ツン系女子とブン系男子
「つ……月が綺麗ですね」
プリンが食べたくなって、ふらっとやってきたコンビニに居た佑に声をかけたら何故か家に送られている、その最中だった。
私――松田静――にそう言った佑は立ち止まって、半月ともなんとも言えない月を見上げていた。
イケメンとはほど遠い顔。女子の私とほとんど変わらない身長。別に凄く頭が良いわけでもないし運動は苦手。
冴えない男子。それ以上でも以下でもない存在。
高校生になって初めての定期テストで散々な結果だった私は、勉強を教えてもらおうと思って近づいただけだった。
「それって、夏目何とかさんのやつ?」
「う……うん」
利用しようと思っただけ。
「告白のつもり?」
「……うん」
なのに……。
「はぁ……もっとはっきり言えないの?」
「ごめん」
イケメンじゃないけど、優しそうな顔だと思った。
「だから、オタとかモブとかぼっちって言われるのよ」
「最近はぼっちとは言われません」
この身長は、静さんと同じ景色が見たいから――なんて顔を赤くして笑いながら言っていた。たぶん私の顔も赤くなっていた。
「それ私のおかげだから」
「うん」
勉強を教えるのがとても上手かった。最初に頼んだ時から教え方とか色々勉強したらしい。
「よく話すようになって二ヶ月とちょっと?」
「うん」
運動は相変わらずだけど、少し前から筋トレを始めたらしい。私がもっと鍛えろって言ったからかもしれない。
「なんかずっと一緒に居る気がする」
「うん」
だって私が、連れ回してるし。
「てゆーかさぁ……」
「うん」
無理やり勉強を教えてもらおうとした私のためにわざわざ勉強したり、自分の家はこっちじゃないのに家に送ってくれたり、これでも男子だから――って言って荷物を持ってくれたり。今日のはプリンしか入ってないけど。
佑はすごく優しくて一緒にいてすごく楽しい。だから私は……。
「結構前から、月は綺麗なんだけど?」
文系の君にこの言葉を贈る。