまった。
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