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第61話 クランベリー公爵邸のベリーベリーケーキ

 クランベリー公爵邸。

 今日は待ちに待った、セドリックのお父さんとの会談。

 やっぱりあると思ったよ。『シャングリア』しかもこれは……。


「いや~リナ嬢にお会いできるかと思ったら、つい奮発してしまいましてな。息子から好みを聞いて用意しましたよ」

 これは、上位貴族の令嬢をもってしてもなかなかお目にかかれないという、()()幻とまで言わしめたベリーベリーケーキ。

 ここに来た目的が吹っ飛んでしまうほどの存在感。


「なに。時間はゆっくりあります。話の前にどうぞ召し上がってください」

「す……すみません。では、失礼して……」

 震える手で……ってケーキに対して緊張……するよねぇ、やっぱり。一口食べた。

 口の中でスーととろける甘味。それでいラズベリーやイチゴの酸味が後を引いて……。おいひい。


 完全に目的を忘れた。

 私は、今日()()を食べに()()に来たんだ。


「そんなにおいしいですかな。では、私も……おお、これは絶品ですな」

 クランベリー公も絶賛。

 だけど、当然護衛として付いてきたセドリックの分は無いわけで。食べさせたい、是非。

「ね、ね。セドリック様も食べてみてくださいよ」

 フォークで一口分すくって後ろで立ってるセドリックを振り返る。

 はぁ? って顔されたけど、かがんでパクッと食べてくれた。


「おお、未来の夫にも……って、微笑ましい。いや、若いもんにあてられましたな」

「お前なぁ~。俺は手伝わないって言っただろう?」

 かがんだまま、小声で文句言われた。

 いや、別に他意は無かったんだけど……。


「こうやって来て頂けたと言うことは、この間の縁談の話。考えてみてもいいという事ですかな」

 クランベリー公は、始終にこやかだ。この前と同じ、子どもに対する笑顔。

 舐められまくってますね、私。まぁ、仕方ない。ここからだ。

 私もなるべく柔和に、にこやかに答える。

「それはわたくしの一存では決められませんわ。父の許可がいりますもの」

「それはそうですな。良いですよ、私の方から連絡を取って許可して頂きましょう」

 父に命令する気か……、父に先に話通しとかないと不味いな。


「でも、しがない子爵令嬢でしかないわたくしが、どうしてセドリック様のお相手に選ばれたのか不思議でならないのですけど……」

 チラッとセドリックを見たらそっぽ向かれた。そりゃ、そっか。

「身分など……貴女は私が見込んだ女性ですよ」

 見込んだ……ねぇ。私は、笑顔の裏でため息を吐く。

「あら。わたくしへの評価は、せいぜい何するか分からない危険な子どもってところだと思ってましたのに」


 クランベリー公はスッと目を細めた、先程までの人のいい笑顔は無い。

「初対面同然の方に、誰の許可も無く内部の事情をお話ししてしまうなんて、とんでもないことでしょう?」

 首を傾かしげ、あざと可愛くしてみせる。幼く見える美少女だ。煽るには充分?

「ほう」

 わかってたけど、一瞬で警戒された。

 威圧すごいよ。ってか、剣持って無くても十分怖いな、このおっさん。

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