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第二十話 変化

 

 そこから先は、蜂の巣をつついたどころではない大騒ぎ。

 火竜女王はカラカラと笑った後に、バーミリオンにまた遊びに来いと、やさしく頭をなで、転移で帰って行った。

 ラッセルとフレアは城内の最重要区画に案内され、バイオレットが侍女としてそのまま近くに控えている。



「火竜の長、炎竜と縁戚…国王陛下にもバーンにもどう説明すれば良いのだ。」


「使用人たちもどう対応すれば良いのか戸惑っております。バイオレットによれば普通の貴族への対応と食事で問題ないとの事ですが。救いはフレア様にバーミリオンが懐いており、遊んでいただいているとの事。また加護とアーティファクトまでいただいたそうですよ。」


「バーミリオンを狙う輩も増えそうだな。頭の痛い話しだ。陛下には報告を上げねばならん。バーンは…魔導通信で一報だけ入れろ。全てほったらかしてすぐに来いとな。」


「いずれ王都に呼び出されるでしょうね。」


「当たり前だ、この国のパワーバランスなどひっくり返るどころか無に帰したわ。」






 ◇




『わ、ほんとに美味しい! ありがとうバイオレット。』


「どういたしまして。今日は時間がないのでクッキーだけですが、明日はケーキを焼きましょう。」


『ん~! 楽しみ! ね?ミリィ?』


「はい! フレアお姉様。」



 執務室の重い空気とは違い、居室では明るい声が響いていた。

 ラッセルは剣の稽古をするために練兵場へ出かけている。






 ◇




「ふっっ!!」



 いつもより重い一撃。

 スピードはさほど変わらないが、一撃一撃に乗る破壊力が増している。

 それは剣筋のブレがなくなった影響が大きい。

 木人が耐えきれずに破壊され、木剣にもクラックが入っている。



「おいおい、うちの備品をそう簡単に壊すなよ。」


「すまない、力加減がまだつかめなくて。」



 ひとつ上の従兄弟が声をかけてきた。

 辺境伯家の嫡男であり、義弟の実兄。



「まあ、これでお前をどうこう言うヤツも減るだろうよ。妬むヤツは増えそうだがな。公爵家の長男なんかは特に。」



 肩を木剣でトントンと叩き、学生時代なにかと絡んできた同級生を思い出し、苦笑いを浮かべる。

 知識は無駄にならない、家を継がなくても学園には通えと12才から16才まで王都にいて学んだ。

 蔑まれても下を向くな、前を向いて清廉に生きよと言われ、その様に努めた。

 卒業した後は侯爵領で民と寄り添い、一方冒険者としての修行を積んだ。



「でも、良かったのか? これならば大手を振って家に帰れるだろう?」


「決めた事だ。弟のがんばりを無碍にはできない。」


「やれやれ。うちの一族はどうしてこう貧乏くじを自ら引きに行くかねぇ。」


「お互い様さ。さて、次は。」



 師匠から譲り受けた剣をとり、抜き放つ。

 シャランと音を立て、黒い鉄でハガネを巻いた剣身が現れる。

 この国には珍しく、片刃の剣。


 試し切り。


 呼吸を整え、心身が一致するのを待つ。

 おのが肉体と剣が一体になる様に、意識を剣先に伸ばす。


 為った。

 すいっとすり足で自然に踏み込み、物打ち所が当たる瞬間に力を集中させる。



「っかぁ、これはとんでもないわ。斬った麦わらが落ちてないとか何なんだよ。ラッセル。」



 従兄弟が拾った石を投げつけると、立て杭もろとも、麦わらが斜めにずれ落ちる。

 ラッセルは無言で練兵場の端へ歩き寄り、背の高い雑草に向かって振り下ろす。


 ふっ!しゅっ!


 と、小さな気合いだけが聞こえる。

 硬いものよりも、こういった柔らかく力を逃がしてしまうものの方が斬りづらい。

 左右の斬り落とし、逆袈裟、横薙ぎと次々と雑草を相手にする。

 極めつけは-



「なんじゃこりゃあ!?」



 真っ直ぐに繰り出された突き。

 剣先は草を斬り落とす事なく、縦に茎を貫通している。



「うちの従兄弟はバケモンかよ…」






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