討伐隊
魔王が代わる…そんな情報が人間達の国にもあっという間に広がった。
そんな中一人の男がそのウワサを耳にする。
「魔王…?」
隣で噂話をしてる人に耳を傾ける…
「おう!あんちゃん知らないのか?何百年ぶりに魔王が代わるらしいんだよ…」
「そうか…」
あまり興味なさげに答えると…
「今度の魔王は女らしいぜ!これなら討伐も夢じゃないかもな!」
そう言って紙を見せようとするが…男は見る気がない。
「なんでも今度国で魔王討伐隊を募集するらしい」
「ふーん…」
男が反応すると何の気なしに紙をチラッと見る、そしてじっと紙を見つめると…驚いた顔をしてバッと紙をひったくった。
「あんちゃん!何すんだよ」
返して貰おうと男が紙に手を伸ばすが…
「コレで売ってくれ…」
そう言ってジャラジャラと金をテーブルに撒き散らした。
「こ、こんなに?」
話しかけた男が金額に困惑すると…男は紙持ってさっさと店を出て行ってしまった。
奪った紙には新しい魔王が描かれている。
そしてその絵をじっと見つめると…
「見つけた…」
男は絵をグシャリと握りしめた。
◆
ミキィが魔王になってからも別段いつもと変わる事は無かった…面倒事は周りの優秀な部下達がやってくれる。
生まれた時から知っている事もあり、皆にとってもミキィは可愛い自分の子供のようなものだった…
周りの気遣いもあり…ミキィはいつも通りのなんて事時を過ごしていた…
そんな平和な魔族の国とは違い、人間達の国は魔王討伐隊を結成していた。
「魔王に挑む勇気ある若者達!君達の活躍を期待している!魔王を討伐して帰ってきた暁にはなんでも褒美を取らせよう!今日は心ゆくまで楽しんで明日に備えてくれ!」
国王の言葉に討伐隊の面々が歓喜する。
「なんでもだってよ!」
「俺は金だな」
「俺は女かなぁ…」
「そういや魔王も女なんだよな、生きて捕らえて慰み者にするのもいいな!」
ギャハハと下品に笑っていると…
「リオン様…」
国王の娘が討伐隊の方に向かって歩いてきて話しかけてくる。
リオンは名前を呼ばれてチラッと顔を向けると…王女はそっと視線を逸らして顔を赤らめた。
「いよいよ…明日ですね…」
王女がチラッチラッと視線を飛ばしてくる。
「もし…今夜お暇でしたら…」
「いえ、鍛錬がありますから…」
リオンは王女の言葉を遮ると賑わう会場から出ていってしまった。
「なんだあいつ?」
「あいつだろ、今回の討伐隊を決めるテストでぶっちぎりの一位だったのって…」
「まじかよ…」
「勇者の生まれ変わりなんじゃ無いかって噂だけど…本人は否定してるらしいぞ」
コソコソと噂話が広がると…
「王女様、あんなやつほっといて俺たちと遊びませんか?」
酔っ払った男達が王女に話しかけた。
「チッ…低俗共が…」
「えー?なんですか?」
王女の呟きが聞き取れなかった男達は臭い息を吐きながら王女に近づいた。
「なんでもありません…そうですね…では御相手お願い出来ますか?」
王女はにっこりと男に笑いかけた。
王女に微笑まれ、ポーっとなる男は王女に連れられ部屋に消えていった。
いい匂いにする部屋に入るなりガバッと袋を頭に被せられる。
「フガッ!グゥフ…ゔゔ…」
横に倒され足蹴にされると…
「クソ!リオンのあの態度!ムカつく!なんであいつは靡かないんだ!」
うずくまる芋虫のように蠢く男を近くにあった棒で殴り続けた。
「顔がいいからって調子にのりやがって…どうにかしてあいつをひざまづかせたい…」
今度は紐で男の首を閉めると…ぎゅうっと徐々に力を込める。
「あの強さがあれば…私の伴侶も考えてやるのに!」
思わず力が入りすぎると…抵抗していた男の手がダランと落ちた…
「あっ…また壊れちゃった…これだから弱い男は…」
王女は汚い物を垂れ流す者を興味なさげに
「ちょっとー誰かいないの?」
「はい…」
一人の従者が入ってくると…
「これ、片付けといて」
「…かしこまりました…」
従者は壊れた者をだき抱えると部屋を出ていった…
「魔王討伐が終われば鍛える必要も無くなるはず…そうすれば…ふふふ…」
王女は汚れた身を洗い流しに浴室へと向かった…