生きるのにも覚悟は必要だからな
「アマリア、罪を償いたくないか? 命を絶つ以外の方法で」
アマリアに聞くと、本人以外の人たちも俺を驚いたように見る。
その中でも一番驚いているのは、まぎれもなくアマリアだ。
目を開き、固まっている。
けど、そこはさすが管理者、すぐ平静を取り戻し怪訝そうな顔を俺に向けた。
「それは、どういう意味で聞いているの? 僕の身体はもう魔力の供給がなくなる、物理的に生きられなくなるんだよ?」
「それって、逆に言えば、魔力さえあれば生きていけるってことだよな?」
アマリアの前に移動して目を合わせると、気まずいのかすぐ目をそらしてしまった。
膝の上に乗せていたフェアズを見て、優しく頭を撫でる。
「…………僕は、君が思っている以上に人を殺してきた、罪を犯してきた。それでも、フェアズを守れるのならと諦め、深く考えなかった。それなのに、全てを賭けて守ると決めた人を結局守れず、僕はただただ意味もなく人を殺し続けた殺人兵器という結果を残してしまった。そんな僕が一人残っても意味は無い。それに、フェアズを一人にもしたくはない」
…………そうだよな。
俺でも同じ立場なのなら、同じことを考えているかもしれない。
俺が何も言えないでいると、リヒトが俺の後ろから顔を出した。
「あの、さっきフェアズ様は、アマリア様の言葉に『ダメ』と言っていました。それはつまり、アマリア様には生きてほしいと言うことではないでしょうか」
たしかに、最後の灯で口を開いた時、フェアズはアマリアが一緒に行くと言った時、断っていた。
リヒトの言う通り、生きてほしいんだ。
好きな人に、愛していた人に。
リヒトの言葉にアマリアは目を大きく開き、顔を俯かせてしまった。
葛藤してんだろう、色々と。
アマリアの思考が落ち着くのを待っていると、やっと口を開いた。
「知里、僕に幸せを感じる資格なんてない。でも、僕が生きていることによって、僕と同じ気持ちになる人は少なくなるのかな」
「…………さぁな、そんなもん俺に聞くな」
「そ、うだよね。ごめん……」
俺に聞かれても困る。
困るが…………。
「聞かれても困るが……そうだな。俺が言えるのは、お前次第で変えられる、かもしれないな。――って、だけだ」
言うと、何故かアマリアが急に笑い出した。
え、なに。俺、何か笑えるようなこと言った?
唖然としていると、アマリアが涙を拭いてフェアズを見た。
何だよ、泣く程面白かったの?
「…………フェアズ、ごめんね。僕は、もう少し頑張ってみることにしたよ。君と、僕が経験した地獄を、これからの人に味合わせないように。だから、待っていてくれ」
アマリアは、最後と言うようにフェアズの額にキスを落とした。
人を愛するのは辛いと耳にしたことはある。
だが、今のアマリアが辛いようには、俺には見えない。
愛おしい人を失って辛いだろう、今までの努力が無駄になって苦しいだろう。
でも、なんでだろうか。今のアマリアが可哀想とは思えない。
優し気に細められている瞳も、笑みを浮かべている口元も。
今のアマリアの表情は、愛おしい人にしか見せないもの。
他の誰にも向けることはない、そんな表情だ。
「それじゃ、アマリア。生きる覚悟は、出来たか?」
「うん、出来たよ。でも、どうやるつもりなの?」
「こいつを使う」
俺の肩でへばっているリンクを掴み、アマリアに見せた。
「精霊?」
「そう、こいつの空間魔法で、俺の魔力をアマリアと繋ぎ、魔力を供給し続ける。そうすれば、お前の身体は問題なくこれからも動かせるんだろう?」
聞くと、アマリアは困惑しながらも頷いた。
「でも、どうやって繋ぐつもり? まさか、鎖なんてことないよね?」
「お前の首に鎖を巻いて散歩をするなんて趣味、俺は持っていねぇから安心しろ」
「そこまで言ってない……」
「繋げ方は、お前の心臓代わりに使われていた魔石を利用しようと考えている」
アマリアの左胸を差しながら言うと、一瞬驚いたように微かに目を開いたが、すぐに納得してくれたらしい。
フェアズを優しく地面に下ろした。
「わかった。でも、今すぐできる? 精霊は疲れ切っているみたいだけど」
「たたき起こすから問題ない。今やらんと手遅れになる可能性があるしな」
「ごめん……」
「謝罪より金をくれ」
俺がリンクの頬を掴み起こしていると、何故かアマリアが噴き出した――噴き出した?
なぜ? 今の会話、笑うところあったか?
「君は、本当に変わらないね」
「人間がそう簡単に変われてたまるか」
なに笑ってんだよ、この野郎。
意味が分からん。
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