表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/52

第四話 旅路


外周の第一壁までは石畳が続く。

この辺りは自由市も立ち、少々質は低いものの、鮮度と低価格は庶民の味方だ。

ここもまたいくつかクランクを描く。

一直線に続く道は、王都へ続く脱出路のみ。

危急の際は、増援が素早く入るためにもそう作られている。

退却した後は門を素早く崩して敵の侵攻を阻む仕掛けも備えている。

だが、今回使うのは逆の北門。

目の前には街道の外側にライ麦畑が広がり、遙か先に竜が棲むと言われる山脈が小さく見える。


街道をゆっくり進むと、領主の子息と知ってか、時折声がかかる。

今は小さな村の井戸のそばで、馬に水をやり、こちらも休憩している。



「お隣の辺境伯様を訪ねなさるか。 若い頃は一緒に戦場を駆け巡ったものでございます。」



懐かしそうな顔をしている老爺。

両の祖父と行動していたと言う者は案外多い。

老爺が荷物の中から、小瓶を取りだして渡してきた。



「辺境伯様が好きだった、コケモモのジャムです。伝令兵を努めておった時、よくねぎらいの言葉と共に分けていただきました。」



伝令兵。

若い頃は馬が巧かったのであろう。

健脚であったはずの脚は戦で痛めたのか、よく見れば少しひきずっている。



「ありがとう、お祖父様に渡しておくよ。これを。いいから取っておいてくれ。」



幾ばくかの硬貨を渡され、丁寧に腰を折る老爺に礼を言い、彼はまた馬にまたがった。

今日の目的地は次の町までだ。

日が暮れるまでには到着するだろう。



途中で知り合いの冒険者と出くわしたりしたせいで、多少遅れてしまった。

日が沈みかけてからの到着になってしまったが、なんとか今日の宿へ到着した。

馬を預け、料金を払ってから、部屋に入る。

荷物を下ろし、外套をかけてから装備を外し、ベッドで寝転ぶ。

もう慣れたものだ。


しばしの休憩の後、湯をもらってきた。

清浄魔法はかけたが、やはり温かい湯で拭くと、気分的に落ち着くのだ。

辺境伯領には温泉がある、あと3日もすれば到着するし、祖父にお願いして入らせてもらおう。

そんな事を考えていた。


街道の初日に泊まる宿場町としては定番の場所であるため、今まで何回も逗留した事はある。

だが、今回は侯爵家嫡男としてではなく、冒険者としての旅、食費に金はかけられない。

まだやっていた屋台から買ってきた、焼きすぎて硬くなった串肉と、餞別にもらったトマトにかぶりつく。

パンもまた、しっかり焼きしめたライ麦のパン。

領都で、パン屋の看板娘が渡してくれた、柔らかい焼きたてのものは、昼食で腹に収めてしまった。

もちろん、旅先から連絡を入れれば、父と弟は送金してくれるであろうが、大けがでもしない限りは、そんなつもりもない。

そりなりに稼いでいて、ギルドの口座には、半年程度は暮らせる金が入っている。

足りなくなりそうだなと思えば、その日生きていくだけの依頼をこなせば良いだけだ。

友の言葉ではないが、それこそ冒険者生活ではないか。


厨房で熱湯をもらい、ギルドの受付嬢からもらったハーブティーをいれる。

まだ、窓の外からは喧噪が聞こえている。

ケンカの怒声が聞こえてこないが、酔っ払いが歌う陽気な声。

時折響く嬌声とからかう声。

もう慣れたものだ。


食休みの時間を終え、剣の状態を確かめる。

今日は使っていないので、寝刃を合わせる必要はないだろう。

魔法で作った光球にかざし確認した後、軽く拭って鞘に収めた。

枕元に置き、ベッドに入ってから光球を消した。

明日も順調である様にと祈りながら。


翌朝は、少し風はあるものの良く晴れていた。

ちょうど旅程の半分ほどの町まで、今日は行くつもりだ。


街道は平和だ、また単調な道が続く。

侯爵領内とは言え、領都から離れるほど、自分の顔は知られていなくなる。

各宿場町の代官や、泊まった事のある高級宿の主人ならば見知っていてもおかしくはないが、今は冒険者服と言う地味な旅装であり、

気づかれる事はまずないであろう。






     ◇



今日と明日は野宿となる。

それは、辺境伯領近くに宿場町を置いては敵の兵站地として使われる可能性があり、そして住民が襲われるリスクをできるだけ低くするため。

不便ではあるが、国境近くの備えとしてはごく当たり前のことだ。

水は、今朝町を出る時に補給してある。

ゆっくりと馬を進めていると、冒険者姿のせいか、同様に一人旅の者が少しこちらと合わせる様に移動していく。

無料で護衛を雇っているようなもの。

これもまた庶民の知恵であるのだが、冒険者にも不心得者はいるので、賭けでもある。

その証拠に、夫婦連れなどは近くに見当たらない。


日が暮れる前に、街道を少しそれて開けている場所に入る。

これは野宿をするために、自然と作られたスペース。

その中でも外れた場所に荷を下ろし、馬をつなぐ。

そばの沢から汲んできた水を、飼い葉桶へ満たして飲ませると、今度は自分の準備。

薪を拾い集め、火をおこす。

山刀で(ヨモギ)を刈り、その中へ放り込んで燻し、虫除けにする。

敷物を敷き、その上にツェルトを設営する。


獣よけの魔道具をいくつか配置し、湯が沸くまで一休み。

晩メシは、干し肉と二度焼いたパン、あとはドライフルーツとチーズといったところか。


人の気配は大丈夫。

それなりに訓練は積んでいる。


パチンっと薪が爆ぜた。

先ほど栗を見つけて、虫を出すため今は水につけてある。

明日の朝はこれと、もらったイモを焼くつもりだ。






本日1話目です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ