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第84話 近衛騎士見習いリナ お茶会の婚約者同士の散策?

 お茶の時間も終わってお庭の散策をして、お互いの近況報告。

 まぁ、一般的にはお互いの距離を縮めたり、睦言になったりの時間なのだけど……。


 普段この二人がどう過ごしてるのか知らないけど、この時間ばかりは、護衛も遠巻きにしている……はずなんだけどなぁ。

 なんで、私の後ろに隠れるかなぁ~、フイリッシアは。

「フイリッシア殿下?」

 声をかけると、背中にギュッとしがみつかれた。

 レイモンドは私を睨み付けてる。その後ろに、サイラスが面白いものを見るような目で立ってるけど……。


 ちょっと、仕事離れても良いかなぁ。

 うちの上司は、遠くにいるので、サイラスに許可取るしかないか。

「団長。ちょっと仕事から離れて良いですか?」

「許可取る相手が違うんじゃないか? それに今日は、サイラスとしてきてるんだぜ」

「へ~。仕事サボってるんですね。サイラスさま?」

 言いつけますよ、誰にとは言いませんが。


「許可する」

「ありがとうございます」

 サイラスに礼をして、さっきから、私を睨み付けてるレイモンドに向き合った。

「レイモンド様。私を睨み付けるくらいフイリッシア殿下が大切なら、なんで態度でお示しにならないのです」

「別に……睨んでなど」

 ふ~ん。それじゃ~。

 ちゃんと抵抗して下さいよ、フイリッシア殿下。でないとシャレにならないから。


 私は、後ろに隠れてるフイリッシアの方に振り向く。

 背中に張り付いた手をほぐすように手に取り、手の甲にキスを落として。そのまま、口にキスをしようとした。

 いや、女同士なんだけどね。


 フイリッシアが手を突っぱねたのと、レイモンドがフイリッシアを抱き込んだのが同時だった。

「何をする。貴様」

 私の前にはサイラスが立っていた。やっぱり、庇ってくれるつもりで、側にいたんだ。

 サイラスが溜息をつく。


「やり過ぎだ。リナ嬢」

「時間なかったもので」

「それで?」

「政略結婚でもそうでなくても、フイリッシア様を守る気が無いなら、離れて貰うつもりでした。まぁ、ムカついてたのもありますが」

「抵抗がなかったらどうするつもりだったんだ」

「女性同士のキスなんてカウントしないでしょう? 普通」

 と言って、肩をすくめてみせる。 

 普通なのか? って顔されたけど……。


「なあ、この問題。こっちで引き取って良いか?」

「どうぞ。こっちは守るつもりがあるかどうかだけ、確認したかったので。レイモンド様、しっかりして下さいよ」

 レイモンドは、フイリッシアを抱き込んだまま憮然としてる。


「では、私は仕事に戻ります」

 私は、本来の持ち場に戻る。サイラスが付いてきてるけど。

「なんですか?」

「いや、弟の睦言に付き合う気が無いだけだ」

 そりゃそうだ。セドリックや宰相が変なこと言うから、意識しちまったい。


「それで、俺はオールストンから何を謝られたんだ?」

 私は本来言われていた持ち場に着くと、その横でサイラスが訊いてきた。

「え? それ訊きます?」

「リナ嬢が制したからあの場で訊かなかったんだ。言う義務があるだろう?」

「クランベリー公爵家当主から、正式な抗議文出てるから」

 噂には……ならないか……お互いデメリットにしかならない。

「抗議文? 何があった?」


「あくまでも、第三者目線からなんですが。アラン王子殿下から、命令されて、私室に連れ込まれました」

「それは……また。冷静に言ってるところを見ると、何も無かったんだよな。それで、なんでクランベリー公爵家から抗議文が出るんだ? リナ嬢を育てるにしても、関係無いだろう」

 そりゃね。例え何かあっても、仕事には関係無いからね。


「セドリック様の婚約者なんですよ、私」

 何でも無いことのように、しれっと言った。

「ふ~ん。それで抗議文か、なるほどねぇ」

 サイラスは、何を考えてるか分からない顔になった。


「あの、団長。質問して良いですか?」

「部下としてなら良いぞ」

「この場合の抗議文ってそんなに重要なんですか?」

「俺に訊くか? それ」

「ごめんなさい」

「ったく、セドリックもちゃんと教えれば良いものを……。あのなぁ、この場合、王族から私室に連れて行かれるって事は、事実上夜伽命令だ。その後、その王族がそいつを所有するつもりが無ければ、交渉次第では他の王族や家臣に下賜されることもあるって事だ。クランベリー公爵家当主からの抗議文は、お前の所有権の主張だよ。夜伽の事実はこの場合どうでも良いからな」

 そこまで言って、サイラスは私をチラッと見る。

「ーで、アラン王子の私室に他に誰かいたんじゃないか? アラン王子の策じゃないろう、どう考えても」

 どうしよう、藪突いちゃった。


「ごめんなさい。言えないです」

 ぺこんと頭を下げる。

「部下として訊いたんだったな。仕事しな、じゃな」

 私の頭をポンポンって叩いて、サイラスは行ってしまった。

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