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第22話:突撃、隣のギャルクラフター

 まさか、こんなところに来るとは思ってもみなかった。

 見覚えのある遊園地。寂れた遊具に錆びついた取っ手。

 外壁もそれほど直してはいないのだろう。タイルがところどころ剥がれてたり、割れていたりしていた。

 まさに廃墟。だが、それこそが今のショータイムのクランステーションであった。


「わたくしが見ない間に、随分と寂れたのですね」

「私がいた頃からこんなだったよ。広ければいいだろって感じで」


 何も変わってない。実力主義なところとか、周りのことを毛ほども見てないベディーライトの無関心さとか。

 普通クランランキング1位のクランステーションは見栄え重視にするでしょ。

 なのにも関わらずこれだ。クランリーダーの物臭さと無関心さが出てなければ、なんだと言うのだろうか。


「昔からそういうところ嫌いだったんだよね」

「師匠……」


 今にも雨が降りそうな曇天の表情を浮かべるアステ。

 元気だけが取り柄だと言うのに、その元気がなくなったらどうなるというのさ。

 アステには笑顔でいてほしい。だから私は少し高いにある頭にぽんっと手を置く。


「大丈夫だよ、もう気にしてないし」

「すみません……」

「ううん、いいの。アステは笑ってればいいんだから」


 だからって困ったようにハの字眉の、光を当てたら今すぐにでも消え去ってしまいそうな無理やり笑顔を見せられても、な。

 アステは扱いが難しいというか、本当は内気でネガティブな人間なのかもしれない。

 これからの接し方も少し考えていかないとな。アステとはよき友達でいたいし。


「それで、ノイヤーは誰に会いに来たの?」

「もうすぐかなと。……来ました」


 コツ、コツとコンクリートの床をローファで歩いてくる少女が1人。

 見覚えがあった。星形のヘアゴムでまとめた金髪のツーサイドアップも。

 ぱっちりとした燃える太陽のような赤い瞳も。へそ出しルックに白衣を合わせたトンチキスタイルも。全部全部、私の知り合いそっくりだった。


「げっ」

「こっちが言いたいんだけど」


 彼女の名はここあ。私のショータイム時代の知り合いであり、名の知れたクラフター型のウィッチである。

 そして、その健康的に焼けた肌と派手に煌めく髪からはこういうあだ名を持ち合わせていた。


「ギャルクラフター……」

「つーことは自己紹介不要な感じ? まーいいけど」


 よくはないんだけどな。

 というか妙に不機嫌というかむすっとした表情があまり会いたくなかったというオーラをビシバシと投げかけてくる。私も会いたくなかったけど、そっちもか。


「ヤーさん、どゆつもり?」

「つもりと言われても、わたくしはクラウンレースのデータが欲しかっただけですよ」

「……性格悪いなー」


 どこから持ち出したのか。懐からUSBメモリを取り出す。

 おそらくあれがクラウンレースのいろんなデータが詰まっているのであろう。喉から手が出るような代物。それを誰が手にしているかはさておくとして。


「あんさ。カナカナはまずアタシに言わんくちゃいけないこと、ないん?」

「なんでそうなるのさ」

「おおかた事情は聞いてっけど、こっちとしては突然クランやめられて酷い目に遭ったんよ?」


 ここあが言うには、私という部隊長がやめたことでかなりの人事異動があったらしい。

 誰が私の穴埋めをするか、とかそういうの。実際私は誰でもいいと思ってたけども。

 そこで抜擢されたのがここあ。ギャルクラフターという唯一無二のあだ名を持った彼女が表に立つのはある種自然なことで。きっとそれについての謝罪なのだろう。

 でもそれに対する回答は、もうずいぶん前から決めていた。


「私は謝る気ないよ。ここをやめたことに後悔とか負い目とかないし」

「ッ! カナカナ!」

「大変そうだなって思うけど、元々はべディーライトのせいだし」


 最初は私が悪いのかなとも思っていた。

 だって半ば強引にイベント周回やらランキング戦。望まぬ部隊長なんかもやっていた。

 私がやめたらきっと立ち行かなくなってしまうんじゃないかって。それこそ私のショータイムという居場所が本当になくなってしまうんじゃないかって。

 でも違うんだよ。違っていたんだよ。


「べディーライトの器が小さいのが原因!」


 きっぱり言おう。私がべディーライトの話に、クランリーダーの方針についていく必要なんてなかった。

 だってそうでしょ、クランの在り方を変えて、創設者全員を追い出してまでやることがクランランキング1位って、そんなの割りに合ってないし。


「まー、そりゃそーなんだけどさー」

「そこ認めちゃうんですか?!」


 意外や意外。ここあはその意見に賛同して、頬が引きつった苦笑いを口にする。


「ぶっちゃけべディってアタシらのこと全然見てくんないし。いっつも見てんの、キョウコちゃんぐらいだし」

「うんそれ。1位に執着するのはいいけどね」

「アタシはそんな姿が面白いって思ったからついていってるんだけどね」


 そう言って私に持っていたUSBを手渡してくる。

 意外な行動に釣られて、思わずUSBを受け取ってしまった。

 ハッとなって、ここあの顔を見てみれば、それは人を試すような、私という人間を見定めるようにジットリと半開きの真紅が私を覗いていた。


「アタシは本気を見せないヤツは嫌いだから」


 私にはその一言が全てだった。


 ――アンタは、今ホンキなんだよね?


 少なくともショータイムの時期は本気だったはず。

 ここあは、今もそうなのか試している。レースで手加減するようなら、私のことを一生許さないと。贖罪の機会を与える如く。


 審判の瞳。その挑戦状を、私は手に取る。


「誠意は見せるよ」

「ん。なら、レースで1位、取ってよ」

「もちろん」


 だから私も精一杯答えよう。不敵に無敵だと笑って。


「んじゃ! アタシは見てっからねー」


 白衣のポケットに手を突っ込みながら、もう片方の手で手の甲を見せて消える。

 こりゃ、相当頑張んないといけなさそうかも。


「アステ、頑張ろ!」

「はい……。はい! 師匠のために!」

「ん、ありがと」


 決意は固めた。あとは作戦を固めて、練習で地盤を固めて。

 そして出場の後、1位を奪い取る。それが、私のショータイムではなく、彼女への誠意だと拳を握って。

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