第十一話 辺境伯
閑話的なお話。
「炎竜から文が来た。」
頭を抱え、長く深くため息を吐きながら執務机に、初老の男が肘をつく。
「なんと! 我らに手落ちでもございましたか?」
「いやそれはない。約定のエリアに入り、禁忌を犯したのは野盗どもだ。長き友誼に免じて赦してくれるそうだ。」
「友誼…? そうでございましたか。」
火竜たちの怒りに触れ様ものなら、この地など灰燼に帰す。
彼らが従える飛竜1頭の来襲だけでも、領軍の1/3を割かねばならなくなる。
だが、彼らの存在が国境を護る事になっているのも皮肉である。
彼らを幾度も自らに取り込もうとし、その度に追い返されている隣国。
なぜこちら側についているかは不明瞭だが、国王よりの勅旨もあって、絶対に離す事はならない。
「孫娘も保護してあるので心配はないともあったな。心労もあって今日は休ませるが、あやつと一緒に帰ってくるから美味いものでも用意して待っておけと、ありがたい思し召しだよ。」
「我が甥ながら、何をやっているんでしょうか、あやつは…」
「知らん。もう何が起きてもワシは驚かんぞ。」
「一応、侯爵領へも魔導通信で一報を入れておきますよ。」
「頼む。この地で何かあったら、あやつも家令も政務をほっぽり出して乗り込んできかねん。あと、強い酒をくれ。」
「ご相伴にあずかります。国にも報告だけはしておかねばなりませんな。陛下が頭を抱えるのが目に見えてますが。」
「ちっ。こっちのギルドマスターにも連絡を入れておけ。放っておけば暴れ出しかねん。」
その帰還時に、国を揺るがす特大の爆弾が落ちてくるとは思いもよらない二人であった。
次回からはまた普通の長さに戻ります。