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相談屋  作者: あれれゆき
2/2

~犬も棒に当たる編~

(4)

「さて、落ち着いたところで、お話をお聞きできますか?」

話もなにも、状況は一目瞭然なのだが、本部は二人に問いかけた。

妻の顔は赤く腫れて、目を真っ赤に充血させている。

男の方は、弟にひどくやられたようで、TKO負けをしたボクサーのように顔面は腫れあがって、まぶたも腫れて目がほとんど開いていないようだった。

二人とも逃げ出すことができないようハンドタオルが1枚だけ与えられ、陰部を覆っている。

「二人同時に話されるとうるさくなりますので、一人ずつ喋ってください。

片方が話している間は、くれぐれも言葉を発しないようにお願いします。」

そういうと、まず妻の方を向いて、問いかけた。

「この状況を説明してくれるかな?」

妻は震えながら、すいません、すいませんと繰り返すばかりで会話にならず、こちらのイライラが募るばかりだった。

「なんとか言えないのか?それじゃあ、こいつとはいつからこういう関係だったんだ?」

語気を強めて問いかけると、妻は絞り出すように声を出した。

「大学生の頃から。」

なんということだろうか。大学生の頃からということは、妻と出会って交際している間もずっと裏切れらていたということだったのか。心が引き裂かれるような辛さと胃の増幅する痛みに耐えていた。

「でも、違うの。あなたのことを愛していたわ。

こんな関係は駄目だと分かっていて、やめようと何度も考えていたの。

ただ、彼から誘われるとずるずると。」

ここまで話している途中で、男の方が声を上げた。

「旦那のことなんか、愛してなんかいないって言っていたじゃないか!

愛しているのは俺の方だって。

だいたいあんたもあんただ。

あんたが出てくるずっと前から、俺らは愛し合っていたんだ。

あんたはただのATMだったん・っッ」

男の顔面に弟の右ストレートが直撃していた。

もし弟が手を出さなかったら、多分本部が殴っていただろう。


(5)

それからの展開はあっけないものだった。

妻と浮気相手であるいとこの男は、妻の両親に連れられ、妻の実家に引き上げていった。

いとこの両親も大激怒をして、妻のいとこはここでもコテンパンに殴られたとのことだった。

後日、妻の両親といとこの両親から改めて謝罪と、慰謝料の請求は遠慮なくしてくれという言葉を頂いた。

本部は、実は弟の右ストレートの直後、倒れてしまい、数日入院していたとのことだった。

ストレス性の胃炎と過労が原因とのことだ。たしかに、出張から戻ってほとんど寝ていなかったことを思い出した。

妻とは離婚をして、慰謝料も相場の倍以上の金額をそれぞれからもらうことができるようだ。

自宅は、さすがに住み続けたくはないとのことで、売却を検討しているとのことだった。


「それで相談料なんですが、これくらいでいかがでしょうか?」

と、本部は札束をふたつ取り出していった。

「こんなに良いんですか?私は大したアドバイスはしていないように思いますが。」

「いえ、相談屋さんがいなかったら、私はずっと妻に騙されてATM扱いの人生だったでしょう。

そこから抜け出せたのはあなたのアドバイスがあったからです。ぜひ受け取ってください。」

そう申し出る本部を、断ることはできなかった。

「また何かあれば、何でも相談して下さい。」


(6)

今日もテレビのワイドショーでは、熱愛発覚やら、政治家の汚職事件が取り挙げられている。

世の中はインターネットが普及して、色々な人たちと簡単につながることができるようなり、不安や困りごとも簡単に相談できる時代になったと思うのだが、私のような人間が必要とされるのだなと感慨深くなった。

また、なにかご相談があれば、いつでもなんでもご相談ください。


おわり

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