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第二十九話 三人寄ればかしましい

All is well that ends well.

 

『フレアめ、やりおったわ。』



 水晶越しに宮廷を眺め、火竜女王がニタニタと笑う。

 今しばらくは安心であろうが、どこにでも自らを鑑み得ない愚者はいるもの。

 あの国とて一枚岩ではない。

 まして隣国が黙っているとも思えない。

 もちろん、潰すのは簡単であるが、罪もない民を巻き込むのは本意ではない。



『さぁて、あやつらにも連絡を取らねばなるまい。すでに気配の移動は察しておるであろうがな。』



 独りごちる火竜女王の前に、転移の光が立ち上る。

 すっと立ち上がりつつ、指を弾く。



『おかえり、皆。』


「ただいま戻りました。」



 代表して、疲れた顔をしたラッセルが応える。

 バイオレットは静かに頭を下げ、フレアはふんす!とない胸を張っている。



『上首尾よ、今しばらくはゆっくりできるであろう。だが、いつの世も愚か者はいる。気をつけねばな。』


「はい。」


「あの…炎竜様」


『どうした? バイオレット? ああ、あの件か。驚いたであろう?』



 もう何度見たかわからない人(竜)の悪い笑み。

 扇子をもてあそびながら、彼女の返答を待っている。

 バイオレットは大きくため息をついた。



「それはそうですよ。何も聞かされてなかったわけですし。」



 しばし間が開き、言葉を選ぶ。



「わたくしは、ラッセル様の侍女として、妾としておそばに置いていただける、と言う事でよろしいのでしょうか?」



 横手のフレアから殺気..と言うか熱気が漂ってくる。



『やめよ、フレア。』


『お母様は黙って。 何か勘違いをしてるけどね…レティ?』



 気圧される。



『貴女はね! 第二夫人(およめさん)になるの! 側室でも妾でもないちゃんとした () () () () () ! わかった?』


「フレア…ありがとう。」


『まぁ、それだけじゃないのよ…』


「?」


『ほら、いずれ旅に出るじゃない? 私はお料理できないから…その…』


「バカですか、貴女。」



 照れ隠しでそっぽを向いているフレアに、バイオレットは泣き笑い顔で悪態をついた。

 火竜女王は満足そうな笑みでうんうんとうなずいている。



「…………」



 ラッセルだけが蚊帳の外に置かれていた。

 お茶の用意を調えた鬼人族の使用人だけは、心中お察しします…と同情のまなざしで見つめている。






今回と次回は短めです。

なので二話更新。

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