冬に咲くひまわりの花
この世界のどこかに、太陽のように煌めく花がある。
噂を耳にした幼い頃の私は小さな村を出て、一人で世界を旅することにした。
それから気がつけば、十数年が過ぎていた。
いつしか仲間と出会い、彼らと旅路をともにする。
農作物の収穫で、人手が足りないとなれば彼らを手伝った。
鍛冶屋の依頼で坑道に潜って鉱石を掘り進んだ。
邪龍を討伐して被害に苦しむ人を救済もした。
魔王と和解して世界戦争を食い止めたのは、今では懐かしい思い出だ。
そして老人の願いを叶えるために、遠い国にいる親族に伝言を届けたりもした。
道中で出会い、それぞれの目的を果たしたはずの彼らは、その後も共に旅をする。
最後に残った私の望みを叶える。ただそのために。
雪が降っていた。
この辺りでは年中こんな感じらしい。
永遠に春が訪れないこの場所は、常に白銀の世界に覆われている。
小屋の窓から眺める景色には、雪海が月光で浮かび上がっていた。
辺り一面はただ白く。そしてただひたすらに、白かった。
そんな中、何かが眩く輝いた。
それこそまさしく太陽のように。
地上で輝くそれは、まさに暗海から昇る太陽のようであり……
その輝きは、突如として消息を絶つ。
慌てて扉を開き、肌を刺す外気を受けながら、見回りをすると言って外に出た仲間を呼び寄せる。
彼らも私に気づいたようで、持ち場を離れて私の元に集まってくる。
「なあ、なあ! 今のを見たか? あの辺りで何かが輝いた! あれこそもしかしたら、私が探す花が……」
仲間達の顔を見ると、互いに目を配り合っている。
どうやら今のを見たのは、私だけなのかも……しれない。
「き……気のせいじゃ、ないのか?」
仲間の一人が、息を切らせながら呟いた。
「そうかな……確かに今、この深夜を太陽のごとく照らす花が……」
「何言ってるんだ、そんなわけないだろ?」
「そうだ、そうだぜ。それなら俺たちの誰かが……気づいているはずだろう?」
仲間を疑うつもりはない。
どうやら私が見たのは、気のせいだったようだ。
最近こういうことが多すぎて、どうやら過敏になっているらしい。
だけどもし、もしも太陽の花が見つかったら。
私は旅を終えてしまうのだろうか。
もしかしたら私たちは、心の奥底で恐れているのかもしれなかった。