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第70話 剣の演習場見学 

 宰相の執務室で睡眠薬を飲んで、予想通り3日3晩寝込んだので、気分もすっきり爽快だった。


 とりあえず訓練場の階段みたいなところに座り込んで皆が訓練する様子を見学している。まだ足はあまり動かさない方が良いらしい。

 こうしてみてると結構激しくて、細かい負傷だったら気にせず皆訓練に励んでる。


 今日は第5部隊と第6部隊の訓練日なのでセドリックもその中にいる。

 私は、訓練しか参加してないが、当然、部隊ごとに日常の任務があるので日替わりで違う部隊が訓練に来てる。

 なんか、建物の方向から1人出てきた。訓練してる部隊の人じゃ無いと思うけど……。


 あっ、この前私が足挫いたときの……。

 訓練の時には余裕なくて見てなかったけど。

 騎士団の人間にしては、少し長めの濃い茶色の髪。

 体格は、デカいよね、結構。太ってるんじゃなくて、ワイルドな感じだ。


「よう、出てきたんだな。足は大丈夫? 初日、二日目は寝られないほど痛かったんじゃない?」

 そう言いながら、横に座ってきた。だから、名前なんだっけ?

「宰相様から、一服盛られたので寝てました」

「なんだそりゃ。まぁ、寝てられたんなら、それが良いもんな」

 宰相があんなこと言い出したのも、そのためだったんだものね。


「先日は、すみませんでした。私の所為で怒られてしまって、えっと……」

「そういえば、ちゃんと名乗ってなかったな。俺フィル・レドモンドっていうんだ。フィルでいいよ」

「フィル様」

「謝るのはこっちの方。悪かったな気付かなくて、マメつぶれてても平気な顔してる時点で、警戒しときゃよかった」

「いいえ。フィル様は周りを見ながら、私が不用意な怪我しないように庇ってましでしょう。手加減もされてましたし。だいたい私、隠してましたから。気付かなくても、仕方ありません」


「リナ嬢……だっけ。あんたも良く見てるな」

「今日、ここで他の方々の訓練見てて気付いたんです」

「あんた、王太子派?」

 おや、唐突。派閥の話?

「うちの家は、中立だったと思います」

「ふ~ん。俺、団長の子飼いなんだ」

「そうなんですか?」

「隊の所属違うのに、あんたの世話しろって言われたから、何かあるのかと思ったんだけど」


「それは、私が聞いても良い話なのですか?」

「良いんじゃない?俺が団長の子飼いって事は隠されてないし、リナ嬢の肩書きも皆知ってるよ。司令官見習い。その歳でそんな肩書きもらえるって事は、将来の参謀。次代王室の側近候補だろ?」

 ああ、それで王太子派か訊いてきたのか。


「側近候補だなんて、恐れ多いですよね」

 っていうか、「どうしてそうなった」って感じなんだけど。

「去年のさぁ。リネハン伯事件の時。敵の兵士が沢山いる中、2階からエイリーン様を無傷で助け出したのって、リナ嬢だろ?」

「ええ。そうですけど」

「あの現場にいた騎士たちは、皆あんたのこと認めてるから。女の子2人で、兵士に囲まれて逃げ出せるってどんなんだよって。俺らでも難しいかも知れないこと平気でやってのけるんだもんな。認めない方がおかしい」

 平気……じゃなかったけど。まぁ、そう思ってくれるのならそれで良いか。


「だからさ。リナ嬢が思っているほど状況は悪くないよ」

「そうだと良いんですけどね」

 親切に教えてくれたか。私が、騎士団に居づらいと思わないように。

 どこに行っても子ども扱いだな。まぁ、子どものような振る舞いしてるけど。

「あっ、そうそうこれ。口開けてみ」

 素直に口開けたら、緑色の丸い物体を放り込んできた。

 デカい飴って思ったら、甘みのある水分が口いっぱいに広がる。

「これ、体温で溶けるんだ。戦場での水分補給の1つ。知らないだろ? 戦いの合間に、口に放り込むんだよ」

「へぇ~」

 面白いものがあるなぁ、一年中暑くならないこの国ならではかも。


「おい、フィル。なんでお前がここにいるんだよ。今日は第8部隊は通常勤務のはずだろ?」

 いつの間にかセドリックがやってきてた。

「休憩中、ッス」

「んな訳ないだろう。さっさと持ち場に戻れ」

 シッシッって感じで追い払う。

「はいはい。男の嫉妬は醜いッスよ。じゃね、リナ嬢」

「あっ、はい。お疲れ様です」

 フィルが、いなくなった後にセドリックが座る。

 今まで訓練してたからか、まだ身体に残ってる熱気がこっちまで伝わってくる。


「お前なぁ。本当に警戒心持てよ。毒だったらどうするんだ。あいつ、サイラス・ホールデンの子飼いだぜ」

「本人もそう名乗ってましたよ。って言うか、今私を毒殺してもメリット無いでしょう。誘拐ならまだしも」

「殺すんじゃ、無くって……。まぁ、いいか。分からなくても」

 気になるじゃないか。最後まで言ってよ。


「なんですか?」

「いいって。それより何色だった?」

「緑ですけど?」

「鎮痛作用か……。まぁ、良心的だな」

「えっと、単なる水分補給じゃないって事ですか?」

「水色は、単なる水分補給用だな。赤とかピンクとか、絶対飲むなよ」

「なんとなく、分かった」

「逆にそれで察せられる、リナちゃんが分からないんだけど?」


 それはね。中身が喪女ってか、腐女子だからだよ。

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