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第51話 アル兄様の説得

 マリアが、私の自宅屋敷に戻ってから数日後、ライラが侍女だという生活にも慣れてきた。 

 そろそろ、アル兄様ともお話をしなければならない。

 そう思って、私は兄の居る男子寮の部屋へ向かった。

 兄と2人きりで話させて欲しいと言っても、セドリックは護衛だからと言って付いて来ている。


「で、2人して何の用?」

 アル兄様、セドリックを警戒している。

「話があるのはリナ様だ。私は純粋に任務としてここに居る」

 わざと……だ。何考えてるか分からないけど、わざと仕事モードになって、余計な警戒を誘ってる。

 たいがい意地悪だなぁ、お兄ちゃん属性どこ行った。


「任務……ね。それで、何の用だい? リナ」

「もうすぐ社交シーズンが終わってお父様も領地に戻りますよね。その時にアル兄様も、お父様と一緒に領地に戻って欲しいんです」

 我ながら苦しい交渉だよ。私がアル兄様なら絶対納得しない。学園もあるし。


「無理だよ。学園は卒業までに後三か月もあるし。というか、父上も戻るかどうか怪しいんじゃない?」

「卒業は、今の単位で充分だと思いますが……って、お父様と話したんですか?」

 アル兄様どこまで調べたんだろう。絶対父様の情報網使ってるよね。


「僕を遠ざけてどうするの? 協力するって言ったよね。それともそんな中途半端な覚悟でいったと思ってるの?」

「そんなこと思ってません。ただ、アル兄様の立場でしたら一緒にいることも難しい事があります」

「子爵の息子から子爵になっても……か?」

 この国の貴族の子息は、早ければ学園卒業後遅くとも20才になれば自動的に爵位をもてる。

 伯爵以上なら、伯爵。うちは子爵なので子爵を名乗れる。

 ルイス兄も子爵として領地を護ってる。


「子爵という地位だけだったら、王宮内の立ち入れる場所にも制限があるからな。それくらいアルフレッドも知ってるだろう」

「セドリック様は任務で私のそばにいるんですよね」

 いらんこと言うなら追い出すよ。

「あ……はい。失礼しました。リナ様」

 私が怒ったように言うと、セドリックはピシッと背筋を伸ばして謝罪した。


 そんな、セドリックに対し兄は跪いて望みを言う。

「セドリック・クランベリー伯。私に王宮内で動けるだけの地位を下さい」

 しまった。セドリックは、これを狙ってたのか。


 私がまずいと思っている間にも、セドリックは私の兄を冷めた目で見下ろす。

「それって、俺の子飼いになるって事?」

 セドリックは素っ気なく言った。

「分かってると思うけど、第二王子派になるって事だよ。アランに忠誠誓えるの?」

「誓い……」

「許可しません」

 私は、アル兄の言葉を遮った。冗談じゃ無い。

 セドリックの子飼いにするために、アル兄様と離れるんじゃない。


「許可しないって、リナちゃんにそんな権限有るのかよ」

「国王の署名付きの命令書だしましょうか?」

 悪い笑顔になってる自信ある。

「出来もしないこと言わないほうがいいと思うけど?」

 セドリックは、どうせそんな事出来やしないくせにという顔で、私を見た。


 言いたくないけど……こんな私的な事に使いたくないけど、仕方ない。

「リネハン家の処刑。国王からの最初の公文書は当事者夫妻と直系子孫の斬首刑でしたよね」

「あ? ああ、でもいつの間にデュークの願いが叶ってたよな」

「判断を私に託されたのです。宰相様は直系子孫を全て助けるって言っても、国王命令としてそのように動くって」

「それって、リナちゃん」

 そう、それが私の権力と責任。セドリックは正しく理解してくれたようだ。


「アル兄様。後からの処分はいかようにも出来るんです。でも、この前のように現場処刑だと、抗うすべが今のアル兄様には無い」

 跪いたままの兄に手を差し伸べる。でも、兄はその手をとらず立ち上がった。

「幸いこの国は、騎士にしろ文官にしろ役職に貴族の身分は関係ありません。どうか、どちらかの道を選んで上がって来て下さい」

 兄は、溜息をついた。今の状況を理解し、自分の立場が分かったかのように。


「わかった。今のままだと足手まといなんだね」

「ごめんなさい」

「なんで、謝る? すぐに追いつくよ」

 兄が私の頭をなでてくれる。こういうところ、大人だなって思う。

「待ってます」

 今度はちゃんと笑顔で言えた。

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