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ブラッククランから追放されたので、弟子とのんびり配信者始めます!  作者: 二葉ベス
第1章:ブラッククラン、追放されました。
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第1話:最強クラン、追放されて3か月

VRMMO追放成り上がり百合です。

百合を強調していきます。

『こんなクラン、やめてやる!!』


 そんな退社願ならぬ、退クラン願を叩きつけて今日で3ヶ月ほど。

 真っ暗な空間で視界いっぱいに散りばめられた光の点に、私は何を思ったのか手を伸ばしてみた。

 ただ1つの音が起きることもなく、バランスを崩してその場で回転する。

 ここはそういう場所だったのを思い出す。私は目を閉じて、ただ静寂だけが支配する宇宙で、1人存在を揺らす。


「勢いで辞めたがいいものの、はぁ……」


 何故宇宙空間で1人佇んでいるのか。

 そもそもどうして空気のない場所で呼吸できるのか。

 そんなのは決まっている。ここがゲームだからだ。


 ――マジックラウン・オンライン


 魔の王を決めよう。という触れ込みの元、ランキング戦を重要視した今かなり熱いオンラインゲームである。

 そんなマジックラウン・オンライン、縮めてマジクラでは日々多くのプレイヤーがウィッチという魔法使いとなり、個人ランキング1位という目標へとひた走っていた。

 その内の1人ではあるものの、もうランキングなんて知らない、と言わんばかりに宙に浮くのが私、ウィッチネーム『カナタ』というわけ。


「まぁそれはどうでもいいか。それよりやっぱりおかしいよ。私、結構キャラ固めてるはずなのに」


 昔というのは振り返る必要がないから昔なのである。

 過去に何があったかはさておきとして、今の状態こそが深刻なのだから、過去ちゃんにかまっている暇はない。

 今は今の、配信者としてのカナタなのだから。


「配信者 伸びる方法 検索」


 私はもう過去の自分を捨てた。

 なので今の私は配信者のカナタ。バリバリの武闘派ではなく、キャルキャルの可憐派。そう、アイドルだ!


「うん。全部やってるってのに。はぁ……」


 アイドルっていいよね。こう、キラキラと夢を煌めかせて。

 昔の私に夢なんてなかったけど、今は登録者数10万人を目指して日々活動中だ。

 まぁ、それを3125で割った数字が、今の登録者数なんだけど。


 何よ、活動3ヶ月目で32人って。他のみんなはもっと100人とか平気で行ってるのに。

 おかしい。ガチガチにキャラを固めて、見た目だってフリフリのアイドル衣装で決めて、胸だってバインバインに盛ったのに。

 おかげで移動する時にちょっとバランスを崩しそうになるけど。


 だから落ち込みだってする。

 だから宇宙で揺蕩っている。

 だから……。もういいや、考えるのはよそう。

 ウィンドウをフリックして、目の前から消せばまたもや瞬く星さんとこんにちは。


「やめなかった方が……。いやいや、あそこに残る理由ないし」


 宇宙っていうのは良いところだ。

 とにかく邪魔が入ることがない。

 思考を邪魔されず、ただただ自分に没頭できる。


 元々は友達と一緒に遊びたいから入ったはずなのに、横から現れたランキング主義者のせいでクランの方針が変わっちゃって。

 今はただのランカー集団。実際クラン全体の順位は1位と、トップオブトップクランなのは間違いない。

 けれど、あそこの空気感が私は好きになれなかった。


 目を閉じて、ただただ無重力に身を任せる。

 ふわふわと、どこへ行くかもわからない空間がまるで自分と同じかのように思えた。

 行く宛もなく、戻るべき場所もなく、ただ無を彷徨うだけ。

 それは、少しだけ心地よくもあったが、たったそれだけだ。未来の道標は見えない。


「いっそやめればよかったかな」


 クランを? それはとっくに。

 私が言っているのはゲームを、だ。

 世の中にはたくさんのVRMMOが存在する。

 1つだけではない。神ゲーからクソゲー。妙なゲームに凝ったゲーム。戦いなんかとは無縁なゲームもある。

 楽しみ方は無限大。ゲームなのだから、ここに固執する理由はない。


「でもなぁ……」


 ちょっと課金しちゃったし。

 学生の身分で課金は結構大きな問題。

 もったいない精神から来るそれは、私が惰性で続けるには十分な理由となっていた。


 幼馴染も今どこでやっているかわからない。

 戻るべき場所は自分から退職願を叩きつけ、果ては登録者32人。

 繋がりがその程度なら、私がこのゲームをやる意味は本当に惰性でしかない。


 繋がりたい。そんなことをポツリと声に吐き出す。

 無意味なことだ。でも願わざるを得ない。

 星に願いを。ならばこの祈りを叶えてはくれないだろうか?

 神様がいるなら、私にもう1人の時間を過ごさせないでほしい。


 目を閉じ、祈るように指を合わせる。

 幾拍かの願い。無駄だと分かっていても、縋りたくなる気持ちをどう表現すればよいのだろう。

 バカみたい。そう思って目を開ければ、そこには閃光が訪れていた。


「ど、退いてくださーい!」

「え?」


 銀色の流星が星にまたがり……。

 いや、ほうきにまたがって流れてくる。もちろん私の目の前に。

 さすがの私もとっさのことに身動きがとれない状態で、その流れ星を避けることなどできないわけで。


 ドカン!


 勢いよく衝突した2つの魔法使いたちのHPはみるみる内に削れていく。

 閃光の中、私は。いや、私たちは察してしまった。あ、死んだ、と。


【カナタのHPが0になりました】

【アステのHPが0になりました】

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