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望まれて鬼の辺境伯に嫁いだはずなのですが、愛されていないようなので別れたい  作者: 大森 樹
番外編

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そのままの君が好き③

 見た目なんて年齢と共に変わるものだ。確かに俺は彼女の容姿も素敵だと思っているし、大好きだ。でも……違う。その程度の好きではないのだ。


「例えば、君は俺が怪我をして大きな傷跡が残ったらどう?歳をとって白髪になったらどう?それに俺も太るかもしれない。君はそれだけで、俺のことが嫌いになる?」


 彼女はぷるぷると左右に首を振って、俺に勢いよく抱きついてくれた。彼女の甘い香りがして、心地がいい。


「なりません。ずっと好き」


 クリスがそう言ってくれたことに、胸がいっぱいになる。


「俺もだよ。君が痩せたって太ったってそれは些細なことだ。その変化ごと愛する」


 彼女とのことが誤解とわかり、お互いが愛し合っているとわかった以上もう我慢する必要はない。だって……もう三週間もしてない。彼女が足りなくておかしくなりそうだ。


 俺の獰猛な気持ちを隠すように、怖がらせないように優しくキスをしてそっと押し倒した。しかし彼女に触れられる喜びから……優しく出来たのは最初だけであとは激しく情熱的に全身を愛した。


「クリス、愛してる。君は……?」


「私も……」


「誤魔化さずにちゃんと言って?」


 俺は急に動きを止めて、色っぽく微笑んで彼女を見下ろした。


「愛し……てる」


 真っ赤に全身を染め、瞳が潤みとろんとしている。ああ、なんて可愛いらしいんだ。でも、ごめん……今夜の俺は少し意地悪な気分なんだ。


「誰を?」


「エル……エルを愛し……てる」


 彼女は俺を愛してる。言葉にしてもらえると、堪らないくらい興奮するし、嬉しい。


「よく言えたね……良い子だ。可愛い」


「恥ずかしい」


「ああ、可愛い……そのままの君が好きだし、愛してる。君に触れていいのは俺だけだ」


 三週間も抱けなかったことを取り返すかのように、何度も何度も彼女に『愛してる』と言わせその度に何度も何度も愛した。


 ああ、幸せで全身が蕩けそうだ。クリスの愛を疑ってごめん。もう……こんな誤解は二度としないから。だって君は俺を好きでいてくれているのがわかるから。



♢♢♢



「はい、あーん」


 俺はベッドでクリスにも甘いスイーツを食べさせている。


 ぱくっ


「んーっ、美味しいです」


 彼女の嬉しそうな顔を見て、俺も幸せな気分になる。そう……俺はこの顔が見たいのだ。


「そうか、良かった。可愛い。やはり俺は美味しいものを食べているクリスが好きだ」


 クリスの頬がぽっと染まった。そして彼女は今後食事制限はしないと約束してくれた。だがなるべく太らないために適度な運動をしていくらしい。


「また先生にダンスを習おうかしら?」


 俺はその言葉にあからさまに嫌そうな顔をしてしまった。あの先生は女性だが、パッと見るとやはり美男子に見える。クリスと並ぶと美男美女で……妬けるのだ。嫌だ……絶対に嫌だ。


 だからダンスの相手は俺が引き受けると伝えた。俺の疲れを気にしているようだったが、クリスと踊れるなんて俺にとってはご褒美だ。何の問題もない。


「それに……二人でする運動なら他にもあるから、いくらでも付き合うよ?」


「え?それは何?」


 あまりに純粋に俺のことを信じる彼女に……少し心配になる。


「やってみようか?」


 俺は下心を隠して爽やかにそう提案した。さも……君のための運動だというようなふりをして。


「はい!」


 彼女が目を輝かせながら元気よく返事をするので「くすっ」と笑ってしまった。


「君を前にすると、俺は自分が汚れた大人だなと思うよ」


「……は?何の話ですか?」


 俺は妖艶にニヤリと笑い、彼女がこれはなにか『おかしい』と思った頃にはもう遅い。


 クリスの身体をまたベッドに縫いつけ、あれよあれよという間にまたたっぷりと愛した。


 そして彼女はぐったりと俺の肩にもたれかかっている。激しくないと……運動にならないから仕方がないと自分に言い訳をする。


「ね?二人でできる運動だろ?」


「……信じられない、騙されたわ」


 彼女にジロリと睨まれるが、そんな顔も可愛いから困ったものだ。


「はは。いつでも、何回でもしようね」


 俺は彼女の頬にちゅっとキスをした。どうやら俺は浮かれているらしい。


「クリスはもちもちで気持ちいい。可愛い」


 彼女の全てが素晴らしい。誤解された『もちもち』は俺にとっては可愛いとか気持ちいいとか柔らかいという褒め言葉なのだ。



♢♢♢



 そして仲直りしてラブラブに暮らしていた数日後……急に若干怒り気味のジェフが家に来た。


「お前が連絡しないからだろ!心配でわざわざ来てやったんだ」


 そういえばすっかり忘れていた。仲直りしたら、こいつに相談していたことをすっかり忘れていたのだ。


「すまない。やはり誤解だったんだ……今はもう仲直りした」


「ちぇ、なんだ。つまらんな」


 そう悪体をつきながらも、こいつは俺を本気で心配してくれていたのだろうというのがわかるのでありがたい。


「そーいえば、さっき訓練場に寄ったらエドが魔物討伐のことで困ってたぞ?明日はお前行かないんだろ?」


「ああ。本当か?何か問題があったのか」


「さあ?行って話してきてやれよ」


「わかった」


 エドが困るなんて何かあったのか?俺はすぐに身支度を整えて、訓練場に向かう準備をした。


「クリス、ジェフと二人きりになってはいけないよ。決して気を抜かないように!」


「はい。気を抜かずに、精一杯おもてなしします」


 クリスはニコッと微笑んだ。うん……彼女とは絶妙に話が噛み合っていない。俺はオリバーやノエルにクリスのことを任せて訓練場へ急いだ。


「エド!明日のことで何か困っているのか?」


「あれ?団長、帰られたのでは?」


「ジェフが家に来て、お前が明日の討伐のことで困っていたと聞いたんだが……」


 エドはよくわからないという風に、首を傾げている。


「え?そんなこと言ってません。確かにジェフリー様とお会いしましたけど、世間話しかしてませんよ。それに明日の討伐計画はバッチリですから、団長は心配しないでください」


 エドがニコニコとそう言った。これは……ジェフにはめられた!きっとクリスと二人きりになるためにわざとこう言ったのだ。


「ああ、明日は頼む。じゃあな!」


 俺は足早に家に戻った。とっても嫌な予感がするからだ。

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