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第85.5話 アボット候爵との会談の段取り(セドリック側)

 何の脈略も無く、いきなりクリフォードから執務室に呼び出された。

 身分的には俺の方が上なので、このくそ忙しい中呼び出されるいわれは無い。

 無いのだけど、役職はあっちの方が上だ。

 俺はノックもせずに、部屋へ入って行った。


「何の用だ? 俺、忙しいんだけど」

 そんな俺を、クリフォードは一瞥して何やら書類を整え封筒に入れている。

「リナ・ポートフェンの事なのだけどね」

 リナ? 

 その名前を訊いた途端、俺は少し警戒をした。

「何の話だ?」


「話す前に確認したいのだが。君は、リナの事好きか?」

「はぁ?」

 何言ってんだこいつ。

 人の恋愛事情なんか、どうでも良いだろう。

「親父……アボット侯爵は今、クランベリー公爵に出し抜かれたせいで、たいそうご立腹なんだよ」

 溜息を付きながら、クリフォードは言った。


 ああ、なるほど……。そういう事か。

 あの時の俺は、自分の感情に手一杯で、リナがアボット侯爵との会談を頼んでいたときに、介入出来なかったからな。

 今さら、どうしようもない。


「リナの交渉の戦略は、クランベリー公爵には有効でもうちの親父には効かない。さっさと不敬罪でも何でも適用して、取り込んでしまうだろう。下手に抵抗したら、国王の書簡持っていても、国王代理という立場でも、関係無く現場処刑してしまうだろうしね。あの人は、現国王のことを認めていないから」

 クリフォードが、なぜ自分にこの話をしているのか、真意を掴み損ねている。

 リナの命乞いを自分にしろというのか……それとも……。


「それで、セドリックはリナのこと好きなのかな?」

 俺は、再度の問いに警戒して答えれなかった。

「ああ、リナの方はわかりやすい。多分も何も本当にこの間、王宮の廊下で君に言った事が本音なんだろうね。アラン王子とクランベリー公爵との密約も気になることだし」

「親父とアランの密約?」

「ああ、知らなかったか。かなり厳重に人払いされたからね。私も、漏れ聞いた話程度だが。リナ・ポートフェンの所有権の話……だろう? まぁ、そんなこんなで、今とても危ないのだがね。うちに近付くの」

 クリフォードは、書類の入った封筒をちらつかせる。


「だけど、間の悪いことに会談の段取りが付いた後に、その情報が入ったんだよ」

 俺は、即座に態度を改めた。

「俺は、リナのこと好きですよ。アボット伯爵にはバレていたと、思っていましたが……」

 自分の前で跪いたアルフレッドの気持ちが分かる。確かに、プライドなんか邪魔なだけだ。

 俺は、リナを助けてもらえるようクリフォードの前で跪いた。

「お願いします。リナ・ポートフェンを守って下さい。俺の身と引き替えで構いません」

 クリフォードは、一瞬驚いたような表情をして、ため息を吐いている。


「立ちなさい。セドリック・クランベリー伯爵」

 命令に従い、俺は素直に立った。

「今の願いは聞かなかったことにするよ。自分で守ったらいい」

「は?」

「なんで、親父との会談の交渉に時間がかかったと思っているんだ。ほら、君の分の書類。リナには、親父からの条件って事にするんだから、口裏合わせろよ」

「ありがとうございます。アボット伯爵」

 俺は、素直な気持ちで礼を言ったのに、否定の言葉が返ってくる。

「今すぐやめてくれ。気持ち悪い」

 なるほど、クリフォードもリナの味方なんだな。

 俺は、会談の準備をすべく足早に執務室を後にした。

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