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第85話 レイモンド側 84話の後 リナ達が離れたその後

 本当にあの女はろくな事しないな。

 兄とリナが完全に行ってしまったのを確認してフイリッシアに気遣う言葉をかける。


「大丈夫でしたか? 王女殿下」

 うっかり、抱き込んだままのフイリッシアをゆっくり離す。

 まだ、僕の腕にしがみついたままだ。

「もう大丈夫ですから」

 僕から離れて欲しくて安心させる言葉を言う。このままでは、仲睦まじいと思われてしまうから。


 フイリッシアは、泣きそうな顔で僕を見てた。そして

「迷惑なら、レイモンド様から手をふりほどいて下さい」

 と言って、下を向く。

 それが出来るくらいなら、とっくに……。と言うか、さっきも抱き込んでいない。


 本当に、なんなんだあのリナ・ポートフェンという奴は。

 僕が、なんのために数年かけて愛情のない政略結婚の婚約者を演じてきたと思ってるんだ。

「王女殿下。今、僕の父は王太子殿下の暗殺を企んでます。成功すれば、あるいは未遂でも、一族郎党処刑されるかも知れません」


 まだ、子どものフイリッシアにこんなこと聞かせるはずじゃ、なかったのに。

「そんなことに、貴女が巻き込まれる事はない。離れて下さい」

 所詮は親父が組んだ政略結婚だ。好きで一緒にいたわけじゃなければ、何も知らないとの言い訳は立つ。


 フイリッシアは更にギュッと僕の腕を抱きしめた。

「王女殿下。僕は貴女を巻き込みたくない。不幸にしたくないんだ」

 本音で言った。貴女を処刑台まで連れて行きたくない。

「今以上の不幸なんてありませんわ」

 え?

「貴方の側にいられない以上の不幸なんて、私は知らない」

 フイリッシアはもう僕の腕にしがみついて離れない方針らしい。


 完敗だ。僕は覚悟を決めた。

 しがみついているフイリッシアの手をやんわり離す。

 フイリッシアの瞳に絶望の色が見えた。

 僕はそのままフイリッシアの前に跪いて、手の甲にキスをする。

 この、愛しい人を守る覚悟を決めて。


「フイリッシア。愛してます。僕と一緒に同じ道を歩いて頂けますか?」

 まっすぐ、僕を見る瞳を見つめ返す。

「僕は、貴女を幸せにする努力をおしまないと誓う。だけど、結果的に誰よりも不幸にしてしまうかもしれない。それでも、もう僕からこの手を離すことは出来無いんだ」

 だから、今なら間に合うから、貴女から手を離して……。

「レイモンド様といられるのなら、どこでも……。どこまでも、ついていきますわ」

 涙の溜まった瞳でフイリッシアが笑うから。

 僕はもう何も言えず、抱きしめるしかなかった。

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